【お題フェス11④天気】王子様のご機嫌
蒼河颯人
王子様のご機嫌
昔々、あるところにとある王国があった。
バヌワーニー王国と言った。
温厚な王に、優しいお后様。
お二人は大層仲が良く、睦まじく過ごしていた。
ただ一つ、悩み事があった。
国王夫妻に中々子が生まれないことだった。
世襲制の家柄につきまとう、跡継ぎと言う名の、避けられない問題。
大臣達は第二夫人、第三夫人を娶るよう進言したのだが、愛妻家であった王は頑として首を縦に振らなかった。
それから何年か経ち──
バヌワーニー王国に吉事があった。
長年子宝に恵まれていなかった国王夫妻に、到頭待望の赤ん坊が生まれたのだ。
その赤ん坊は、つぶらでぱっちりとした子鹿のような目と、まんまるのほっぺたをもつ、元気な王子だった。
王と王妃を始め、バヌワーニー王国は幸せのベールに包まれた。
しかし、同時に大問題も発生した。
その王子は機嫌を損ねると、国中の天気が影響を受けるのだ。
笑うと晴天。
泣くと雨。
それも、程よいものなら許せるのだが、この国の場合極端だった。
ひどい時は日照り続きの大旱魃。
ひどい時は大雨による大洪水。
王子の機嫌によって、作物の育成に大きな影響が出やすいため、王子の子守役も命懸けだった。とんでもない「力」を持つ王子である。
大臣達は国民から声を聞くなりして、国中を調べたところ、一つの可能性を見出した。彼らが言うには、「これは大魔法使いマヌーパティーの呪いが王子に掛けられている可能性が高い。その魔法使いのご機嫌をとるのが最善策ではないか?」と言うことだった。
王は何としてでも、我が子に掛けられた「呪い」を解くために使いをよこし、その大魔法使いを城に呼び寄せることにした。
それから三日後。
青黒いローブを身にまとい、曲がった木で作られた杖をついた〝大魔法使い〟が城に訪れた。フードに上顔面を覆われた顔は皺くちゃで、見るとあっちよろよろ、こっちよろよろと、よろけている。大丈夫だろうか? 本当にこの魔法使いが、王子に呪いをかけたのだろうか? 家臣の誰もが首をひねった。
玉座に座った王が、その〝大魔法使い〟に声をかけた。
「その者、〝マヌーパティー〟と申す大魔法使いと聞いたが、本当か?」
「嘘を言ってどうするのじゃ! この罰当たりめが!」
王に対して突然暴言を吐いたその年寄り風情に、誰もが慌てふためいた。人一倍優しく温厚で国民から慕われる王に、悪口を言う者は誰一人いなかったと言うのに!
「……その声はひょっとして!?」
「ひょっとしてもへったくれもないわい! この声を忘れたとか言うんじゃあねぇだろうな!? この不幸者めが!!」
相変わらず王を罵倒し続けるこの年寄りに、慌てて駆け寄る者がいた。赤いドレスをまとった王妃であった。
「止めて下さいお父様……!!」
聞けばこの王妃、王と恋仲になったものの、彼女の父親から結婚の許しを得ていなかったとのこと。幾ら身分の差はガン無視で大丈夫な王家とは言え、身分の低い家柄である娘を王家に嫁がせることに、父親は大反対だったのだ。父親から猛烈に反対されても、この王妃は王のいる城に逃げ込む形で結婚まで漕ぎ着けたらしい。たおやかで上品な外見とは大違いで、随分と大胆不敵である。
「まさか、お父様が……我が子に呪いをおかけになっただなんて……嘘ですわよね!?」
王妃は恐る恐る尋ねた。
「……だって、こうでもせねば、この城に来る口実が出来ないじゃろうが!」
「ええ!?」
この魔法使いの堂々とした物言いに、全員呆気にとられた。
このマヌーパティーが言うことには、娘が怒って出奔してしまった後、ずっと一人ぼっちで寂しくて仕方がなかったそうだ。何年か経った後、王家に子供がやっと生まれたと報を風の便りで聞き、ふと思いついたのがこの魔法を使うことだった。
本当は、まだ見ぬ孫に晴れのように元気な子に育って欲しいと思って魔法を使った筈だが、何をどう間違ったのか、機嫌によって天候を動かしてしまう魔法をかけてしまったらしい。
本当は、ずっと自分の娘に会いたかった、孫に会いたかった。
だが、素直になれず、何年もそのままになっていた。
この大魔法使いは、ずっと寂しかったのだ。
たった一人の寂しんぼうのために、国の存亡が影響されるとは、随分とはた迷惑なはなしである。そのくせ呪いではなく、単なる魔法のかけ間違いときた!
これをきっかけに、大魔法使いと王妃は話し合うことでやっと仲直りを済ませ、間違ってかけられた魔法も解けたそうだ。大魔法使いはやっと二人の結婚を認め、舅婿の関係も落ち着いたらしい。
それまで国の天候を左右させていた王子の「力」もすっかり落ち着き、漸く王国に平和が訪れたという。
──完──
【お題フェス11④天気】王子様のご機嫌 蒼河颯人 @hayato_sm
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