美少女達の友人A ~女子の話を聞くのがうまいだけのモブな俺が、気がついたら学年屈指のイケメン美少女グループの中心にいたんですが(でも、絶対に好きになっちゃいけない)~

エルティ

第1話

 モテたい。とにかくモテたい。


 中高生の男子なら誰しもが1度は思うことだ。


 でも、現実は残酷だ。


 だってそうだろ。


 モテる奴は何もしなくても男女問わず勝手にモテるし、モテない奴は努力をしたところでモテないじゃないか。


 俺は自分がモテる側じゃないと小学校から知っていたから、中学に入ったら努力してモテようとした。


 足が速い奴がモテると知れば人知れずトレーニングをしたし、清潔感が大事だと聞けば毎朝髪のセットを欠かさなかった。ニキビが早くなくなるように皮膚科にも通いまくった。


 何より、中学入学時150ちょいだった身長が、卒業前の今じゃ172cmまで伸びた。


 でも、全くもってモテることはなかった。


 理由はいろいろあるだろうけど、一言で言えば俺がイケメンじゃないからだ。


 ブサイクと言われたことはないけど、自分で見てもまあ人並みだ。


 中学時代、俺にも何人か好きな人はいた。だけど、告白なんてできなかった。


 だってちょっといいなって思ったらそいつらすぐ彼氏ができるんだ。そもそも無理ゲーだろ。


 当然、告白をされるなんてこともなかった。


 ただ、昔から人間関係をうまく保つよう振る舞ってたから、友達は男女ともに多い方だった。


 あくまで友達どまりだったけど。


 その状態が中学時代ずっと続いた結果、俺は「話を聞いてくれるけど無駄に告ってこない安全な男子」として、一部の女子から妙な信頼? を得るようになった。


 ついには、中学で一番かわいいと言われる女子と、「何でも話せる友達」のような関係になってしまったのだ。




 そして、3月。俺はひむか市立西園寺中学校を卒業した。


 桜の花びらが風を受けて空中で踊っている。まだ、七分咲きといったくらいだろうか。


 卒業後、俺は隣の花岡市の進学校に行くことが決まっていた。


 「ねぇ、園山」


 校庭が見える高台で遠くを眺めながら中学生活を思い出していたら、後ろから俺を呼ぶ声がした。


 俺は声を聞いただけですぐに誰だか分かった。この1年、数え切れないくらい聞いた声だったからだ。


 「ねぇ、園山慎一そのやましんいち君」


 俺がすぐに反応しなかったからか、相手はふざけてわざと俺のフルネームを呼んできた。


 「何だよ雛崎。俺の第二ボタンでももらいにきたのか?」


 俺も冗談で返す。


 「えー、そんなわけないじゃん」


 振り向くと、そこには笑顔の雛崎夢乃ひなざきゆめのがいた。


 雛崎は西園寺中で1番かわいいと言われてる女子だ。


 くりっとした大きな目、整った顔立ちに、ストレートの黒髪ポニーテールがよく似合っている。


 雛崎はただかわいいだけの女子じゃなかった。


 明るい性格で、人当たりが良くて誰に対しても面倒見がいいから、男女学年問わず慕われていた。


 ついでに努力家で、勉強も常にトップクラスだった。


 だから、同学年の男子で雛崎を1度も好きにならなかったやつは、ほとんどいなかったんじゃないかな。


 唯一、運動はあまり得意じゃなかったけど、それはそれでかわいいと言われていた。


 当然、そういう女子を男が放っておくはずがない。勝手にモテる奴の例外にもれず、雛崎にはずっと彼氏がいた。


 当然ながら相手はイケメンだ。イケメンの先輩と1年間、イケメンの同級生と1年間付き合っていた。今の彼氏とはまだ続いている、はずだ。


 「卒業だし、お礼言おうと思って」


 雛崎は、少し緊張した面持ちでそう言った。ポニーテールが風に揺れている。


 「お礼? 何のこと? 俺なんかしたっけ。まさかお礼参りってやつ?」


 「もう」


 雛崎の顔がほころんだ。俺のどうでもいい冗談にも、雛崎は付き合ってくれる。


 雛崎は俺の正面に周り、じっと俺の目を見る。何か緊張するな。


 「園山って、私の話たくさん聞いてくれたよね。相談にも乗ってもらったし。ありがとうって言いたくて」


 俺は、内心嬉しい気持ちを表に出さないようにして頭を横に振る。


 「いや、ただ話を聞いていただけだろ。俺は別に何もしてないって」


 雛崎は俺か目をそらし、少し目を伏せた。


 「私、俊太郎と別れたんだ」


 俊太郎、というのは雛崎の今の彼氏、だった奴だ。


 俺は少し驚いた。遠目から見ていて、仲が良さそうに見えていたからだ。


 だけど、中学の卒業の時期は男女が別れる季節だってことを、俺は先輩たちを見て知っていた。


 「そうだったんだ」


 女子と付き合ったことのない俺は、正直何て言っていいか分からず、目を下にそらした。


 そういえば、俊太郎はサッカーの推薦で皆崎市の学校に行くことが決まっていた。それも関係しているのかもしれない。


 「それはもういいの」


 雛崎は視線を俺に戻し、ふっきれたように笑う。正面から見るとやっぱりかわいい。


 「高校も一緒だし、これからもよろしくね。また、いろんな話しようね」


 そう言うと雛崎は元いた女子の集団に戻っていった。


 その後ろ姿を見ながら、俺は心の中で叫んだ。


 


 今も、ついうっかり好きになるところだった。


 俺は雛崎との友達付き合いを通して悟ったんだ。


 俺に話しかけ、友達付き合いをする美少女は、決して俺のことを好きなわけじゃないし、間違っても好きになったりしない。


 だって俺は、美少女にとって話しやすくて無害な友人A、でしかないからだ。


 それに、美少女は放っておいても勝手にモテるし、いつの間にかイケメンの彼氏できてるし。


 だから、そもそもそんな期待はしないし、絶対に好きになっちゃいけないんだ、と。


 でも、俺もいつかは誰かと付き合ってみたい。できれば、お互い自然に好きになって、お互いを思い合えるような。


 俺は高校での新たな出会いに期待していた。きっと、運命的な出会いがあるんじゃないかって。


 でもまさか、高校で学年屈指のイケメン美少女グループの中心人物になるだなんて、この頃の俺には想像すらできていなかった。

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