優しいおじさん

緑野タニシ

優しいおじさん

どうしたんだい、ぼうや?


おや、あの子にいじめられたのかい?


そうか、それはいけないね。


よし、じゃあ仕返しに行こう。おじさんがこのタオルを貸してあげる。これを拳に巻いて殴ってくるんだ。

君がケガしちゃよくないからね。


え?やり返しちゃダメだって?

誰がそんなことを言うんだい?なるほど、ご両親と先生はそんなひどいことを言うんだね。


いいかい?君がここでやり返さなければずっといじめられるんだ。

それに、世の中はいじめる子の方が幸せになれる。


嘘じゃないよ。大人は君のような可哀想な子とは関わりたくないのさ。


いじめと戦うのは怖いだろう?大変だろう?

それは大人も同じなんだ。いじめは怖くて大変で面倒くさい。だから、いじめをなかったことにしようとするんだ。


わかるかい?

君のことはどうでもいいんだよ。


おじさんは知ってるんだ。君のような惨めな子がいじめられたままどこにも馴染めず部屋に引き篭もったままの人生を送る中で、いじめた側は立派なお仕事に就いて、君のご両親のように楽しい結婚生活を送る。


そして、君のような子をいじめていたことなんて忘れて自分の子供の前では素敵なパパやママになるんだ。


おじさんはそんな奴らが許せないんだ。


さて、坊や。君のやることはわかったかい?


そう、戦うんだ。

いじめっ子だけじゃない。君を否定する奴はみんなやっつけなくちゃならない。


大丈夫、君が何をしようと、この国には「少年法」という素晴らしい法律があるんだ。


さあ、行っておいで。おじさんが見ててあげよう。

おや、やっぱり怖いのかい?

そうだよね、仕方ないね。


じゃあおじさんがお手本として代わりにやってあげるから、よく見ておくんだよ。


ほら、いじめをするとこうなるんだ。

いじめっ子のぼうや、痛いだろう?君は顔が整っているから、将来誰にも見向きもされないように、おじさんの顔のように醜く変えておこうね。


さあ、終わったよ。

大丈夫、死んじゃいないよ。いじめっ子には苦しみを抱えたままつまらない人生を送ってもらわないとね。


さて、それじゃあ次は一緒にぼうやの学校へ行こう。

君を助けなかった悪い大人やクラスメイト達を懲らしめないといけないからね。


大丈夫、おじさんは強いんだ。おじさんは無敵なんだよ。何もないおじさんはもう何も怖くないんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

優しいおじさん 緑野タニシ @greentanisea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ