この夏、告白は延期になった。
岩篠
夏の片隅にこの想いを
早くなる心臓のリズムと人ごみの喧騒が交差する。
今日こそ君に伝える。このままだと、きっとこれからも言えない気がして。
「ねぇ」
『今日こそ、』って思ったのは何回目だろう。
同じクラスの隣の席になったときも、体育祭を2人で抜け出したときも、『今日こそ』、『今度こそ』と思ってもやっぱり言えなくて、この夏祭りもなかなか「一緒に行こ」なんて言えなくて、君が誘ってくれなかったら色彩が抜けた夏祭りが始まるところだった。
「なに?」振り返る君の仕草にドキッとして、
「えっと、その――」僕の声を遮って、君は「待って、あてたい。」なんて。
一世一代の大勝負に水を差されたような気がした。でも正直助かった、この期に及んで言い淀むなんて、かっこ悪くてありゃしない
君は立ち止まって黙り込んだ。心臓の鼓動がうるさい...人ごみの喧騒もなにも聞こえないほどに僕の頭は君のことでいっぱいになる。一体あと何秒、この静寂が続くのだろうか。
なんて思っていると。
「もしかして...」君はふと声をこぼした。
「どうしたの?」
「もしかしたら、同じ事考えてるかもしれない。」
「えっ...」更に心臓の鼓動のギアが一つ上がる。
「じゃあさ、「せーの」でお互い言い合わない?」
君がクスッと笑いながら問いかける。
「わかった。」頭の中でいろいろな思いが混ざり合う。
初めてあったときから、君の笑う横顔も綿あめを食べる姿も、すべてが愛おしく感じて、心臓が破裂しそうなぐらいにドキドキしていた。
「せーの」君が合図する。
「「君のことがずっと――。」」
ドーンと花火が神のいたずらに操られたように騒ぎ出す。
「「なんて言った!?」」ふと声がダブる。
「だから...」咄嗟に言い訳が出てきてしまう。
「「また、来年も一緒に来よ」」再び二人の声が重なる。
目の前の君の頬が少し赤い気がする。きっと僕の頬も赤いだろう。
でもきっとこれは何もかも全部花火のせいだ。神様はどこまでも僕らをかき乱しながら応援しているのだろう。
この思いを伝えるのはあと一年延期になってしまった。
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