最弱の悪役に転生した俺の師匠たちが、全員胡散臭すぎる件。

モツゴロウ

第1話 最弱の悪役、カイム・モルドレッド


「誰だ、これ……」


 鏡に映る自分の姿を見て、俺は思わずそう呟いた。


 そこに映っているのは見慣れた俺の顔ではなく、仕立ての良い服に身を包んだ眼つきの悪い子どもの顔。


 年齢は10歳くらい。鏡に映る少し吊り目な蒼い瞳が俺を鋭く見つめ返してくる。


 だが、なぜかこのミニチュア小悪党の顔には見覚えがあった。


「あ、これって……」


 鏡の中の俺を観察することしばらく。

 俺は思い出した。

 いや思い出してしまった。

 いやまさか嘘だろ、と思うも、何度瞬きをしても鏡には変わらず悪ガキが映るだけだ。


 ああ、この姿は間違いない――。


「カイムじゃねぇかあああああっ!!!」


 カイム・モルドレッド。

 大人気ノベルゲーム、【エクリプス・ファンタジー】の悪役。


 モルドレッド公爵家という、強大な権力を持つ名家の嫡男でもある。


「どうしてよりにもよってカイムなんだ……」


 鏡に映る姿。何度見ても間違いない。これはカイムだ。


 金髪碧眼で、見ようによっては可愛らしい顔つき。

 だがその見た目に騙されてはいけない。こいつはとんでもない悪童なのだ。


 そして悪役の例に漏れず、最終的には破滅することが確定している。

 

「このままだと……数年後に俺は死ぬ……?」


 そ、それはいやだ。俺はまだ死にたくない。

 しかも最悪なことに、こいつの死に方はロクでもないものばかりだ。

 

 普通に殺されるだけならまだマシで、焼死に溺死に餓死、さらには魔物に生きたまま丸呑みされるエンドも……。さ、最悪すぎる。


 いや落ち着け。

 こういう時は深呼吸だ。

 

 幸運なことに、エクリプス・ファンタジーはプレイしたことがある。そこまでやり込んだわけじゃないが、大まかなストーリーとキャラクターくらいは覚えている。


 俺は目を閉じて、現状について考えを巡らせる。


 悪役転生で、まずやるべきこと。

 それは修行だろう。


 悪役といえば、秘めた才能があるのものだ。

 おそらくカイムもなにかしらの才能があるはず。ゲームでははちゃめちゃに弱かったが(序盤で主人公にやられる雑魚)、あれは努力をしていなかったからだろう。……そう思いたい。


 そしてもう一つ。強くなるのに欠かせない存在といえば。


 ――そう、師匠だ。

 

 秘めた才能を見出され、「こいつは天才だ……!」なんてお墨付きをもらって、秘めた才能を開花させていく……それが悪役転生の王道パターン。


 なにより、師匠は美人と相場が決まっている。


 思い当たるのは二人。

 『誇り高き騎士団長』クレアか、『キサラギ流剣術開祖』ツバキあたりだろうか。どちらもゲーム内では最強クラスの、まさにチートキャラである。


 その二人ならどちらでもいい。

 二人とも俺の推しキャラだし、なにより美人だ。


 欲を言えば、作中最強と謳われる『剣聖』ゼノンが理想ではある。だがゼノンは設定資料集に名前があるだけで、ストーリーに登場することはない。


 どこにいるか、そもそも生きているかも不明。

 いわゆる設定上最強キャラというやつだ。


「ゼノンはさすがに無理だな。……見つけられる保証もないし」


 まぁ、誰が師匠になろうとも俺の才能は間違いない。悪役転生とはそういうものなのだ。


 ――コンコン。

 

 そんなことを考えながら鏡の前でニヤニヤしていると、自室の扉がノックされた。


「どうぞ」

「し、失礼します」


 おずおずと入ってきたのは、銀髪にひげを蓄えたイケオジ執事だった。


 見覚えがある。たしかギルバートといったか。


 ちょうどいいタイミングだ。

 カイムらしさを意識しながら、俺は口を開いた。


「ギルバート、俺は剣を学ぼうと思う」

「け、剣を……ですか?」

「ああ。なんだか無性に運動がしたくなってな」

「は、はぁ……」


 明らかに不審がられているような気がするが無視する。

 

「クレアとか、ツバキが師匠になってくれたら最高なんだがなぁ……?」


 言いながらギルバートの方をチラリと見る。


「か、かかか畏まりましたッ!!」

 

 よし。

 これで間違いなく、どちらかが俺の師匠になってくれるはずだ。


 はじめは俺のいきなりの奇行に面食らっていたギルバートだったが、そこは歴戦の執事。すぐに気を取り直して部屋を出ていった。


「よし……序盤の立ち回りとしては完璧だ」

 

 クレアとツバキの、どちらが俺の師匠になってくれるんだろう。俺はワクワクしながら返事を待つことにした。


 

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2026年1月13日 12:00

最弱の悪役に転生した俺の師匠たちが、全員胡散臭すぎる件。 モツゴロウ @motugorou

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