第3話 レジスタンスと眷属

「私はハルナシア、レジスタンス組織『歪んだ羅針盤』のリーダーです」


ソファーで聖女ショコフィーナの左隣に座っているオリーブグリーンの戦闘用ツナギを着たハルナシアがそう言った途端、向かいに大天使リノと座っている漆黒のローブをまとった魔帝王子ルキが口を開いた。


「歪んだ羅針盤? 何だ、その面白い名前は」


その瞬間ハルナシアの左隣に立っている、同じくオリーブグリーンの戦闘用ツナギを着た女性がルキにハンドガンを突きつけた。


「おい、お前、女王様にあやまれ」

「女王様? 何言ってんだこの坊やは」

「私はナツミリア、女だ!!」


激高したナツミリアの人差し指が微かに動いた瞬間、ルキの前にナツミリアの方を向いた小柄な女性が現れた。恐ろしいほどのオーラだ。たじろぐナツミリア。


「お、お前、一体どこから⋯⋯? な、何者だ!」

「私はシオリス、ルキ様の忠実な眷属けんぞくよ」

「眷属⋯⋯?」

「やめろシオリス」


ルキにシオリスと呼ばれたその女性は黒のゴスロリ姿で、髪にはバイオレットのインナーカラー、耳には隙間なく並んだ無数のピアス、首筋にはタトゥー、そして黒ネイルからはたくさんの小さな手が飛び出しうごめいていた。シオリスは背負っていたショットガンを手に取り構える。

それを見て急いでハルナシアが立ち上がった。


「申し訳ありません、ナツミリアを許してください。私はみんなから女王と呼ばれているのです」


ナツミリアが叫ぶ。


「事実、ハルナシア様は王家の血筋でいらっしゃるのよ!!」

「ナツミリア、もうやめなさい!」

「分かりました⋯⋯」


不服そうな表情で黙り込むナツミリア。それを見てハルナシアがルキの方へ語りかけた。


「ところで、あなたは一体何者なのですか?」

「俺か?⋯⋯俺は⋯⋯って、おいシオリス、俺の目の前に立ってたら前が見えないだろ!」

「こ、これは申し訳ありません、ルキ様」


シオリスがルキの膝に座り身を寄せた。


「いや、そういう事じゃないんだよ」


その瞬間、ルキは左側からの殺気に背筋が凍るような感覚を覚えた。左を見るとリノが睨んでいる。

ルキはすぐさまシオリスをテレポートし、ソファーの後ろ側へ立たせると、ハルナシアを見た。


「え〜っと何だっけ? ああ、俺は悪魔だ」


そう言うとルキは黒い翼を広げて見せた。


「えっ! あ、悪魔!?」


驚くハルナシアとナツミリアとショコフィーナ。ハルナシアがリノの顔を見た。


「リノ様⋯⋯」

「ええ、ルキは悪魔よ⋯⋯それも強大なね」


その言葉を聞いたルキが突然パチンと指を鳴らした。するとあっという間にルキがまとっている漆黒のローブが、仕立ての良い漆黒のスリーピースとロングコートに変わった。ルキは得意気に口角を上げる。


「これで悪魔には見えないだろ?」


それには答えずハルナシアはリノに疑問をぶつけた。


「リノ様、なぜ悪魔など⋯⋯」

「えっ? そ、それは、いろいろあって⋯⋯あっ! でもルキは信頼できる悪魔だから」


その時、リノのソファーの後ろ側に立つ黄金の天使イオリアがせせら笑うように言った。


「果たして信頼できるでしょうか」


するとルキのソファーの後ろ側に立っていたシオリスがものすごい勢いでイオリアに近寄り体を密着させるとイオリアを見上げメンチを切った。イオリアも負けずにシオリスを見下ろしメンチを切る。二人が睨み合っているそばでエミリーがオロオロしている。


その時、突然ルキの右側に少女が現れた。少女はフリルたっぷりのピンクの甘ロリ姿で、髪にはピンクのインナーカラー、頭にはピンクのヘッドドレス、ネイルにはリボンやハートのデコレーション、そして丸く大きく膨らんだパニエからはマシンガンの銃口が見えていた。手には八十センチ程の垂れ耳うさぎのぬいぐるみを抱えている。


「ルキ様、お腹すいた」

「なんだキアラス、冷蔵庫の中の物、適当に食っとけよ」

「私、甘いお菓子がいい⋯⋯」


ショコフィーナが目を丸くしながらロザリオを両手で持ち恐る恐るルキに聞いた。


「もしかして、この方も悪魔⋯⋯」

「ああ、キアラスも俺の眷属けんぞくだ」


その時、リノが冷ややかな目でルキを一瞥いちべつしたあとハルナシアの方を向いた。


「そろそろ本題に入りましょうか」

「はい」

「とにかく私達は人間界をルキと一緒に救う事にしました」

「そうですか! ありがとうございます!」


ルキが口を挟む。


「で、ハルナシア、あんたらの戦力は?」

「はい、街の住人以外は、百名程の騎士達と、ナツミリアが乗るロボットが一台、それと私の所有する小型反重力船ハルナシア号が一艇です」

「たったそれだけか!」

「はい、あとは全て破壊されました」

「よくそれで戦えてるな」

「はい、奇跡的に火山のそばにあるこの街は街をぐるりと磁鉄鉱の鉱脈に囲まれていて、その磁鉄鉱の強い磁場が街を守る天然のシールドとなりAIアンドロイド兵には見つからないのです」

「へー、それは運がいいな」


急にナツミリアがキレた。


「運だと!! 私たちは命懸けでこの土地を守ってきたんだ! その気持ちや思いを運だけで片付けるな!」

「おー、怖っ」


その瞬間、リノがルキを睨む。


「ルキッ!!」

「えっ?⋯⋯ああ、ごめん、悪かった」


リノは大きく息を吐くとハルナシアに向き直った。


「では、その小型反重力船で世界を回ることにしましょう、いいですか?」

「分かりました、私とナツミリアがお供いたします」


ハルナシアは右を向きショコフィーナを見る。


「じゃあ、ショコフィーナ、あとの事はお願いね」

「はい、ハルナシア様、私はここで人類が解放されるその日を願い神に祈りを捧げ続けます」


その時ルキが余計な一言を放つ。


「祈っても神はこねーぞ」


そして再びリノに睨まれる。


「ルキッ!!」


こうして、ルキ、リノ、イオリア、エミリー、シオリス、キアラス、ハルナシア、ナツミリアの八名は、世界を救う旅に出る事になったのであった⋯⋯。




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