7つの断面と琥珀眼の頭蓋
@KuronoYu
第1話 『琥珀眼の頭蓋』
地に堕ち、琥珀眼の頭蓋はいつも地上を見つめている。
いつしかそこから来たのにどうやら地下深くに埋められてるらしかった。
自分よりも小さな手長の象に踏みつけられては、落とされるように地ヘ地へと堕ちてゆく。
手長の象は一つばかりの横長の目で頭蓋を眺めていた。それは見つめる、でもなく、ただただ、なにかモノでも視るようだった。
——あるいは、こちらを認めてもいないのかもしれない。 踏まれ、振動で押し込められていく頭蓋。
わずかな地中の亀裂から通る小さな光線が彼の眼球を照らしていた。
眼球と言っても、レンズは無い。まるで、マグマのようなとろりとした液体が、柔らかく、そして分厚い膜で封じ込められているような。
そこに一筋の光が集まっていく。 光を視ると、彼の眼は輝き出すので、頭蓋はそれが好きだった。
——あの象の、私をモノとして視るような、偉ぶる視線とは違う。
頭蓋の内側の何処かで、そんなことを思っていた。
彼の外側には肉は無い。その失った鼻先をなぞるものがいて、久方ぶりに体を思い出した。
頭蓋の周囲は揺れ動き出す。
彼の動揺が、地へと波及する。
地と、かつて有った躰を境界にして、圧し固められた地は破砕する。
上へ、と、体が押し上げられるように、上り詰めていく。
オオオ、オオオ、と彼の音なのか、腹から込み上げる声なのか。
それはもはや頭蓋が取り戻した声だった。
彼の双眸の眼球は琥珀色に輝き出し、そしてかつての淀みが紅い涙となって、あたらしい彼の肉体の稜線を流れ下る。
あの海の血潮を思い出し、そして、かつてあった「故郷」を思いを馳せ、叫び声を上げた。
その声は数多の象たちに届き、ある象は細長の眼を見開き、頭蓋を押し込めた象はわずかに眼を細めて、「まるで、産声だな」
琥珀眼の頭蓋の故郷はここではない。
——だが、いずれ行くことになるだろう。
彼の新しい心臓がそう決めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます