劉じいと歩む占い師の道
@10mon
第1話
「お前、いい加減にしろよ」
彼女──いや、元彼女のミキが、スマホの画面越しに冷たい目で言った。
「もう30歳でしょ?いつまで『自分探し』してるの?就職もしない、夢も語らない。あんたと一緒にいても未来が見えないのよ」
田中ユウタは何も言い返せなかった。30歳の誕生日。無職。貯金残高8円。都内のワンルームマンションの家賃すら払えなくなりそうだった。
「ごめん。もう連絡しないで」
ビデオ通話が切れた。
画面に映る自分の顔は、無精髭が伸び、目は虚ろだった。
部屋に一人残されたユウタは、ベッドに倒れ込んだ。
天井を見つめながら、いままでの人生を振り返る。
大学卒業後、何社か就職したものの、どこも半年と続かなかった。
「これじゃない」という感覚がいつもあった。
やりたいことが見つからないまま、気づけば30歳。
履歴書は職歴で真っ黒。
面接に行っても、採用されることはなくなっていた。
「このまま死んでいくのかな…」
そう呟いた時、スマホが鳴った。見知らぬ番号だ。
「もしもし?」
『田中ユウタさんですね。初めまして。私はリュウと申します』
低く、落ち着いた声だった。年配の男性だろうか。
「リュウさん…?どちら様ですか」
『明日の夜8時、新宿の紀伊國屋書店本店4階の占いコーナーに来ていただけませんか。あなたにお伝えしたいことがあります』
「は? 紀伊國屋書店? 占い?」
『あなたは今、人生の分岐点に立っています。このまま行けば、3ヶ月後には路上生活。しかし、私と会えば、あなたは世界を変える人間になる』
ユウタは思わず笑った。
「ははっ!詐欺ですか?それとも宗教の勧誘?」
『どちらでもありません。信じなくても結構。ただ、あなたには才能がある。それを開花させるかどうかは、あなた次第です』
一方的にそう言って、電話は切れた。
ユウタはスマホを見つめた。怪しい。明らかに怪しい。でも──
「……どうせ明日も予定ないし、暇つぶしに行ってみるか」
自嘲気味に笑いながら、彼は翌日の予定を決めた。
(続く)
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