第2話 母さんが死んだ

居酒屋のバイトから帰ると、いつもと違いアパートの部屋の灯りがついて無かった。


「母さん、ただいま……」


カギをあけて中に入ると母さんが倒れていた。


「母さん! 母さん!」


体を揺らすが返事がない……


嘘だろう……体も冷たい……


もう、母さんが死んでいる。


『母さん……』


どうして良いか分からず、ただ立ち尽くす事しか僕には出来なかった。


◆◆◆


病院に来ている。


母さんはもう死んでいるのに何故か病院に救急車で移動となった。


医師が淡々と死亡の原因を僕に伝えてきた。


母さんはガンだった。


しかも、碌に治療もしないで死んだ……そう言う事らしい。


『母さんは馬鹿だ!』


変な宗教やカルトに嵌まらず治療を受けていれば治った可能性が高かった。


それなのに治療も受けず……死んでいった。


「うっううっうわぁぁぁーー母さん! 本当にこれで良かったのかよ! 母さぁぁぁぁぁーーん」


『母さんなんて居なくなれば良い』


そう思っていたのに……いざ亡くなるとなんでこんなに悲しいんだ。


◆◆◆


母さんの葬儀は新興宗教の教団が行ってくれた。


本当はそんな所に任せたく無かったが、お金が無いのと、母さんが生前に葬儀までお金を払って頼んでいった。という話しだったので母さんの意思と考え、そのままお願いする事にした。


本当は文句の一つも言いたかったが、母さんはこの教えを信じていたので辞めた。


僕以外殆ど、宗教関係者以外居ないなか粛々と葬儀は行われ…….そのまま納骨となった。


そして、母さんの遺骨は、教団の納骨堂に納め……全てが終わった。


『母さんなんて居なければ良い』


そう思っていたのに、いざ居なくなると悲しくて、悲しくて涙が止まらなくなった。


◆◆◆


ドンドンドンドンッ


「ううっ、ううっ母さん……」


あれからアパートに戻り、なにもヤル気にならず部屋に閉じこもっているとドアがけたたましく叩かれた。


余りに煩いので仕方なくでると、そこには……


「よう元気か?」


白髪頭に袴姿のインチキ拳法家が居た。


この男の名前は亀岡龍三。


変な拳法の道場主だ。


僕が小さい頃、母さんに空手か柔道を学びたいと言ったら、この人の『亀岡道場』に母さんが話をつけ、通う事になった。


「信子さん、死んだんだってな……」


「ええっ、ですがここに来てもうちにはお位牌もないし、お骨は納骨堂にもう入っています」


「そうか……それで体はまだ鍛え続けているか?」


「ええっ、他にやることはありませんから……」


「そうか、なら達者で暮らせ……」


「はい」


ちゃんとした空手や柔道を学びたかった。


だが、母さんが此処に決めてしまい仕方なく通った道場。


ほかに門下生は居なかった。


だけど、他に習った事が無い僕は、インチキとは思いながらもそれを学び続けるしかなかった。


折角学んだのだからと教わった事の反復練習は今も続けている。




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