第30話 新たな冒険の始まり

婚約から半年が経った。


ミルフォード村は、さらに大きく発展していた。


新しいギルド支部が完成し、村の人口も倍に増えた。


僕の名声のおかげで、多くの冒険者や商人が村を訪れるようになったのだ。


「レン、見て」


エリカが嬉しそうに報告書を見せてくれた。


「今月の依頼数、過去最高よ。それに、村の税収も大幅に増加してる」


「それはよかった」


「全部、あなたのおかげよ」


エリカは微笑んだ。


「あなたがこの村に来てくれて、本当によかった」


「こちらこそ。この村が、僕の居場所を作ってくれた」


僕は窓の外を見た。


賑わう村の様子が見える。


子供たちが笑いながら走り回り、商人たちが活気よく商売をしている。


平和な光景だった。


「ねえ、レン」


エリカが少し恥ずかしそうに言った。


「実は、私も告白していい?」


「え?」


「冗談よ」


エリカは笑った。


「でも、半分本気。あなたのこと、好きよ。でも、セリアたちほどじゃないから、諦めるわ」


「エリカ……」


「いいの。あなたが幸せなら、それで十分」


エリカは優しく微笑んだ。


「これからも、友達でいてね」


「もちろん」


その日の午後、僕は訓練場で一人、魔法の練習をしていた。


基礎魔法の制御は、もうほぼ完璧になった。


でも、まだ極められる余地がある。


「ライト」


小さな光球を作り、それを自在に操る。


分裂させ、融合させ、形を変える。


「まだまだだな」


「そんなことないわよ」


背後から声がして、振り向くとリーナが立っていた。


「レンの魔法、完璧よ」


「リーナか。どうしたの?」


「ちょっと、話したいことがあって」


リーナは少し真剣な顔をしていた。


「私ね、王立魔法学園の教師になることにしたの」


「え? 本当?」


「ええ。ベルナール学園長から誘われて。レンから学んだことを、後輩たちに伝えたいって思ったの」


リーナは微笑んだ。


「だから、来月から王都に住むことになる」


「そうか……」


僕は少し寂しくなった。


でも、それはリーナにとって良いことだ。


「おめでとう、リーナ。きっと、いい教師になれるよ」


「ありがとう」


リーナは僕に抱きついた。


「でも、時々は会いに来るからね。あなたは、私の大切な人だから」


「ああ、いつでも歓迎するよ」


その夜、家族全員で食事をした。


セリア、リリス、フロスト、リーナ。


みんなが、それぞれ作った料理を持ち寄っている。


「今日は豪華ね」


セリアが満足そうに言った。


「特別な日だもの」


フロストが答えた。


「リーナの送別会だから」


「送別会って言っても、また会えるんだから」


リーナは笑った。


「そうね。でも、寂しくなるわ」


リリスが少し悲しそうに言った。


「大丈夫よ」


リーナは微笑んだ。


「私たち、家族でしょ?」


その言葉に、みんなが頷いた。


「そうね、家族だわ」


食事を終えた後、僕は一人で外に出た。


星空を見上げながら、これまでのことを思い返す。


学園を追放されたあの日。


絶望していた僕を、この村が受け入れてくれた。


そして、多くの出会いがあった。


セリア、リリス、ゼノス、フロスト、ネクロス、エリザベート王女、リーナ。


みんなが、僕の人生を変えてくれた。


「レン」


セリアが隣に来た。


「一人で何してるの?」


「いや、ちょっと昔のことを思い出してた」


「昔?」


「うん。学園を追放された日のこと」


僕は微笑んだ。


「あの時は、絶望してた。でも、今は違う」


「今は?」


「今は、幸せだ」


僕はセリアを見た。


「君たちがいてくれるから」


「レン……」


セリアは僕に抱きついた。


「私も幸せよ。あなたと出会えて」


しばらく二人で抱き合っていると、リリスとフロストも出てきた。


「あら、二人だけずるいわ」


リリスが笑いながら僕に抱きついた。


「私も混ぜて」


フロストも加わる。


三人に囲まれて、僕は笑った。


「みんな、ありがとう」


「何を急に」


「いや、感謝してるなって思って」


「もう、照れるじゃない」


三人が恥ずかしそうに笑った。


翌月、リーナが王都に旅立った。


見送りには、村の人々が大勢集まってくれた。


「リーナ、頑張ってね」


「また帰ってきてよ」


「忘れないでね、この村のこと」


人々の声援を受けて、リーナは涙を流した。


「みんな、ありがとう。絶対、また戻ってくるから」


馬車が出発する前、リーナは僕のもとに来た。


「レン、本当にありがとう」


「こちらこそ」


「あなたと出会えて、私の人生が変わった」


リーナは微笑んだ。


「これからも、ずっと大切な人よ」


「ああ、僕もだよ」


リーナは馬車に乗り込み、手を振りながら去っていった。


僕たちも、手を振り続けた。


馬車が見えなくなるまで。


「寂しくなるわね」


セリアが呟いた。


「うん。でも、リーナは自分の道を進んでいる」


「そうね」


それから数日後、新しい依頼が届いた。


「レン、これ見て」


エリカが興奮した様子で依頼書を見せてくれた。


「遠い国から、魔物討伐の依頼よ。報酬は二十万ゴールド」


「遠い国?」


「ええ。海を越えた向こうの大陸」


エリカは地図を広げた。


「そこに、新種の魔物が現れたらしいの。あなたの力が必要だって」


「新種の魔物か……」


僕は少し考えた。


「どうする?」


「受けよう」


僕は決断した。


「新しい冒険だ」


「そうこなくっちゃ」


エリカは嬉しそうに笑った。


「あなたらしいわ」


その夜、僕はセリアたちに相談した。


「遠い国への依頼か」


セリアが考え込んだ。


「面白そうね。もちろん、私たちも一緒よ」


「当然でしょ」


リリスも頷いた。


「あなた一人で行かせるわけないわ」


「私たちは、チームだもの」


フロストも微笑んだ。


「じゃあ、みんなで行こう」


こうして、僕たちの新しい冒険が決まった。


出発の前日、村では送別会が開かれた。


「レン君、気をつけてな」


「必ず帰ってこいよ」


「待ってるからな」


村人たちが、口々に声をかけてくれる。


「ありがとうございます。必ず、帰ってきます」


ゼノスとネクロスも、見送りに来てくれた。


「お前なら、大丈夫だろう」


ゼノスが言った。


「でも、油断するな」


「分かってる」


「それと」


ネクロスが小さな袋を渡してくれた。


「これは?」


「お守りだ。困った時に使え」


「ありがとう」


エリザベート王女も、王都から駆けつけてくれた。


「レンさん、無事を祈っています」


「ありがとうございます、殿下」


「それと、これ」


王女は小さな箱を渡してくれた。


中には、美しい首飾りが入っていた。


「王家に伝わる魔除けです。どうか、受け取ってください」


「こんな貴重なもの……」


「いいんです。あなたは、私の大切な人ですから」


王女は微笑んだ。


「必ず、帰ってきてくださいね」


「約束します」


翌朝、僕たちは村を出発した。


多くの人々が見送ってくれた。


「行ってきます」


僕は村人たちに手を振った。


「必ず、帰ってきます」


馬車が動き出す。


村が、遠ざかっていく。


でも、不安はなかった。


セリアたちがいる。


信頼できる仲間たちがいる。


そして、帰る場所がある。


「さあ、新しい冒険の始まりね」


セリアが言った。


「ええ」


僕は微笑んだ。


「これからも、ずっと一緒だ」


「もちろん」


みんなが頷いた。


馬車は、遠い国へと向かって進んでいく。


地平線の向こうに、新しい世界が待っている。


僕たちの冒険は、まだ終わらない。


これからも、ずっと続いていく。


仲間たちと共に。


愛する人たちと共に。


新しい未来へ。


そして、いつの日か、僕は気づくだろう。


自分が、本当に特別な存在になったことを。


でも、それでも僕は変わらない。


謙虚で、優しく、誰に対しても平等に。


それが、僕の生き方だから。


追放された落ちこぼれ魔法使いは、今や世界を救った英雄となった。


でも、心の中では、まだあの日の落ちこぼれのままだ。


そして、それでいい。


それが、僕らしいのだから。


空は青く、風は爽やかで、未来は明るい。


僕たちの冒険は、これからも続いていく。


永遠に。


(完)

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『追放された落ちこぼれ魔法使い、実は世界最強の賢者でした~無自覚チート能力で異世界を救ったら、美少女たちに囲まれて困ってます~』 @tamacco

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