第九話

完全に落ち着いた奏多は「山の中に行くのか?」と聞いてきた。「明日休みだし、夜更かししてもいいでしょ?」にっこり笑い返した。「あの優等生さんが夜更かしねぇ。伊奈子叔母さんに何て言ったんだ?」声が掠れてる。落ち着いたもののまだ元気じゃないらしい。「奏多の家でお泊まり会してるって送っといた!」これに奏多は笑った。良かった。まだ笑えてるのは良いことだ。「俺一人暮らしだから都合いいもんな。で、どこ行ってるんだ?」一息着いてから奏多が訪ねた。「...お祭りとか良くある場所。昔の話だけど。」「お祭り?」「うん。僕、よくここくるんだ。」どこに向かってるとか察しが着いた奏多は足を止める。「惇、麗し高山に、行く、のか?」僕は答えなかった。もちろんわかってる。ここに来るのがおかしいことが。たけど、ここに居ると昔の僕に戻れるんだ。惇の近くに居れるんだ。惇のふりをしてるのに惇の近くに居たいなんて変だよね。奏多は無言で僕の手を握りしめた。僕も奏多の手を強く握って息を飲んだ。

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