与流と志南海 4〈天気〉
ミコト楚良
天気
極地での観測任務も、あと3週間となった。
この仕事は無休のようなものだから、本土に帰ったら、申請によっては1ヶ月ぐらい休暇が取れる。
ぼくは普通通り過ごす予定だが。
「それは普通とは言わない」と、隣から横やりが入った。「まったく休みになってない。持ち帰りで仕事するじゃん」
「いいね」
「
七尾と
機器一つ一つのネジを増し締めしておく。
鋼板円筒形の頑丈なカバーで機器をすっぽり覆い、カバーと土台をネジで固定する。
その前に、振動に弱い機器と風の抵抗を受けやすい部品は取り外して、室内に退避させる。
ブリザードが通り過ぎたら、この作業を逆再生する。
「
一連の作業が終わって、七尾さんが首と肩をこきこきいわせた。
「ガラス細工って例えた人、いたんだけどなぁ。強化ガラスじゃん」
思い当たることはあった。
「聴覚が人より敏感みたいで、それですかね。静かなところに配置してもらうようにしたら落ち着いたんで」
「それで
聴覚と言っておいた。説明は単純な方がいい。
トリュフを探しあてる豚みたいなもん? と言った同級生がいた。それは嗅覚だし。失礼な奴だと思ったけれど、それでむっとするぼくは豚に失礼だよな。
違和感、圧力、振動。脅威。
そんなものを、ぼくは人より感知できる。
そのように品種改良された人間だから。
人間と言っていいなら。
なのに氷床が崩壊するのを検知するのが遅れた。
いちばんに気がつかなければいけなかったのに。
救助に来た飛行艇の爆音に耐え切れなかった、ぼくは気絶したらしい。
そのとき、いろんな機能が壊れたのか、自身の防衛本能が働いてしまったのか、脳がホワイトアウトのような状態になったのだろう。
目覚めたときに、ぼくは記憶を所々なくしていた。
今は、本土の
病棟の窓から見える木立はハルニレだから、本土の山間だと思う。
〈参考サイト〉『南極観測観測隊ブログ』
与流と志南海 4〈天気〉 ミコト楚良 @mm_sora_mm
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