流行山

@Shin3n

同調。それは人の無意識に根ざした生存本能だが、ときに致命的な暴走を引き起こす。

そしてその愚行は、猿の世界でも例外ではなかった。


ある山で、ひとりの猿が声を上げた。

「東の山では、片足で移動することが流行っているらしいぞ!!」


周りの猿たちは、それを聞いて笑った。

「そんな馬鹿なこと、するわけないだろ」


しかし、その猿が片足で移動する練習を始めだすと、嘲っていた猿たちも、少しずつ真似を始めた。


ひと月経つ頃には、その山では片足で移動する猿が増え、異様な光景が生まれていた。


だが、猿の中には、まだその行動を馬鹿らしいと感じている者たちもおり、彼らこそが、片足で移動する猿たちに裏で嘲笑われる存在になっていた。


また、ひと月経った頃、別の猿が言った。

「西の山では、片足での移動は古いらしい!!今は、腕の毛がないのがトレンドらしいぞ!!」


片足で立っていた猿たちは、すぐさまそれをやめ、気が狂ったように腕の毛を抜き始めた。


また、ひと月経った頃、その山には腕の毛が生えた者はほとんどおらず、生えている方が馬鹿にされる始末だった。立場が逆転したのだ。


たかが馬鹿にされる。それだけなら、まだ良かった。

しかし、その立場は異常なほどに大切なものになっていく。腕の毛のない猿たちは、腕の毛がある猿たちを「流行りに遅れている」「自分たちより価値が低い」とみなした。


腕の毛のある猿たちも、最初は気にしていなかったが、度重なる上下関係による差別により、ほぼ全員が腕の毛を抜き、急いで毛のない者たちの側へ行った。そして、今さっきまで仲間だった猿たちを、今度は自分たちが差別し始めたのだ。


その差別は、徐々にエスカレートしていった。

ある猿が言った。

「腕に毛のある猿は仲間ではない。同じ山にいることが不愉快だ。殺してしまおう」


最初は猿たちも皆、困惑していた。しかし、それに賛同する者も現れ、ついにそれは決行されてしまった。


この話を読んで、読者もわかっただろう。

そう、同調とは、自分を守る行動として、とても素晴らしいものである!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

流行山 @Shin3n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ