2日目

すごく奪いたい貴方へ。






『かっこいいって言ってくれるの、とっても嬉しいです……!僕、ずっとゾンビと戦っていたので……みんなの声、聞けてなかった……』



「本当に、凄いですよ。簡単なことじゃありませんもん。人を救うって……僕、貴方に救われたんです。」



そう。僕が〝貴方〟になってから、皆が僕を必要としてくれて、呼んで欲しい時に僕の名前を呼んでくれる。僕がこの衣装を身に包んだ時から能力、詳細すべて僕に刻まれる。言ってしまえば、呼ばれたら行けばいいだけ。

コピーして、真似するだけ。


「貴方にしか出来ないんですよ、このお仕事……」


僕にもできた。


『………………グスッ……そんなに言ってもらえるなんて……』


「わっ、ちょっと、大丈夫ですか……?」


『すみませっ、なんせ慣れてないもので……不甲斐ない。』


「いいえ、今まで頑張ってきたんですよね……このハンカチを使ってください。」


ハンカチは元の僕のものだ。

話終わったら数歩先の死角で着替えてしまおう。

この衣装を脱いでしまえば、〝僕〟じゃなくて、〝俺〟になる。

……若くて、華奢で、華麗な好青年ではなくなってしまう。

それでもいい。


『……ありがとうございます……!』


「…………いいんですよ。」


にしても、この子は物凄く鈍感だな。


同じ顔で、同じ髪で、同じ衣装だぞ。

そろそろ、裏の自分だと気づいても良くないか……?いや気付かれちゃ駄目なんだけども。


というのも、絶対に気付かれてはいけないという存在ではあるが、最近は表の本人が承認して、「2人の人間」が、「1人」として活動する事も増えてきているようだ。



この子も言えば承認してくれるんじゃないか……?



『僕、ずっと1人で戦って……実は、ゾンビとかよく分からないし、技も独学だし、だからそう言ってもらえて少し安心しました。これからも、こんな僕でいていいんだって。』


『……僕の事を好きって言ってもらっているのに、こんなことを言ってしまってすみません。』


「いや、いや!……やっぱり、1人で抱えてしまう人だったんですね……」


あー。


『え……?』


「優しい人って、一人で抱え込みがちじゃないですか。」


『そ、そうなんですか……!』


ダメか。


「そうですよ。貴方みたいな頑張っている人が、損をしてしまうような世の中……悲しいですよね。」



まあ金貰ってるし。


「でも……僕は、ちゃんと見てますから。」


『……どこまで良いお方なんですか、貴方は……』



「(適当に媚び売っとこ。本人だし。)」



ドッ…………………………



『……!また!!』


「待って!」


「最後に、聞いてください。」


「貴方に助けられた人は、僕以外にも沢山います。そしてその人は、あなたに直接伝えられなくとも、感謝をしているはずです……だから、えっと……」


「ナテ、頑張って!」


『!』


『……ふふ、そんなに言ってもらえたら、頑張るしかなくなっちゃいました。』


『貴方の名前は?辛い時、貴方を思い出させてください。』


「僕は……」


貴方と同じ、ナテです、なんて言えない。


「荒井です。」


『アライ……さん!ずっと忘れないです。では!』




シュタッ……



「ふぅ、」


やっと解放……本人の前で戦う……のもいいはずだけど、流石に同じ技堂々と使えないし、僕は別の現場で仕事しよう。

これからもここに留まるなら絡まれたら厄介だし着替えなきゃだけど、どうせ依頼は山奥とかが多いし。


大丈夫、僕は貴方の代わり。

最後の一言、ファンサできたとでも思ってるのかな。でも、僕もナテのファンと出会ってたらそう言うだろうね。

話せてよかった。

これでナテを大分掴めたと思う。

まぁそれにしても意外だったな。いつも自信満々なナテを見てたから。

誰か僕以外に知ってる人いんのかな。まぁ、守ってもらって、好きになって、応援してるってだけの人の方が多いだろうな。表面上の好きってそれ以上を知れないのがいい。だって知りたくないことは知りたくないし。


まぁ知ってしまったんだけど…………いいか。









ダンッ……



『ちょっと強いなぁ、ここら辺の敵は……』


『下がってて。君たちは危ない』


「……!!それじゃあナテが!」


『大丈夫。君たちが傷ついている所をもう見たくないんだ。』


ドンッ、ガンッ………………


『ただの僕のエゴだけど、ごめん。』


「〝あぁ本当に、どこまでいい人なんだ!!〟」



『………………ふふ』


『(アライくん……だっけ?も、似たようなこと言ってたな。)』


『(偽名を使ったって無駄なのに。)』


『やっと会えた、翔太くん。』





#無駄な心


特殊衣装は性格までコピーさせる。

言うセリフはリアルタイムで自分の考えているなのに、どんどん口調が変わってゆき、最終的には性格も変わる。

性格が変わる時、今話しているのが自分なのか、自分じゃないのか分からなくなってしまって、「本心」が出てしまうことがある。

そうして、特殊衣装を着る「ニセモノ」たちの本心を表に出させている。

街や村の人々はニセモノを嫌うため、その本心で判断している。

良い性格がコピーされるとは限らないのにね。​

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僕は貴方のオリジナル 寝布団 @Nefu_to

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