グラデーション・ロマンス

海老衣揚

プロローグ

 どんな色が好き?

 子どもの時に先生と一緒に手遊びをしてうたったことを覚えてる。周りは赤、青、黄色とかありがちな色を答えていた。僕はネズミ色って答えてた。なんでだったんだろう。あの時の僕に聞いてみたい。


 細山絵人、22歳、彼女なし、ニート、趣味絵を描くこと僕のプロフィールだ。すごく簡潔で分かりやすい。名前の通り昔から絵を描いてきた。父が有名な絵描きでこの名前がつけられた。我ながら短絡的だと思う。でも僕は感謝している。父が僕に絵を教えてくれて今までずっと描いてきた。子どもの時なんか絵画展で金賞を獲ったりなんかもしてみんなにいっぱい褒めてもらったりしたことを今でも嬉しく思い出す。

 でも今は僕の絵を誰も褒めることはない。コンクールにたまに出したりもするけど誰の目にも止まることはないし、つまらないのだろう。何をしているのだろうと物思いにふけることもある。そんな僕にも願いはある。

 それは・・・


 父の絵の横に僕の絵を飾ってもらうことだ。父は世界的に有名な画家でルーブル、メトロポリタン、エルミタージュなど偉大な美術館で展示されている。すごく誇りに思っている。ただ、もう父は数年前に交通事故で亡くなっている。多くの方々が涙した。でも僕の目には涙はでなかった。それがなぜかは僕にもわからない。きっと泣いてる暇があるなら"絵を描け"って父ならそう言うからだと思う。その時の気持ちを絵に描いた。それは、涙の青色とどっちつかずの気持ちのネズミ色でがむしゃらに描いてそれはアトリエに置いてある、僕だけの宝物。


 最初は親の七光りで注目されてたけど実力があるわけじゃないからすぐに忘れ去られた。それからはただ趣味で絵を描いて今まで生きてきた。そんな無気力な僕の前に今小さな女の子が立っている。


 「私に、絵の描き方を教えてください」

 

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