りすたーと!!〜クソ親からボロクソに言われた私に今更戻ってこいとかもう遅い!!〜

月津いまり

第1話

「お前なんか産むんじゃなかった。」


 それが両親からよく言われていた言葉だった。

 軍隊様最高、男尊女卑当たり前なこの世界では、私の価値など無いに等しかった。

 軍に入ったのは、自分の意思ではなく親に言われたからだった。


「少しぐらいは私たちの役に立って死になさい。」


 そう言われた時はまだ親が去っていないのにボロボロと涙が流れてしまった。

 当然、当たり前なことに泣くんじゃ無いと言われた。


 ……、まぁ、そんなこんなで私は半ば死を覚悟して軍隊ここにきた。

 どうせ、仲良い人もいなければ親はあんなんだ。

 いまさら親には向かう気もないし、お望み通り死んでやろうと思った。


「……それがこうなるとは。運命って測れないもんっすね。」


 入ってから十数年経ったが、未だに私は死んでいない。

 初の戦争では同僚たちと一緒に今にも死にそうになりながらも死戦を潜り抜けた。

 鉄と火薬の匂いと、もはや原型をとどめていない敵兵の手足が大量に落ちていた。

 でも、不思議と吐いたり眩暈だったりは起きなかった。

 あのクソ親のもとでの苛烈な経験のおかげだろうか。


「おい、きどうへいNo.z-1085番!」


「はい!何でしょうか!」


 ぼーっと、基地内を歩いていたら突然隊長から声をかけられた。

 広い一本道に体長の無駄によく通る声が響き渡る。

 これは面倒ごとをなすりつけられそうな気がするな。

 私達のような死に損なった兵は尊敬される代わりに雑に扱われることが多いからな。

 ちなみにきどうへいは私達死に損ないが集まる場所だ。

 全員目が死んでてなんか臭い気がする。

 まああんまお風呂入ってないしね。


「もうすぐ訓練時間だぞ!さっさと着替えて訓練場に行け!」


「…はーい。」


 隊長、真面目と言えば聞こえはいいけどド直球に言うなら頑固なんだよなぁ。

 接してるこっちまで熱が伝わってきて面倒臭い。

 とはいえ、ここで変に楯突くと角が立ちそうなのでグッと我慢する。私は我慢できる子なのだ。


「やべえ、部屋に戻って早く着替えないと遅れるっす。」


 一応、ここまで生き残ってる分軍ではえらい顔ができるのでそこまで気にする必要はないが、隊長にあった以上すぐ行かないと怒られそうだしなあ。

 きどうへい一人一人に用意される__軍全体ではかなりいい環境な__部屋にダッシュで駆け込み、服をその辺に投げて訓練服に着替える。

 ちなみにさっきまで来てたのは戦争できるような軍服をもう少し楽にした感じの隊服だ。

 ある程度位が高くなると軍の偉い人から支給される。


「ボタンはいきながら留めるとして…、まあこれで行くっす!」


 プチプチとボタンを留めながら廊下をダッシュする。

 後ろから上司らしき怒号が聞こえる気がするがまあいいだろう。

 遅れるよりはマシだ。

 幸い、訓練場はここから近い。

 本気で走らなくても8割くらいでいけるだろう。

 少し走ると既に集合している同期たちが目に入る。


「よーし、間に合ったっす。」


「あー、お前隊長に怒られてただろ。さっき体長の声がここまで聞こえてきたぞ。」


「えー、そっか。あの声ここまで届くんすね。」


 さすが隊長、って言うかそれじゃあ私が怒られてるの毎回同期たちに聞こえてるってことじゃん。

 威厳とかプライドとかはいまさらないに等しいけど、ちょっと恥ずかしい。


「…よし、全員揃っているな。それではこれから今日の訓練を開始する。」


「はーい。」


 気の抜けた返事をすると、隊長がキッ、とこっちを睨んでくる。

 嫌だな、冗談じゃないっすか。


「それでは今日の訓練は………」


 そこからは毎度恒例の無駄に長い説明が始まる。

 まぁこれのおかげで訓練の時間が減るのでこちらとしてはありがたいのだが。

 それにしても、ぱっと聞いた感じ今日の訓練は実戦かぁ。

 ちょっと面倒くさいなあ。


「おい、もう動くぞ。」


「え?もうっすか、ッチ、今日は説明短すぎっすね。」


 いつもなら訓練の意味やらためになる話を自分の経験を交えながらに話すのに、今日は本当に説明だけじゃないか。

 隊長から長い説明を取ったら何が残るんだ。

 ……結構残るな。


「ほい。」


「何すかこれ。」


 急に同期がいつも使ってない銃を渡してきた。

 その割にこいつはいつも使ってるやつ持ってるし。

 この銃あんま訓練向きじゃないから普段は使わないんだけど。そういえばこれ私がお気に入りのよく本番で使ってるやつじゃん。


「あ?お前この前『この銃使いづらーい。』って喚いてただろ。隊長が気を利かせてくれたんだよ。」


 マジか。

 隊長に人を労る心があるとは。

 っていうかそんなこと言ったけな私。

 あったとしてもまあ本当にしょうもないことなのだろう。


「まあありがと、隊長にもあとでお礼言っておくっすよ。」


「おう、そうしとけ。」


 隊長がついに私たちにデレたのか。まあありがたいからいいけれども。

 あとでご飯の時に声をかけよう。絶対うざがられるけど。


「あ、やべ。」


 気分が良くなって銃をガチャガチャ弄っていたら指が挟まった。

 なんか青黒くなってるし。


「おー、あとで医務室行っておけよ。」


「はいはい。」


 まあこれくらいなら最悪ひどくてもちょっとガーゼ貼るくらいか。

 私達きどうへいはあんまり行かないんだけどな。

 と言うか行ってもあんまいい顔されずに後回しにされる。

 やはり前線という血生臭いことがダメなのだろうか。


「まあ考えても仕方ないっすね、訓練するっすよ。」


「おう、今回はご無断でお互いがシールつけてるところに的確に当てる訓練だな。」


 確か二人ペアで動きながらやるんだっけ。

 前線専門である私たちがやる意味はまったく持って意味不だがまぁいいだろう。

 正直そういうのはお上の都合というのがあるのだ。

 まあ私たちは最悪実践中にその場でやれって言われてもやれるけどね。


「あー、さっきの傷が痛いっすねー、手加減してほしいっすねー。」


「面倒くさいからって明らかに態度に出すんじゃない。」


 まあ、と言ったふうにじゃれ合うだけでたいていの訓練は終わる。

 だってこれほぼ毎日やってるし、いまさら苦戦することなど一つもないしね。


「ほれ、医務室行ってこい、」


「あー、忘れてた。」


 完全に放置していたせいで少し悪化している気がする。

 まあ戦場じゃこんなけがしょっちゅうするし、あんま気になんないし、そんなわざわざ行くほどのことじゃないけどね。


「……あいつ、最近物忘れ激しくなったなあ。」


 背後から同期になんか言われた気がするが、まあ放っておこう。

 どうせしょうもないことだ。







「………お邪魔しまーす。きどうへいでーす。」


「はーい!!そこで待ってて〜!」


 医務室に入るとすんごい緩い返事が返ってきた。

 よかった、今日は当たりだ。

 ここには優しい人とそうじゃない人がいるからな。ちなみに今日は前者だ。


「怪我の種類は?」


「指を銃の金具の間に挟みました。」


「ほーん…?」


 スラスラと記録用紙に書いていく。

 ちなみに私は字が書くことも読むこともできない。

 だから今ここでバカと書かれてもわからない。


「…あ、最後に、ここ数日でこういう怪我って増えた?」


「あー、でも最近は慣れっこなのか気付くのすら遅れてますよ。今日だって同期に注意されたっす。」


「……ふーん。」


 なんか絶妙な顔をされた。

 流石に本職の前で怪我気づかないです発言は軽率すぎたか。

 次からはもう少し隠す方向でいこう。


「まあいいや、ほい!帰っていいよ!」


「ありがとうございまーす。」


 パパパッと荷物をまとめて医務室を出る。

 あの人がいる日がわかればその時だけ来るのになあ。






「きどうへいのz-1085ねえ、道理で。」






__次の日、私はいつも通り寝坊して、同期にご飯を持ってきてもらってた。

うーん、やっぱり朝はこの味のしないパンか。はずれ。

もうちょっと味濃い刺激的なのがほしいよね。


「お前なあ、よくそんなバクバク食えるよな。」


「だって味あんましないし。」


「そうかなあ、まあ個人の自由だしいいけどさ。」


なんかこっちが異常者みたいな顔をされた。心外。

まあ朝早くから私の部屋まで持ってきてくれた分感謝はする。

しかし今ので打ち消しだ。


「そういえば、きどうへいに新たにh隊ができたらしいぜ。」


「マジ?zから一周したのも知ってるけどもうそんなしてるっすか。」


全然知らなかった、いや、言われたらどこかで聞いたことあるような気もする。

まあ、当時の私は気にしなかったんだろう。


「俺らもそろそろ卒業かなあ。」


「流石にまだ気が早いんじゃないっすかね。」


卒業とは、すなわち軍を抜けることだ。

うちの軍はある程度したらほぼ全員が軍を抜ける。

その後何をしているかはまあ知らないが、多分辺境のどっかでゆんるりスローライフでも送っているのだろう。

一応退職金は出るらしいし、そのお金で老後をゆっくり……、うん、悪くないな。


「まあ、考えとくのは悪くないかもっすね。」


「そうだろ?俺は小さな暖炉のある一軒家でふわふわのソファの上で猫を撫でるんだ。絶対あったけえぞー。」


横でバカなことを言っている同期を無視して、自分だったらどうするんだろうと考える。

最近は両親から電話がないなあ。

だいぶ前に電話しようとしたら何かいう前に切られたし。

やっぱクソだね。


「まあ、これは終わった後だな。訓練行こうぜ。」


「えー、行きたくなーい。代わりに行って〜。」


「無理だろ、っていうかその場合俺の代わりは誰だよ。」


まあ、隊長とかじゃないかなあ、知らんけど。

隊長の代わりはきっと別の上司が務めてくれるだろう。

そんなことを無駄に考えながら訓練場へ向かう。


「あー、1085、あとで面会室に来い。」


「え、サボっていいんすか。」


「終わった後だ、そんなわけがあるか。」


ちぇ。せっかくサボれると思ったのに。

やっぱ隊長はこういうとこ気が利かないよな。

そんな感じに愚痴りながらに訓練をこなす。

今日は昨日と違って走り込みとかの基礎向上だからな、まだ楽な方。


「終わったー。」


「お前早くね、本当に全部やったのかよ。」


「やりましたー。」


失礼な、私はちゃんと全部こなしたぞ。

一部雑なところはあるけど。


「それじゃ、隊長の方行きますか。」


「いってらっしゃーい。」


面会室って地味に遠いんだよなあ。

客人も来る場所だし、本来あんま使わないから訓練場の見えない奥の方にあるんだけど、いざ行くとなると面倒臭いな。

いっそのことサボっちゃおうかな。


「まあ流石に行くか。」


怒られたら怖いしな。


「よく来たな。とりあえずそこに座れ。」


「あざーっす、で、話って。」


「お前には躊躇というものがないのか…?」


なんか上司に引かれた気がする。悲しきかな。

行動力があるっていってほしいね。


「まあいい、それでお前、最近の自分についてわかっているか?」


「え?」


何それ。

宗教的な話は私お断りしているはずなんですけど。

うーん、ここ最近そんな特別なことあったかなぁ。


「特には…。」


「そうか…、それでは、昨日の医療室で先生に何か言われたか?」


「あー…、怪我が増えたかどうか聞かれたっすよ。」


あの先生優しいからな、私なんて怪我して当たり前なのに毎回ちゃんと丁寧に手当してくれる。

少し血生臭いことをやっている身からしたらそういう変わらない態度はすごいありがたい。


「そうか…、 それでお前はなんて返した?」


「あー、確か最近自分でも気づかないうちに増えているって答えたっすよ。」


でも本当にそんぐらいだ。

特に変わったことは他には聞かれてないはず。

まあ自分でもダメなのはわかっているのでこれはそのうち解決する。多分。


「1085、今日の夜にまたここに来れるか?」


「まあいけるっすけど…、どういう意味っすか?」


「別に、怪しいことはない。ただ人前じゃあまり話せないってだけだ。」


なら尚更私はダメだと思うが。

自分で言うのもなんだが私は結構口が軽いタイプだぞ。


「まあ来ますよ。暇なんで。」


「暇じゃなくても来い。」


いやだブラック。

あなたどっちかっていったらブラックされる側でしょ。

なんで自分がブラック発言してるんだよ。


「じゃあ俺は次の書類が溜まっているので帰る。」


「お疲れ様っす。」


まあそんなこんなで、よくわかんない面接的なのは終了した。

安心していいのかは少しわからないが、きっと夜に全部わかるだろう。






「おー、無事だったのか。」


部屋に戻ると我が物顔でくつろいでいる同期が目に入る。

もうこいつがいても違和感ないな。


「まあねー、私くらいになるとあれくらい余裕よ。」


「何いってんだか。」


「いやいやガチだって。」


だってよくわかんないこと答えるだけだもん。

それに全員にやってるわけでもないし、本当に意味不明。


「まあ悪いことじゃなくて安心したよ。」


「あれ、私のこと好きか。」


「違うが、そもそもお前に恋愛感情抱く奴を見たことがない。」


ひどいな。

次会うのは裁判所かな。


「まあ、ワンチャン卒業の事かもしれないし覚悟しとけよ。」


「それだけはないとは思うけどなー。」


それだとしたらあんな質問しないと思うし。

まず何があったらあんな質問すんだろうね。








「……わからんなぁ。」


結局、夜になっても答えが浮かんでくるようなことはなく。

ちなみに同期は満足して寝た。自由な奴だよあいつは。


…よし、行くか。

確か朝の面会室だっけ?確かそうだよね。


「お、来たか。」


隊長の横に何人か暗いスーツを着たやつが並んでいる。

目元には真っ黒なサングラスをしていて素顔を見るのは不可能。

背中に気持ち悪い汗が流れる。

この部屋自体風通しの悪い場所にあるだけあって気持ち悪い。


「…なんのようっすか。」


「お前は卒業とはなんだと思う?」


あー、今朝同期と話したやつか。

まあ退職とかそんな感じじゃない?ただ、全員が全員後々の消息がわかんないのが少し不穏だけど。


「退職っすかね、役目を終えた的な。」


「そうか、」


「もしかして今回の話って…」


「ああ、お前には卒業してもらう。」


そんな急に。

え、今までの人もこんな感じだったの?そりゃ他の人になにやるか伝えられないよ。

だって当日急に言われるんだもん。


「理由をお願いします。」


「それは言えない。」


うーん、後ろにいる護衛っぽい人のこともそうだけどやっぱなんか不穏だなあ。

ちょっと警戒した方がいいかも?


「……、そろそろ誤魔化すのも無理か。」


「隊長が私に嘘…、そんなことできるわけない…。」


「流石に俺のことを舐めすぎだなお前は。」


まあ舐め腐ってますからね。


「お前は、色々な諸事情で都合が悪くなったのだ。本当に申し訳ない。」


「えぇ…、まあいいですけど。」


ゆっくりスローライフ送れるならそれでいいよ。

踏み込んでもなんか怖そうだし。

触らぬ神に祟りなしってね。


「それじゃあ、来週末までに荷物とか引き継ぎ書類をまとめてくれ。」


「はーい。」


もう終わりっぽいし帰っていいよね?帰りますよ。



____________ばん、


質のいい発砲音があたりに響く。

火薬の匂いが鼻を掠める。


「…‥なんのつもりですか。」


「やっぱめんどうくさいなあ、お前ら起動兵は。」


「やっぱその諸事情ってやつが関係してるんっすか。なんですか。」


「…おまえ、最近口調があやふやだぞ。敬語だったり砕けてたり。

 それだけじゃない。痛覚も、味覚も、記憶も。全部もう手遅れなんだ。」


そう言われて思い出す。

味が薄いと酷評したパン、いつついたのかわからない傷、いつ行ったかわからない発言。

…それに、


「お前はいつ、俺や同期の名前を言った?」


「私はいつから忘れていた?」


ぱん、もう一回気前のいい音がなる。

ぐらりと視界が横転し、目の前が真っ赤に染まる。

ああ、随分と後味の悪い話だ。


「こんな最後に思い出すなんて。」






「本当にいいんですかい?z世代を処分して。」


「いいんだよ、どうせ起動兵くらいすぐ集まる。」


床に転がる肉塊を『隊長』は冷たい目で見つめる。

【再起動兵計画】。

過去の文明のアーティファクトの力を利用し、死んだ人間を擬似的に生き返らせる技術。

これを利用して国は死んだ兵を無理やり生き返らせてまた働かせた。

しかし彼らは数年すると記憶や五感を失い、のちに物言わぬ肉塊になる。

どこかで勝手に死なれて騒がれるより、こうして自分たちの管轄内で処理した方がいい。

今の所上層部と医療班しかこのことは知らない。

きっと、この先もこの人数は増えることはないだろう。


「それにしても、傷つかないんですか?かつての仲間を葬って。彼女は昔生きてた頃はあんたの同期だったじゃないですか。」


ふと、念のため連れてきたボディーガードがそんなことを聞いた。

慈悲?なんのことだ?


「こんな肉ダルマ、アイツじゃないね。」


こんな紛い物どもにかけるものなど、少しもないだろうに。





(あとがき)


なんかこう、じわじわくる恐怖や違和感的なのが描きたかったのですが、結局うまく行ってない気しかしていない。

こう言う日常の中の恐怖的な感じ好きなんですよね。

いつかリベンジしたいです。

ちなみに、この起動兵達はちゃんと死んでいるので、他のキャラに比べて感嘆符やら疑問符やらが付いていません。

そこもこだわったつもりです。

次はもっと心情や風景描写に力をいれたいですね。

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