雨上がりのレニー
サイノメ
第1話 雨の降る街
街に着いた時には既に土砂降りだった。
この地域にしては雨がよく降るとは聞いていたが、土砂降りになるとは……。
肩のあたりに水が触れる感覚がある。
身に着けた外套に防水加工はされているとは言え、次第に雨が浸み込んできているようだ。
「まったく……。よくこれだけの雨が降るものね」
彼女が小さく呟いたが、それは地面を打つ雨粒の激しい音々に打ち消される。
わずかに顔を持ち上げた少女は空を見上げた。
決して暗い訳ではないのだが、全天に広がる雲から絶え間なく降る雨は弱くなる気配はない。
「はぁ……」
小さくため息をついた彼女は雨に濡れた重いブーツで前に踏み出し歩き始める。
歩きながら少女は少し顔を振り、町並みを見た。
なるべくフードの中に雨が振り込まないように注意しているので、視界が広い訳ではないがレンガ造りの古い町並みが目に入る。
その家の端々には排水管が設置されており、屋根に落ちた雨を道の脇に設置された排水口へと流しているようだ。
ともかく、この豪雨の中では人でも無く、体温も奪われる一方だ。
いま一度、晴れない空を見上げ、少女は「仕方ない」と呟きながら歩き出した。
街の広場へ出れば開いている飲食店があるだろう。
***
「レニー、悪いけどしばらく有給休暇をとるわ」
同僚の青年が少女にそう言ったのは3日前、仕事先の工場の休憩室でのことだった。
「別に構わないけど、繁忙期にはもどるよね?」
少女、レニーは特に表情も変えることなくぶっきらぼうに応えた。
正直な話、レニーにとっては自分の仕事に影響なければ関係のない話だから。
「ところで『雨の降る街』ってしってるか?」
「知らない」
それでもなお同僚の青年は話しかけ続けるが、レニーは相変わらず青年の顔も見ずに答える。
それでも青年は話し続ける。
レニーの態度はいつものことなので、青年もまた自分のペースで話を続ける。
「年中雨の降る街、その地には……」
相槌を挟む間もなく、話し続ける青年。
その話が続いていくなかふと見れば、いつの間にかレニーが青年に顔を向けていた。
「レオン、その話ホント?」
レニーはそう言うと、唇を人差し指で軽く触れている。彼女の考え事をしているときの仕草。
本人は気が付かれていないつもりらしいが、仕事仲間は周知の事実だった。
「そいつを確かめに行くんだよ」
レオンは白い歯を見せ、好奇心に満ちた子供のような笑顔でそう返すと、片手をひらひらと振りながら部屋から出ていった。
レニーが休暇をとり、電車に跳び乗ったのは翌日のことだった。
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