第5話 近況ノート

 こんなの冗談だ・・私はそう思った。


 でも、極めてたちの悪い冗談に違いない。


 私は近況ノートでお天気坊主さんに返事を返した。


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ゆめみん

2026年X月XX日 XX:XX


お天気坊主さん。こんばんは。

本当だ! 今日も一日雨でしたね。仕事でドタバタしていて・・気が付きませんでした。

私はダイヤの指輪を貰い損ねてしまいました(笑)。ステキな彼氏も💦

で、テルテル坊主の童謡!

3番の歌詞にあんな怖いことが書いてあるなんて!

今まで知りませんでした💦

教えていただいて、ありがとうございました。

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 3番の歌詞の内容には深く触れず、軽く返したつもりだった。


 すると、すぐに・・お天気坊主さんから近況ノートに返事が来た。


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お天気坊主

2026年X月XX日 XX:XX


役に立たないテルテル坊主は首をチョン切られるんだよ

役に立たないテルテル坊主は首をチョン切られるんだよ

役に立たないテルテル坊主は首をチョン切られるんだよ

役に立たないテルテル坊主は首をチョン切られるんだよ

・・・

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 同じ文面がスマホの画面いっぱいに広がっていた。


 何・・これ?


 何か正常でないものを感じた。私の背中を冷たいものが流れた。


 私はすぐにスマホを切った。心臓がドクン、ドクンと大きな音を立てているのが、私自身の耳に聞こえた。身体がブルっと震えた。


 夕方の山手線は混んでいて、みんな身体が接するくらいの距離で立っている。が、朝のラッシュほどではない。私は周囲を見回した。乗客はみんな自分の手の中のスマホに夢中で・・私の様子に気づいたものは誰もいない。そんな中で、私は荒い息をハーハーと何度も吐いた。


 頭の中が混乱して・・何も考えられなかった。


 これは、どういうこと・・?


 そのとき、電車が品川駅に着いた。


 多くの人が降りて・・乗ってきた。


 その混乱が、私をようやく現実に引き戻してくれた。 


 今のは何だったんだ・・?


 私はもう一度スマホを立ち上げた。近況ノートを見た。


 お天気坊主のコメントは二つとも削除されていた。


 しかし、あの文面が私の頭に焼き付いていた。


 役に立たないテルテル坊主は首をチョン切られるんだよ・・


 これって・・一種の脅迫だ!


 私は考えた。


 でも・・お天気坊主を名乗る人物が、私のことを知っているはずがない。だから、いくらカクヨムの中で、あんな脅迫文を私に送ってきても・・お天気坊主は、私に指一本触れることはできない。これはネットの中だけの嫌がらせに過ぎないのだ。


 電車が代々木駅に着いた。私は多くの乗客と共に電車を降りた。ホームの外では細かい雨が降り続いている。


 その雨を見ながら、私は思った。


 カクヨムの運営さんに連絡しようか・・


 しかし、私はその考えをすぐに打ち消した。


 私がカクヨムで「ゆめみん」というペンネームを使っている限り・・お天気坊主は自分のペンネームを変えてでも、再び私に迫ってくる可能性がある・・


 ここは、カクヨムを一度退会して・・「ゆめみん」に関する痕跡をすべて消して・・再び別のペンネームでカクヨムに再度登録した方がいい・・


 そうすれば、お天気坊主は、もう二度と私に近づいてくることはできないわけだ。


 私は気持ちを持ち直した。


 私は代々木駅の改札を出た。いつも使っている赤い折り畳み傘をバッグから出して広げた。


 雨の中を、私はアパートに急いだ。

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