【怪談】火猫の呪い

紅風秋葉

第1話

※本作は実話風の創作怪談です。


私が居た田舎の小学校には、七不思議があった。

それはどこの学校にもあるような、トイレの花子さん等のありふれた話だ。


だが、その中に一つだけ、後になってから「他では聞いたことがない」と気づいた話がある。

それが「火猫の呪い」だった。


昭和の頃、小学校には焼却炉があった。

校内で出た可燃ゴミは、用務員が定期的に炉で燃やしていた時代だ。

今では安全面や環境面の問題から撤去されている。

当時はどこの学校にもある、ごく当たり前の設備だった。


火猫の呪いとは、その焼却炉を使って行う、ある種の儀式だ。

正しい手順で火猫を呼び出すことができれば、恨みを持つ相手に火難が訪れると言われている。

小さな火傷で済むこともあれば、家が焼け落ちて死傷者が出ることもある。

効果の大きさは、誰にも分からない。

やり方は次の通りだ。


用意する物:

①赤い文字が書けるペンなど

②白い紙

③猫の餌(市販の缶詰でもニボシでも何でも良い)


実行する条件:

①良く晴れた日の夕方

②焼却炉があること

③儀式中は誰にも会ってはいけない


実際のやり方:

①焼却炉の蓋を開け、中に猫の餌を入れる。

②林に向かって「この中に猫の餌がある」と3回叫ぶ。

③焼却炉の蓋を開けたまま、校舎を1周する。

④白い紙に赤い文字で「火」と書き縦と横に1回ずつ折り畳む。

⑤4つに畳んだ「火」と書いた紙を焼却炉に投げ入れ、焼却炉の蓋を閉じ施錠する。この時、焼却炉の中は見ない。

⑥焼却炉の蓋を閉じたまま、校舎を1周する。

⑦蓋が閉じたままの焼却炉に対して「火を付けたのは〇〇だ!」と3回叫ぶ。〇〇は呪いたい相手の名前。

⑧焼却炉の蓋を閉じたまま、更に校舎を1周する。

⑨焼却炉の蓋を開けます。この時、正面には立たないで下さい。蓋を開けた時、焼却炉の中から燃え盛る何かが飛び出し林の方に消えれば成功。

⑩最後に焼却炉の中の猫の餌と「火」と書いた紙を回収し、細かくした上で川に流せば終了。


この呪いが、実際に行われたという話は聞いたことがない。

少なくとも、私の知る限りでは誰も試していない。

決して真似をするべきものではないだろう。


ただ「火猫の呪い」には、元になった出来事があると言われている。

例えばトイレの花子さんは空襲で逃げ遅れトイレに閉じ込められた女の子の霊である。

テケテケは交通事故で腹から千切れた被害者とも言われている。

私が知っているのは、次の様な物だ。


学校には昔、都会から転校してきた大人しく内気で小柄な女の子がいた。

仮にA子としよう。

A子はその性格からクラスにも馴染めなかった。

いつしか女子グループのリーダー的な存在(B子)から、軽い嫌がらせを受ける様になる。

ですがA子は、いじめに耐えて日々を過ごしていた。


そんな中、学校に隣接する林に1匹の子猫をA子は見つける。

A子は給食の残り物などをこっそりと子猫に与え世話をしていた。

子猫もA子に懐く。

そんなある日の事、子猫に餌を与えている所をB子に見付かってしまった。

B子も子猫に興味を持ったが、当の子猫はB子に懐かなかった。

懐かない子猫にB子は苛立ちを覚えたが、すぐに興味を無くし去っていった。


それから暫く後、いつもの様にA子が子猫の世話をしているとB子が走って近付いてきた。

B子は「先生が来てる。早く隠れて!」と言う。

学校では子猫の世話をしている事は内緒にしていた。

A子は先生に子猫が見付かれば、離れ離れにされてしまうと思った。

B子は「早くここに!」と焼却炉の蓋を解錠し開ける。

促されるままA子は子猫を抱え焼却炉の中に隠れた。

中は真っ暗で何も見えず、物が燃え焦げたススの匂いが充満している。

ですが、A子はじっと子猫と隠れる。

外に居るB子は、焼却炉の蓋を閉め施錠をする。

どれくらいの時間が経ったのか、物音一つしない。

A子は怖くなり蓋や壁を叩いて助けを呼ぶが、外からの反応は無かった。

いつしかA子は疲れて寝てしまった。

暗闇の中で、抱きしめた子猫の温もりだけが、まだ分かった。


ふと周りの異変にA子は気が付く。

焼却炉に投げ込まれたゴミに押し潰され、小柄なA子は助けを呼ぶことすらできない。

そうこうしている内に、足元が痛いくらいに熱くなり、焦げる匂いがした。

A子は必死にゴミを掻き分け上へ蓋へと向かう。

蓋に辿り着く頃には、息をする度に喉が痛く、全身が重く動かない。

目を開けようとしても、痛くてまぶたを開けなかった。


A子は叫びながら必死に焼けた蓋を内側から叩く。

その音は焼却炉から少し離れた場所にいた用務員に届く。

用務員は音が焼却炉の中から聞こえる事に気が付くと、急いで蓋を開けた。

その中に焼かれているA子の姿を確認すると、急ぎ救助をすると共に校舎に残る先生方に助けを呼んだ。

A子の腕の中には、焼けただれた小さな物体が抱えられていた。

その後、A子は病院に運ばれたが、医師の処置も虚しく短い人生を閉じた。


火猫は、この時の子猫の霊だと言われている。


実際、この元となった話については私自身が直接に見たものでは無いので真偽の程は不明だ。

それに私の母校の小学校もだいぶ前に廃校になっているので、確認のしようが無い。

ただ、今も田舎に盆暮れ正月等で帰省すれば、どの家も端々に水の入った大桶があり、黄昏れ時になると学校裏の林から猫の鳴き声が聞こえる気がする。

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【怪談】火猫の呪い 紅風秋葉 @BenikazeAkiha78

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