第2話 推しと干しスケトウダラのスープと(2)

地球温暖化と言っても11月下旬の夕方は冷え込むし、雨は冷たい。

とはいえイベントが中止になるレベルではない小雨と格闘しながら、私は野外ステージの客席にいた。


ビルの狭間にある広場から見える空はもう暗く、厚い雲が街の明かりにぼんやりと照らされていた。


イベントも徐々に終わりに近づき、周囲に残っているのは私の推しのいるグループのファンの女性ばかりである。

名古屋でならある程度の集客力がある彼らは、ありがたいことに最後の出番をもらっていた。


そして雨が強まる中、私の推したちはいつものイントロとファンの声援に迎えられて登場した。


彼らのパフォーマンスは全員ハイレベルというわけではないけれども、元気と勢いのある歌唱とダンスで私たちの気分を上げてくれる。

わざとらしいけれども基本はネイティブの名古屋弁のトークも熟れていて、馬鹿馬鹿しさもありつつファンにとっては安心感がある。


ファン側からすると雨のステージは転倒や怪我が心配だが、その日の彼らは特にそういうこともなく、逆に観客が風邪をひかないようにと心配してくれた。

2022年はコロナもまだ残っている時期なので、わりと本気の現実的な心配だったと思う。


それでも私は推しに体調を気遣ってもらええるのがくすぐったくて嬉しくて、天気が悪くても来て良かったと、上着を雨に濡らしながら微笑んでいた。


ただ推しの存在以上にその日の思い出として記憶に残っているのが、プゴクと呼ばれる韓国の干しスケトウダラのスープである。

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推しと干しスケトウダラのスープと 名瀬口にぼし @poemin

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