あの頃の冒険者達・外伝〜謎の古民家〜

弥須雄

第1話 90%本当の話

坂巻小学校の図書室で、秘密の部屋を見つけるより以前のこと。

僕、田中陽斗(たなかはると)が小学二年生のときに、実際に起こった怖い話。


僕の住む町には図書館があるのだが、その近くに、かなり古い古民家があった。


ある日曜日、僕は二歳上の兄である田中勇気(たなかゆうき)と、その友達である森健太(もりけんた)、そして幼馴染である佐藤悠真(さとうゆうま)の四人で遊んでいた。


「なあ、今日はあの古民家に侵入してみいひん?」


兄が言い出しっぺだった。


「あの図書館のところやろ? 怖くない?」


僕はお化けの類が怖かったので、できれば行きたくない気持ちを込めて返事をした。

しかし、兄は僕とは正反対の気質で、行く気満々だった。


「なんも怖くないって! 決まり! 健太も悠真もええよな?」


「うん! 余裕余裕!」

「……」


森健太は行く気満々で、悠真はなんとも言えない顔をしていた。


そんな感じで、半ば強引に古民家へ侵入することになった。

古民家は老朽化が進んでおり、壁には人が一人通れるくらいの穴が開いていた。見えないようにブルーシートがかけられていたが、そんなものはめくってしまえば関係なかった。


古民家に足を踏み入れたときの光景は、今も覚えている。


日が入らない家で、昼間にも関わらず室内は薄暗かった。

無数のゴキブリの死骸があり、埃をかぶった食器棚があった。

穴が開いていた壁は、キッチンに繋がっていたのだ。


目を凝らして奥を見ると、昔ながらの障子で区切られた部屋がいくつか見えた。

一階建てで、それほど広くもない家だったので、全ての部屋の位置は把握できた。


「なんかすげえな! おい! 奥まで行くぞ!」


怖いもの知らずの兄は、どんどん奥へ進んでいった。


「お兄ちゃん! 俺怖いから無理。ここおるから!」


僕はそう言って、入口で留まることを決めた。


「勇気君! 俺も怖いから陽斗とおる!」


悠真も僕に便乗した。


ふと後ろを見ると、乗り気だったはずの二歳年上の森健太が、青ざめた顔をしていた。

いや、今にも泣きだしそうだった。


「田中……俺もここにおる……」


「森も口だけやん! しゃあないな。俺だけ行ってくるわ!」


兄は笑いながら、奥へ進んでいった。


兄は全ての部屋を、ゆっくりと回って戻ってきた。


「なんやねん。ほんまになんもなかったわ。おもんなあ。」


兄が満足したところで、その日はお開きとなった。


翌日、僕と悠真は学校の休憩時間に、職員室の前を通りかかった。


「え、あの古民家? 誰か入ったの?」

「数人の子どもたちが入るのを見たらしい……」


僕たちは寒気がした。

古民家に入ったことが、大問題になっているのだと思った。


「なあ陽斗、俺たちやばくない?」


悠真が、今にも泣きだしそうな顔で聞いてきた。


「これは、バレる前に先に先生に言うた方がええよな……」


僕はそう言って、職員室に入ることを決意した。


僕たちは担任である斎藤先生のところへ行った。

斎藤先生は、当時四十歳くらいの女性の先生だ。


「……ああ! 田中君と佐藤君、どうしたの?!」


先生もその話題を聞いていたところで、動揺しているようだった。


「あの……古民家の話が聞こえたんやけど……」


僕は全て話そうとしたが、先生が遮った。


「聞いちゃったのね……怖い話だけど、事件性はないみたいだから、そこは安心していいからね……」


「え? どういうこと?」


悠真が思わず声に出した。


「え?! そこまでは知らなかったのね……」


その後、斎藤先生がどう説明してくれたのか、記憶は定かではない。

覚えているのは、子どもたちが古民家から出てくるのを目撃していた近所の人が、古民家の様子を見に行ったこと。

そこで、白骨死体を発見したということだ。


そのことが大騒ぎとなり、子どもたちが古民家に侵入した話は誰も話題にしなくなった。

僕たちは、おとがめなしとなった。


あのとき、兄は広くもない室内を、ゆっくりと調べて帰ってきた。

各部屋に入り、調査している姿を、僕も見ていた。


兄が白骨死体に気づかなかっただけなのだろうか。


その後、兄たちとその話をした記憶はない。

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