第4話『金属装飾の円柱と、黒い男』

 その人型の存在は、ガチガチを顎を鳴らしていた。

 きっと、寒さに耐えているのかもしれない。

 暗闇と、モヤのように留まり続ける、灰色の雪。

 彼の周りは、そんな景色に囲まれている。

 

 その空中に浮いている雪をかき分けて、一つの黒い布を被った男が進み来る。

 大きな厚手のフード。そこに無数についた白金の文様の円盤が、ガチャガチャと音を鳴らして、揺れ動く。光の加減で、キラ、と文様の金属線がきらめく。

 ——まるで円と放射の線で描かれた回路のようだった。

 薄い黒の円盤同士も鉄の金属線で複雑に繋がれていた。

 足先まで垂れたそのフードは歩くたびに、あちこち、光る。


 暗闇、浮く雪。虚空の中には足場のような円柱が並ぶ。

 その鉄回路装飾の円柱が足場になって、その男はそこを渡り歩く。

 

 黒のフードの男は円盤をおもむろに叩き始めた。

 

 不規則のようでありながら、規則的なリズム。

 なにか音が飛んで来るが、静寂だった。

 

 聞く者によっては、慟哭。

 視る者によっては、喜劇。


 それは原始のダンスのようだった。

 叩いた円盤から波及するように、銀の波紋が広がる。

 空中を浮く雪は、その波紋の振動に呼応するように形を変えられる。

 あるいは、生物。獅子や、巨大な蟲。

 あるいは、まるで彼の信頼の女を象って。

 その男は満足そうに笑って、その女の「かたち」を抱きしめた。

 彼の体は女に吸い込まれるように、足元から存在を失っていく。

 彼は笑っていたが、最後には涙を流した。


 彼の骨と、その覆っていたフードは、新たな円柱となって、新しい男を待つのだ。

 

 

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7つの断面と琥珀眼の頭蓋 @KuronoYu

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