♯呪詛拡散中。~魔法SNS≪マギッター≫で炎上した俺の末路~

らーめんP

第1話 #炎上

魔力水晶の画面に、赤い通知が弾けた。


《呪詛ポイントが10,000を超えました。呪いが発動します》


「……は?」

指先が震える。

水晶の画面に映る《本日のトレンド》──そこには俺の名前があった。


1.アレン


魔法SNS《マギッター》のトレンド一位。

理由は簡単だ。

昨日、俺は【救国の英雄】を批判した。それだけ。

「……なんでだよ」

呟きは誰にも届かない。

《マギッター》は、魔力を持つ者なら誰でも使える。

呪文を刻んだ水晶を通じて、世界中に言葉を放つ。

今じゃ携帯水晶も普及して、誰もが手軽に扱える時代だ。

でも、その言葉は──時に刃になる。

「いいね」の代わりに飛び交うのは「呪詛」。

集まった呪詛ポイントが一定を超えると、現実に呪いが降りかかる。

だが同時に、呪詛を浴びた者は魔力を吸収し、力を得る。

炎上は、力だ。

だからこそ、命を賭けてでも炎上を狙う者がいる。


俺の部屋の空気が、急に重くなった。

視界の端で、黒い影が蠢く。


《呪詛発動まで、あと10秒》


昨日まで、俺はただの魔法学院の落ちこぼれだった。

進級試験に必要な魔力値は、あとわずか。

でも、俺にはその魔力がなかった。

退学すれば、魔法使いとしての未来は終わる。

だから、英雄を批判した。

炎上すれば、呪詛を浴びて魔力が増える。

承認欲求じゃない──生き残るためだ。


「どうして俺ばっか……」


《英雄を侮辱するな》

《死ね》

《呪詛送った。発動まで楽しみにしてる》


通知音が止まらない。

呪詛ポイントは、秒ごとに増えていく。

俺の心臓も、その音に合わせて脈打つ。


呪詛の仕組み。

呪詛を送るには魔力と負の感情が必要だ。

過剰に送れば【呪詛病】に侵される。

初期症状は怒りの増幅、幻聴。

末期には魔法が暴走し、肉体が変質する。

社会的には隔離対象。

それでも、人々は送る。

怒りは、魔力よりも強い燃料だから。


《呪詛発動まで、あと5秒》


黒い影が大きくなり、部屋を覆う。

携帯水晶が震え、画面に新しい文字が浮かんだ。



《あなたは選ばれました。管理者権限を付与しますか?》



「……管理者?」


その瞬間、脳裏に過去の噂がよぎる。

──トレンド一位になった者は、古代魔法の扉を開く。

──管理者権限を得た者は、呪詛を支配できる。

誰も真実を知らない。ただ、選ばれた者は必ず消える。

水晶の画面に、さらに文字が追加された。


《管理者イーロンの承認が必要です》


イーロン──《マギッター》を創った男。

魔法文明の遺産を解析し、呪詛を「ネットワーク化」した天才。

だが、彼は十年前に姿を消した。

今もなお、彼の名前は禁忌として囁かれる。


「イーロンに選ばれた者は、世界を書き換える」


それが都市伝説だった。


「俺に……何をさせる気だ」


呪詛の影が一気に広がり、俺の意識は闇に沈んだ。


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