第11話

「……大丈夫やから。

ちゃんと聞くで?」



そう言って手を伸ばしてくれる彼を、


私は一瞬だけ見つめて、


でもその手を取れなかった。



罪が重くて、

指先が震えた。



彼の手は、触れてもないのに温かく感じた。


「ちゃんと聞くで?」


その言葉はあまりにも優しくて、


胸の奥がさらに痛くなる。



だけど——

その痛みのすぐ隣で、

別の気持ちが静かに顔を出す。



(……この優しさ、利用できるな。)



ほんの一瞬の、

自分でも引くような黒い考え。


私はその瞬間を

見ないふりをして飲み込んだ。


けれど、心の奥で確かに

スイッチがカチッと音を立てた気がした。


私はゆっくり顔を伏せて、

わざと震える声をつくる。




「……昔さ。

ほんとに、ひどいことされたことあってね。」


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