【短編】ふざけた理由で婚約破棄をしてきたロリコン王子に天誅(ざまあ)を!!!

ともボン

ふざけた婚約破棄をしてきたロリコン王子に天誅(ざまぁ)を!!

「伯爵令嬢ジャンヌ・マドレーヌ。貴様との婚約は第一王太子であるこの俺――アラム・カルナデスの名において今日この場で破棄する!」


 この言葉でパーティー会場の空気は騒然となった。


 無理もない。


 今日のカルナデス城の大広間で開かれたパーティーは、第一王太子であるアラム様とこの私――伯爵令嬢ジャンヌ・マドレーヌの婚約をあらためて貴族諸侯に告げるお披露目パーティーだったからだ。


 しかも宮廷楽士たちによる祝いの演奏も終わり、すでにパーティーは宴もたけなわになっていた。


 あとは大広間の中央に主役の両者が集い、貴族諸侯たちに見守られながら堂々と婚約の宣言をする。


 そういう流れになっていたはずだった。


 でも、土壇場でアラム様は予定に一切なかったことを言い放った。


 恐ろしいほどのドヤ顔で。


 だからこそ、何も聞かされていなかった私は激しく動揺した。


「アラム様……理由を……理由をお聞かせください」


 私は何とか言葉を吐き出す。


 それでも相当に無理をした上で口にできた言葉だった。


 貴族諸侯たちからの視線もそうだが、アラム様からの真剣な眼差しが痛かったのである。


 一体、アラム様に何があったのだろう?


 私は一週間前のことを思い出す。


 アラム様と私の婚約は学生の頃に決まっていた。


 今から三年前のお互い17歳のときだ。


 私とアラム様は王立貴族学院に通っていて、生徒会のメンバーだった。


 私は会計、アラム様はもちろん生徒会長だ。


 そしてアラム様の弟君であり、私たちよりも1歳年下である第二王太子のケント様も生徒会の副会長として手腕を発揮していた。


 やがて私とアラム様は18歳のときに卒業したのだが、すぐに結婚には至らなかった。


 ――すまない、ジャンヌ。俺に一年間だけ時間をくれないか?


 アラム様は立派な王になるため、広大な国土面積を誇るカルナデス王国内を一年間かけて遊学したいと言ってきたのだ。


 このとき、アラム様の父上でありカルナデス王国の国王であったバラム様はご病気だった。


 それでも自分は真の王になるため遊学したいと言い放ち、半ば強引に複数のお供を連れて旅立ってしまわれたのだ。


 正直なところ、私には思うところもあった。


 国王がご病気でいつお倒れになるかもわからないときに、のんきに国内を遊学している暇があるのかと。


 しかし、このときの私はグッと堪えた。


 これはアラム様が立派な王になるために必要なこと。


 私は自分にそう言い聞かせて一年間ずっとアラム様の帰りを待っていたのだ。


 そして一週間前、アラム様は一年間の遊学から無事に帰って来られた。


 ところがである。


 一年の間にアラム様は周囲が目を剥くほど変貌されていた。


 旅立つ前はすらりとした体型だったのに、一年間でアラム様はビール樽のような肥満体になっていたのである。


 バラム様に似て金糸のようだった金髪は脂と汚れでガビガビで、お腹は子供がいるのかと疑ってしまうほど膨れていた。


 そんなアラム様は帰ってきた早々、辺境からも貴族諸侯を呼び寄せてパーティーを開くぞと言い出した。


 すでにバラム様は床に伏せ、明日をも知れぬ命。


 その中で貴族諸侯を呼び寄せてパーティーを開くということは、私と正式に結婚することを大々的に発表すること以外にない。


 これは私だけではなく重臣たちもそう思ったのだろう。


 特に理由を聞くこともなく急ピッチで準備が進められ、一週間後の今日にこうして王城の大広間で盛大なパーティーが開かれた。


 すべては私とアラム様の正式な結婚を知らしめるパーティーだったのに、あろうことかアラム様は公衆の面前で私との婚約破棄を切り出してきた。


「兄上、一体何を言い出すのですか!」


 周囲が唖然としていた中、私たちの元へ駆け寄ってきたケント様がアラム様に怒声を放った。


 二十歳のケント様は亡くなった王妃さまに似て黒髪黒目をしている。


 身長もアラム様よりも10センチは高い180センチ近くあり、武芸に秀でているので肉体もかなり鍛えられている。


 顔立ちは東方人の平たい顔ではなく、カルナデス人特有の凛々しい顔立ちだ。


 きりりとした目眉。


 ほどよく伸びた鼻梁。


 涼しい雰囲気の中でも獰猛な野生を感じられる魅力的な男性だ。


「勝手に一年間の遊学から帰ってきたかと思いきや、貴族諸侯たちを急遽呼び寄せてジャンヌ殿との婚約を一方的に破棄? そんなことは馬鹿げている! 彼女が――ジャンヌ殿がどのような気持ちで一年間も待たされたのか兄上は理解されておられるのか!」


 ドキッと私の心臓が心地よく跳ねた。


 そうだ。


 ケント様は昔からこのように他人のことを考え、悪いことには悪いと言える立派な方だった。


 この一年間もそうである。


 アラム様は本来は床に臥せっているバラム様の代わりに王の代理をしなくてはならなかったのに、勝手に遊学に行ってしまわれたせいでケント様がその役を代わりにすることになった。


 そして、その手腕は素晴らしいものだった。


 私はただの貴族令嬢だ。


 なので実際に会議や軍議でケント様がどのような発言をされていたのかは知らない。


 でも、若くして手腕を発揮した人物の噂は悪評よりも迅速に広まるものである。


 貴族令嬢たちが集うお茶会でも、ケント様の実力ぶりはいつも話題に上がっていたものだ。


 しかし、そのお茶会でも常にケント様に関して不思議な話が上がっていた。


 どうしてケント様は誰もお付き合いや婚約している女性がいないのか、と。


 これは私も不思議だった。


 ケント様ほどの美男子で仕事も出来る逸材ならば、国中の貴族たちから縁談があっても良さそうだったのに。


 そんなことを思い出しているときも、ケント様はアラム様に食ってかかる勢いで詰め寄っていく。


 一方のアラム様はどこ吹く風だった。


「はっ、俺はこの国の王になるべき男だぞ。ならば俺がどんな女を妻にしようと俺の勝手だ」


「本気ですか? 王族と貴族令嬢との婚姻は庶民の結婚とは重みが違うのですよ……いや、庶民でもこのような不条理な婚約破棄など滅多にないでしょう」


「お、お前……国王の俺を庶民呼ばわりするつもりか!」


 アラム様は大きなお腹をタプタプ揺らしながら言い返す。


 醜い。


 私は率直にそう思ってしまった。


 特に身も心も立派な人物になったケント様と見比べると、話の内容からしても大人と子供ほどの差がある。


 体型だけに限れば豚と虎だ。


「くっ……まあいい」


 アラム様は全力で走ったように息を荒げると、「何を言おうが俺の意志は変わらん」と言い放った。


「俺はジャンヌとの婚約を破棄する。だが、それは俺が結婚をしないということではない。俺は別の素晴らしい女性と結婚するつもりだ」


「――――ッ!」


 これには私も驚きを隠せなかった。


 驚天動地とはまさにこのことだ。


 まさか、一年間の遊学中に私以外の女性を好きになったというの?


「そして、その女性はこの場にいる!」


 一人だけ高揚しているアラム様がその女性に人差し指を突きつける。


 私を筆頭に全員がその女性に目線を向けた。


「…………え?」


 私は貴族令嬢にあるまじき素っ頓狂な声を漏らした。


 アラム様の人差し指の先には、赤いドレスを着た貴族令嬢がいた。


 茶髪の縦ロールが可愛く、最低限のお化粧をしていた女性。


 いや、女性とは言えなかった。


 その子は6,7歳ぐらいの少女だったからだ。


「皆に紹介しよう。彼女こそ俺の新たな婚約者の男爵令嬢のリリアン・マレーだ!」


 は?


 一体、アラム様は何をとち狂ったことを言っているのだろう?


 あんな少女を婚約者にするなんて正気の沙汰ではない。


 事実、懐の深いはずの貴族諸侯たちも目と耳を疑っていた。


 しかし、アラム様の態度は本気だった。


 本気であんな恋愛の「れ」の字もまだよくわかってない子供と結婚すると息巻いている。


 一方、貴族令嬢たちの中にはあまりの衝撃さに気を失う者が続出。


 私の父上など握っていたグラスを床に叩きつけて激怒していた。


 この国の実質的な権力を握っていると言っても過言ではない私の父上がである。


 しかし、アラム様……いえ、アラムのロリコン王子はそのことに気づいていない。


 リリアンという少女を呼び寄せると、「お前は可愛いな。よしよしよし」と子犬を愛でるように満面の笑顔で頭を撫で始める。


 さすがの私もキレそうになったが、呼吸を落ち着かせてリリアンにたずねた。


「え~と、あなたの名前はリリアンだったかしら?」


「はい。わたくしの名前はリリアンです」


 リリアンは元気いっぱいに返事をしてくれた。


 でも、彼女の全身からは貴族令嬢のマナーが完全に身に着けているとは思えなかった。


 嬉しそうに犬のぬいぐるみを抱きしめ、真夏の向日葵のような笑顔を見せている。


 だからこそ、この先のことも訊いて確認しておかねばならなかった。


「リリアン。あなたはアラム様を愛しているの?」


「愛するってどういうことですか?」


「あなたはお隣にいるアラム……様と本当に結婚する気があるの? 結婚ってわかる?」


 わかります、とリリアンは大きくうなずいた。


「わたくしと毎日たくさんお人形遊びをしてくれることですよね?」


 リリアンは全然わかってなかった。


 愛も結婚も何もかもわかっていなかった。


 というか、完全にアラムのロリコン王子にぬいぐるみ遊びで言いくるめられていることは火を見るよりも明白だった。


 そしてこのアラムのロリコン王子の発言に、今度は貴族令息たちの何人かが泡を吹いて倒れた。


 このとき、何とか正気を保っていた貴族諸侯たちはこう思ったに違いない。


 アラム・カルナデスは一年間の遊学を自己研鑽や領土の視察に使わず、密かに隠していたか突然に目覚めた幼女趣味ロリコンを満たすために使っていたのだ、と。


「さ~て、言うことも済んだしもうパーティーはお開きだ。さあ、リリアン。こうして俺たちの結婚発表も済んだことだし、これから俺の部屋へ行って思う存分と朝までじっくり遊ぼうな」


 アラムのロリコン王子は下卑た笑みを浮かべると、リリアンを自室へと連れて行こうとした。


 リリアンは「朝まで遊んでくれるのですか!」と嬉しそうな声を上げる。


 ここまでくれば誰にでもわかる。


 アラムのロリコン王子が考えている「遊ぶ」とリリアンの考えている「遊ぶ」はまったく異なる。


 天と地ほども意味合いと外道さが違う。


 このままではリリアンはアラムのロリコン王子によって一生残る精神的苦痛を味わうだろう。


 そう思った瞬間、私の頭の中でプッツンと何かが切れた。


 同時に私は動いた。


 盛大にドレスをはためかせ、距離を詰めたアラムのロリコン王子に平手打ちをお見舞いした。


 バチンッ、と大広間中に乾いた音が鳴り響く。


「な、何をする!」


 私の行動にアラムのロリコン王子は悲痛な声を漏らす。


「それはこちらのセリフです! あなたはこんないたいけで無知な子供に対してをするつもりなんですか!」


「う、うるさい! 王となるべき俺が何をしようと勝手だ!」


 アラムのロリコン王子から強烈な怒気が放たれる。


「それにお前とはもう婚約破棄した間柄だ。それなのに、この俺の頬を叩くとは何たる無礼……この場で叩き斬ってくれる!」


 怒りが頂点に達したアラムのロリコン王子は、腰の長剣に手を伸ばす。


 斬られる、と私は思った。


 しかし――。


「無礼なのはあなたですよ、兄上。そして――」


 いつの間にか私の目の前にケント様が現れた。


 それだけではない。


 ケント様は剣を抜く前のアラムのロリコン王子の手を止めたのだ。


「あなたは王の器ではない!」


 そう告げた直後、ケント様は渾身のストレートパンチをアラムのロリコン王子の顔面に放った。


 ゴシャッ!


 骨と肉が潰れる音が鳴り、アラムのロリコン王子「ぶるわあああ」とよくわからない悲鳴を上げて吹き飛んでいく。


 やがてアラムのロリコン王子は床を何回転も転がった末に止まった。


 静寂が支配した大広間において、一拍の間を置いたあとにケント様は全員を見回した。


「皆の者、このわたし――第二王太子のケント・カルナデスはここに宣言する! たった今、国を傾かせかねない不埒な行いをしようとした兄上に制裁を与え、第一王位継承権を簒奪さんだつした! わたしがこれからのカルナデス王国の王となる! 異論がある者は前に出よ! 異論が無き場合は拍手をもらいたい!」


 最初こそ静まり返っていたものの、時間が経つにつれて「パチ……パチ……」と拍手が生まれた。


 パチパチパチパチパチパチパチ――――ッ!


 やがて一分も経たないうちに大広間は拍手の渦に包まれた。


 第二王位継承権を持っていたケント様が、次期国王として重臣たちに認められた瞬間だった。


 私も無意識に拍手していた。


 何と素晴らしいことなのだろう。


 アラムのロリコン豚が国王になるよりも、ケント様が国王になるほうが国は繁栄の一途を辿るのは間違いない。


「ジャンヌ殿、あなたには気を悪くさせましたね。同じ王族として謝罪いたします」


 何とケント様は自分が悪くもないのに私に頭を下げてきた。


「い、いえ、そんな……むしろ、王族に手を上げてしまったのに」


「兄上……いや、あの者はもう王族ではありません。ただの幼女趣味の犯罪者です――おい、誰か! あのロリコン豚を地下牢に放り込んでおけ! 怪我の治療もしなくていい! 死んだらそれまでだ!」


「「「「「「はっ!」」」」」」


 大広間を警護していた衛士たちは、ケント様の命令に従ってアラムのロリコン豚を地下牢へと連れて行く。


「……さて、ジャンヌ殿。これでわたしは時期国王となります。そこであなたにお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


「は、はい……何でしょう?」


「わたしと結婚してください」


「――――ッ!」


 私は瞬きを忘れて目を見開いた。


「王立学院の頃からあなたを密かに想っておりました。しかし、あのロリコン豚との婚姻が決まってしまったので、わたしは身を引くよりも他にありませんでした」


 何と言うことだろう。


 これでケント様が誰とも結婚しなかった理由が判明した。


 まさか、この私を好いてくれていたなんて。


「どうでしょうか? わたしと結婚してくださいますか? それとも、あのロリコン豚のことを未だに想って――」


 いいえ、と私はケント様の言葉を遮った。


「あのような一方的に婚約破棄され、それを大人しく受け入れる女性などいません。もはや今の私にはあんなロリコン豚と婚約していたこと自体が恥以外の何物でもない……けれど、その汚点はあなたという人と添い遂げることで払拭できるでしょう」


「で、では……」


 私は大きくうなずいた。


「ケント様、どうか末永くよろしくお願いいたします」


 ケント様は感極まったのか、公衆の面前でありながらも私を強く抱きしめた。


「もちろんです! 生涯、あなただけを愛すると誓います!」


 私も強く抱きしめ返し、大広間にはいつまでも祝福の拍手は鳴り止まなかった。


 数日後、バラム様はケント様に国王の座を譲ると言い残して崩御された。


 こうして私とケント様は結婚。


 貴族諸侯や民たちに祝福され、多くの子宝にも恵まれて私の人生は生涯に渡って幸せだった。


 一方、ロリコン豚のアラムは薄暗い地下牢で孤独に息絶えたのは言うまでもない。




 〈Fin〉


================


【あとがき】


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


 主人公たちの人生はまだまだ続きますが、物語自体はここで幕引きとさせていただきます。


 そして他の異世界ファンタジーも掲載しております。


【タイトル】


【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は最悪な形で破滅する模様


【キャッチコピー】


愚王と愚妹に追放されましたが幸せです。一方で愚王と愚妹は破滅する模様


目次ページです


https://kakuyomu.jp/works/16817330666760821768


よろしければ、ご一読くださいm(__)m

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