貞操観念が逆転した世界に転生したら男の娘だった件
ちは
第1話 突然ですが転生しました。
突然のことだが、俺は一度死に、前世の記憶を持ちながら転生した。
25年の人生だったが、振り返ってみるとそこら辺に落ちているそこそこ大きい、石ころの様な人生を送っていた。
中学時代に彼女は居たが、高校に上がると同時に別れ、それ以降彼女が出来たことは無い。
彼女が居なくても友人たちと馬鹿をする時間はとても楽しかったので、そのことについて文句はない。
彼女と甘い時間を過ごすのも楽しかったとは思うが、あの悪友たちと共に頭の悪い事をした記憶はかけがえのない物だ。
その後は就職活動を経て、残業はそこそこあるが、ブラックではない会社に入社し、メンタルと体力をすり減らしては週末に回復するというサイクルを延々と繰り返していた。
そして、死んだ。
原因は俺も良く覚えていない。死んだときの記憶を脳が完全にシャットアウトしているのか、それとも酔っぱらっていて記憶が無いのかは分からないが、俺は死んだ。
そして転生した。
ここまで「異世界に転生した」と言わなかったのは皆が想像する剣と魔法がファンタジーしている世界に飛ばされた訳ではないからだ。
じゃあ「地球に転生したのか?」という疑問が出てくると思うが、それについての回答は「半分正解で、半分不正解」だ。
察しの良い方は予想がついたかもしれないが、俺は別世界線の地球、日本に転生した。所謂パラレルワールドという奴だ。
元居た地球と違う所が多くあるが、それでも慣れるのに時間はかからなかった。
……と、言いたいところだが、慣れるのにはかなりの時間が掛かった。差異はあれど、ほとんど変わりのない日本に生まれたというのに、何故慣れるのに時間が掛かったのか。
その理由を説明する前に、近くで行われている女子高生二人組の会話に耳を傾けてみましょう。
「てかさぁ、昨日のドラマ見た?」
「見た見た!けんけんめっちゃエロかったよね!?」
「分かる~!私あの後録画何回も見返してオカズとして使わせてもらったもん。めっちゃ捗った~」
「それな~。はぁ……まじ10番目くらいでも良いからけんけんのお嫁さんに慣れないかな~」
「無理に決まってんじゃん。そこら辺の女優とか、監督とかに喰われまくってるって」
「だよね~。マジ羨ましいわ~」
補足説明をすると、「けんけん」は俳優の
前世の日本に生まれていたとしても、おそらく俳優かアイドルのどちらかになっていたであろう。
……さて、現役女子高校生が昼休みに行う会話を聞いて貰った訳だが、どこか不思議に思う箇所は無かっただろうか?
難易度は某イタリアンレストランの間違い探しよりも簡単だが……とはいえ、この二人の会話だけでは完全には分からないだろう。という事で、ざっと教室を見渡してみましょう。
女子、女子、女子、女子、女子、女子、女子、女子、女子、男子、男子、女子、女子……。
先生!男子の!数が異常に足りません!
そう、この世界は男女比がバグり、貞操観念が逆転した世界なのである。
この世界では女子が下ネタを言って笑い、それを男子が冷ややかな視線で見つめるという光景が日常茶飯事なのだ。
先ほどの二人の会話も前世でいう所の「このグラビアの胸やばくね?」みたいなもので、この世界では何らおかしくない自然な会話だ。
「あ~彼氏欲し~」
「今週末ナンパでもしに行くべ~」
「ありよりのあり~」
男子が一人で街を歩けば、かっこよくなくても、身なりに気を遣っていれば、5分に1回は女の子から声を掛けられる世界。
前世の貞操観念を持っている男からしたらもう、天国以外の何物でもないだろう。
「それでね……って聞いてる?真白ちゃん?」
「へ?あー……ごめん、ぼーっとしちゃってた。もう一回話してもらえる?」
可愛らしいお弁当箱を片手に持った一人の少女がこちらに話しかける。教室全体をぼーっと眺めていた俺が、ちゃんと話を聞いているはずはない。俺は苦笑いを浮かべながら、謝罪の言葉を口にする。
「もぉ、ちゃんと聞いてよ~」
「ごめんね」
「次はちゃんと聞いてね?それで私の推しの声優さんがね──」
この目の前に居る少女は俺の友達、
彼女の黒髪は短くカットされている物の、癖毛のせいかかなりのウェーブがかかっている。癖毛以外に、アニメや漫画の様な特徴的な何かはないが、それでも桔梗は美少女に分類される。
が、その可愛らしい見た目とは裏腹に、彼女は非常に陰気な雰囲気を纏っている。
おそらくそう感じるのは彼女の話し方、会話の内容、そして自信のなさそうな態度や姿勢が大きく関わっているだろう。
彼女……桔梗は絵に描いたような陰キャなのだ。
「もうね?かっこよすぎてやばいの!私100回はその切り抜き動画見たもん」
「100回?桔梗は本当にその人が好きだね」
「うん!そうなの、すごい好きなの!」
桔梗は子供の様ににぱっと笑う。
普段からその感じで行けばそれなりの美少女として扱われるだろうに……まぁ、俺からすれば桔梗はこのままの方が落ち着くし、都合が良いから黙っておこう。
「そういえば真白ちゃんは推しの声優さんとかいないの?」
「うーん……私は特に居ないかな~。この人知ってるとかはあるけど、そこまで詳しくないし」
「そうなんだね。真白ちゃん……声優さんは良いよ?」
「あはは、気になる人が居たら今度ラジオとか聞いてみようかな」
「うん!絶対聞いた方が良いよ!絶対!」
桔梗の凄まじい圧に思わず逃げ出したくなったが、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったことにより、図らずとも俺の願いが叶った。
ナイスタイミング、チャイム。その調子で次の授業も30分くらいで終わらせてくれても良いのよ?
そういえば、自己紹介がまだだった。俺の名前は
……いやさっきの言葉を訂正しよう、俺は他の生徒とはかなり違うと言っても良い。
その理由を説明する前に俺の容姿について説明しよう。
まず俺の髪の毛。背中まで伸びた俺の髪は雪の様に白く、絹の様に艶やか。太陽の光を反射する俺の白髪は天使の様な光を放つ。
次は顔、汚れを知らない純白の肌には百点満点の位置に各パーツが置かれてあり、中でも空色に輝く俺の瞳はまるで宝石の様に美しい。
定期的に鏡で見たくなるくらいには綺麗だ。というか定期的に鏡と睨めっこしてる。
次に体。身長は153cmと背は低い。それにガリガリとまでは行かないが、かなり細身。さらに桔梗の胸部と比べるとかなり……とても貧相である。
さて、ここまでの説明で俺はとても可愛い白髪の少女だという事を理解していただけたと思う。そのうえで俺が他の生徒とかなり違う理由を説明しよう。それは──
ついているのである。あれが。
……言葉を濁さずに言うと〇ン〇ンが。
こんな可愛い見た目をしていて、しっかりとぞうさんがついている。女の子の様な見た目を、というか女の子にしか見えない見た目をしているのにしっかりとついているのである。
そう、俺は貞操観念が逆転した世界で男の娘として転生した。そして俺はが自分が男であることを周りに隠しながら生活しているのである。
「何故男であることを隠しているの?」
「普通ハーレム築くだろw」
等の意見が多数寄せられるのは目に見えているが、俺がそうしないのにはちゃんとした理由がある。
この世界のニュース番組では度々こういうニュースが流れてくる。
『男性が電車で痴漢にあった』
『男性が複数女性に襲われた』
『男性の干からびた遺体が発見された』
この世界では男子の数が異様に少ない。故に女子による痴漢や襲撃がかなりの頻度で発生する。
もちろん前世の記憶を持つ俺は「そんなのご褒美やんw」と思っていたが、3つ目のニュースを見た時にその考えは引っ込んでしまった。
ハーレムを形成して毎晩あんなことやこんなことをする。それは物語の世界だから出来ることであり、現実世界でそんなことをすれば体が持つはずがないのだ。
さらにここで一つ過去体験したエピソードをお話ししよう。
小学4年生の時に、俺は一度担任の先生に襲われかけたのだ。……流石に身体検査という体で体を触られ始めた時はえっちだなぁとかそういう邪な気持ちよりも気持ち悪さが勝ちましたね。
未遂で終わったものの、あの事件は俺の中に危機感を抱かせた。
この世界で、この見た目で、俺が男だとバレるのはまずいと。
俺は女の子に搾り取られて死にたくはない。
幸いにも俺の見た目はどこからどう見ても可愛い女の子でしかない。と、いう訳で俺は男であることを隠し、可愛い女の子の振りをして生活をしている。
「体が勝手に反応しないの?」
ここでまたこのような質問が多くの人から寄せられるだろう。
ふっふっふ、舐めるなよ。俺は転生者だぞ?
女の子が近くに来たり、急に抱き着いたりして来ても反応しないように鍛えてあります!
そんじゃそこらのスキンシップじゃあ、体が反応することは全く無いです!
ちなみに自分で大きくさせることも出来なくなりました!ミッションインポッシブルってか?やかましわ。
とまぁ、懸命な努力と共に男であることを隠して5年が経過、そして今年から高校生となり約1か月が経った。
俺は何不自由なく、そして周囲の人間に男だとバレることなく、可愛い可愛い天使のような女の子として、平穏な日々を送ることが出来ていた。
……出来ていたのだ。
「えっ……えっ……。ある……つ、ついてる!?えっ……えええええええ!?!?」
桔梗とのちょっとした事故が起こるまでは。
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