歴史オタクの俺、異世界で「エセ軍師」になる。~現代知識とハッタリだけで英雄扱いされているんだが、いつバレるか気が気じゃない~
第5話 【閲覧注意】城の地下に封印された『特級呪物』を油で揚げたら、姫様の理性が崩壊した件
第5話 【閲覧注意】城の地下に封印された『特級呪物』を油で揚げたら、姫様の理性が崩壊した件
農業改革を宣言した俺は、まず「即戦力」となる食材を探していた。
土壌改良には時間がかかる。今すぐに腹を満たせるチート作物が必要だ。
俺は王城の地下深く、カビ臭い「封印区画」に来ていた。
「ぐ、軍師様。ここは数十年も開かずの間です。勇者が持ち帰った『呪いの遺物』が眠っているとか……」
兵士がガタガタ震えている。
突き当たりには、鎖で厳重に封印された古びた木箱。お札まで貼ってある。
「これか」
バキン、と錆びついた鎖を破壊して蓋を開ける。
中には、土にまみれた茶色い塊の山。
俺はその一つを手に取り、ニヤリと笑った。
間違いない。
南米原産、人類を飢餓から救い、時には人口爆発を引き起こした炭水化物の王様。
ジャガイモだ。
「きゃあぁっ! カズヤ様、離れてください! それは『悪魔の根(デビルズ・ルート)』です!」
駆けつけたセシリア姫が悲鳴を上げる。
「かつて、これを食べた村人が次々と死に至ったという、呪われた作物なのです!」
なるほど。芽の毒(ソラニン)の処理を知らずに食べて中毒死したパターンか。
「毒がある=呪い」と認定して封印。中世あるあるだ。
「フッ……。無知とは罪なものだ」
俺はジャガイモを空中に放り投げ、片手でキャッチした。
騎士たちが剣を抜く。やめて、ただの野菜だから。
「こいつは毒じゃない。扱い方を知らない者には牙を剥くが、真の理解者には極上の快楽を与える『大地の黄金』だ」
「黄金……ですか?」
「証明してやろう。姫様、厨房を借りますよ」
◇
厨房に移動した俺は、自ら包丁を握った。
芽をくり抜き、皮を厚く剥く。「呪い」の除去完了。
細長くカットし、水にさらしてデンプンを流す。
目指すは、現代社会の覇権料理――フライドポテトだ。
「ラードを熱してくれ。温度は……まあ、カンでいい」
煮えたぎる豚の脂の中に、ポテトを投入する。
ジュワアアアアアッ!!
厨房内に爆音が響き渡る。
水分が蒸発する音と共に、えも言われぬ香ばしい匂いが爆発した。
油と芋。人類のDNAに刻まれた「高カロリーへの渇望」を刺激する、暴力的なまでの誘惑。
「な、なんだこの匂いは……」
「腹の虫が……鳴き止まない……」
遠巻きに見ていた姫や兵士たちが、フラフラと吸い寄せられてくる。ゾンビか。
きつね色に揚がったところで引き上げ、熱々のうちに貴重な塩を振る。
完成だ。
「さあ、姫様。毒見は俺が済ませた。どうぞ」
俺は揚げたてのポテトを差し出した。
セシリア姫はゴクリと喉を鳴らし、おずおずと指でつまむ。
あーん、と小さな口を開けて、カリッと音を立てて齧(かじ)った。
瞬間。
姫の青い瞳が、カッと見開かれた。
「――んっ!? ぁ……っ!」
「どうだ?」
「外はカリカリで、中はホクホク……! 噛むほどに甘みが広がって、お塩の味が舌を刺激して……!」
姫の手が止まらない。
「はふ、はふ」と熱い息を吐きながら、次々とポテトを口に放り込み、頬をリスのように膨らませている。
高貴な王女の仮面が、油と塩の前に粉砕されていた。
「う、うまい! なんだこれは!」
「呪いなんて嘘だ! これは神の食べ物だ!」
「酒だ! 誰かエールを持ってこい!」
試食した騎士たちも理性を失い、厨房は一瞬で宴会場と化した。
「カズヤ様……あなたは本当に魔法使いなのですか? あの忌まわしい『悪魔の根』を、こんなご馳走に変えてしまうなんて」
口の周りをテカテカさせた姫が、うっとりと俺を見上げる。
俺は腕組みをして、ドヤ顔を決めた。
「言っただろう。知恵があれば、毒も薬になる。……こいつを国中に植えれば、飢えはなくなるぞ」
「おおぉ……! 一生ついていきます軍師様!」
チョロい。
俺はただファストフードが食いたかっただけだが、なぜかまた英雄扱いされてしまった。
だが、俺はまだ知らなかった。
この「ポテト革命」が、あの強欲な「商業ギルド」を本気でブチ切れさせることになるという未来に。
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