器認定された俺、神の少女に契約を迫られる

太宰心美

第1話

『お母さん、なに飲んでるの…?』

『直樹、起きてたの…ごめんね。』


またいつもの夢だ。夢っていうと世間じゃ良いように使われるけど、俺からすればろくなもんじゃない。夢っていうとコレしかないんだから。

しばらくベッドの上で天井を眺めてから、

時計に目を移した俺は急いで登校の準備をした。


『母さんが元気になりますように。』

神社でお参りしてから、ついでにトレーニングするのが日課だった。神頼みばっかりしてたんじゃ

みっともない。自分でどうにかできるところは、

自分でなんとかしたいから。弱い母さんを守るために俺は強くなったけど、母さんを強くするには

もう神頼みしかないんだと思ってる。

「よしっ、腕立て1000回できたし帰ろっと。」

口に出してから後悔した。振り向くと見るからに

不良っぽいのが3人立っていた。

「見てたぜ〜、なんか頑張っちゃってるじゃん。」「1000回だって?見ての通り俺ら暇だからさ〜、

相手してくんね〜?」

「強いんでしょ〜?そんな体に見えないけど。」

腕立てしてただけで不良に絡まれるなんて、俺はどれだけ不幸なんだろう。母さんは元気にならないし、父さんは相変わらず怒りっぽい。兄貴は

バカなまま大人になって、俺は不良に絡まれる。

あぁ、本当にくだらない。神様は全然願いを叶えてくれないし、憂さ晴らしにこいつら全員…

「何やってんの〜?暇ならみんなで蹴鞠しよ〜!」ハッとした。俺と同じ、中学生くらいの女の子が

不良に軽口を叩いてた。というか蹴鞠って…


「お〜、なんか可愛い子じゃ〜ん。今から弱そうなのに腕立て1000回とかほざいてるポンコツをサンドバッグにして遊ぶから、そこで見てなよ〜。」

「弱そうなポンコツ?あれれ?君たちって仲間じゃないの〜?どっちかサンドバッグになるの〜?」

この子はいったい何を言ってるんだろう。弱そうなポンコツっていうのは俺のことで、どう見ても俺と不良たちは仲間じゃない。見るからに別世界の人間だというのが分からないのだろうか。

「はぁ?仲間のわけないじゃん!何言ってんの?」「えっ?だって君たち3人組は仲間だよね?なんで仲間をサンドバッグにするの〜?」

ようやく気付いた。この子は俺に対して弱そうな

ポンコツという認識を持っていない。わざとなのか天然なのか、この子は今不良3人組をめちゃくちゃ煽っていた。


「あぁ?お前さ、わかんない?お前の隣にいる弱そうなゴミが今からサンドバッグになるんだよ。」「こいつもお仕置きじゃね?俺らのことバカにしてるっしょ。」

不良たちが怒っている。自分の身も自分で守れないのに、人を怒らせて痛い目に遭うのはうちの母さんと一緒だな…。この女の子に対して妙な親近感が

生まれた。母さんはよく父さんを怒らせていたから。まぁでも、母さんは兄貴を庇うためにやってたけど、この子はただ何も考えてないだけか。一緒にしちゃダメだな…。

「お前さっきからボケっとしてるけど、状況わかってんの〜?」

不良のリーダーっぽいのが喋りかけてきた。瞬間、拳が真っ直ぐ俺の顔に飛んできた。それを避けつつ

左フックを当てるとそいつは失神した。

「はっ?えっ?おいっ!何やってんだよ!」

「なぁ、逃げようぜ…。2人じゃ無理だ。」


残った不良2人は走り去っていった。置き去りの

失神ニキを眺めながら、仲間ってなんだろうと

哀れみが湧いていた。

「やっぱり君はすごいね。私が助けに来た意味、

全く無かったよ。」

「そりゃあ君みたいな女の子が助けに来ても

意味ないよ。怖い人たちには近付かないようにね。

それじゃ、俺は帰るから。」

「帰っちゃうの?せっかく君の願いを叶えてあげようと思ったのに。」

女の子に背を向けた瞬間、普段聞き慣れない言葉を投げかけられた。

「願いを叶えるってどういうこと?」

問いかけておいてなんだけど、どうもこうも無い。願いを叶えるとはそのままの意味だ。だけど

そう聞かずにはいられなかった。

「えっ?いつも熱心にお詣りしてるじゃないか。

願いを叶えてほしいんだろう?」

「いや、願いは叶えてほしいけどさ。というか、

喋り方変わってない…?」

「さっきの不良たちに向けた喋り方は作ってただけだよ。あんな阿呆の喋り方が標準なわけないだろう。それで、願いを叶えてほしいなら君が取るべき選択は1つしかないよ。」

この子はさっきから何を言ってるんだろうか。

そういえばさっき、俺に向かっていつも熱心に

お詣りって…。この子はいったい…。

「勘が鈍いなぁ。さっきの不良を倒した時は鋭い

動きだったのに。私は神だよ。」

どこかのLみたいに不意を突く自己紹介だった。

神が神だと言うはずがない。変な奴だとは思っていたが、マジでおかしいのか?ただ、ずっと俺を見ていたかのような発言が、その言葉に信憑性を持たせていた。もし本当に神だったら…

「君が神様だとして、どうして今まで俺の願いを

叶えてくれなかったの?」

「君のことは毎日見てたんだけど、何を願っているのか分からなかった。今の弱まった神力では、人の心を読むことができない。それに読めたとしても、願いを叶えるだけの力は…」

神様なのに人の心を読むことができない?

願いも叶えられない?めちゃくちゃだな。

「俺のことバカにしに来たの?いつも陰でアイツ

何やってんだろうって、見てたんだよね。もう俺は帰るから。」

振り向くと、不良が10人くらい立っていた。

「さっきはよくもやってくれたじゃねえか。」


これだけの数を相手に、そのうえこの女の子を

守りながら戦うなんてできるのか…?

「神は直接人に手を出してはいけない!それに私が顕現していられるのもあと少しの時間しかない!

私と契約して君が戦うんだ!」

「そんな急に契約とか言われても…」

「君の器なら私の神力を受け入れられる!あとは

君が私を信じるだけだ!」

「いい加減にしてよ!信じられるわけないじゃん!俺の母親1人救えない神様なんているもんか!」「直樹!君のお母さんは私の元に来た!君が彼女の睡眠薬を全て飲んだ時だ!昏睡状態になった君を

救うために!彼女は私に願ったんだ!」


『直樹、早く吐き出して!!』

『薬は1つも残ってないよ。これでもう飲めない

よね。こんなの飲んじゃダメだよ。』

遥か遠くの微かな記憶が呼び起こされて、

気付くと全身に力がみなぎっていた。

「契約完了だね。いくよ、直樹。」

「中坊が調子に乗りやがって!大人の怖さ、

たっぷり教えてやるよぉお!」

「流水陣・弧月波濤クレセントサージ

「ぎゃぁぁぁあああ!!」

体が勝手に動いたかと思ったら、三日月型の波みたいなものが出て、不良がまとめて吹き飛んだ。

俺を待ってる未来まで開けたような気がした。

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