超能力者様は意外と弱かったので、ちょっと世界変えてきます。
なつき
第1話 生き延びる。
考えない、それがここで生き延びるコツだ。
与えられた仕事を言われたとおりにこなす。俺らがするのはそれだけ。
超能力者に勝てるわけないだろ?
目に留まらないよう、刺激しないよう、ひたすらに命令に従う。
指先一つ、ぱちんと鳴らせばそれで、俺らの首なんて簡単に締まるんだ。
ここは超能力者の支配する世界。
すべては彼らのもの。水も土も光も空気も何も。俺らはここに住まわせてもらっている道具。
彼らのために畑を耕し、家畜を育て、建築し、とにかく何でもする。
いつからここで暮らしているかはもう忘れた。感情も記憶もここでは枷にしかならない。
今日もいつものように畑を耕す。耳に入るのはザクザクと土を掻く音くらい。
「おい!まだ終わんねぇのか!」
どこからか怒鳴り声がした。声は少し遠い、つまり俺への叱責ではない。黙々と土を掻く。
「もう5日も経ったろうが!」
「はいっ……なので、あと2日で……」
「俺が、1週間なんて寛大な期限を設けたんだぞ!5日で完成させて誠意を見せるのが筋だろ!」
怒鳴り声はどんどん大きくなる。
「申し訳ございませんっ!」
ほとんど絶叫に近い。一瞬悲鳴が聞こえて、すぐに掠れていった。
顔を上げなくても分かる、よくある話。
鐘の音が2つして、外を照らす明かりが消えた。ようやく作業から解放される。重い体を引き摺って、あてがわれた小さな小屋に戻る。
部屋は既に明かりがついていた。
「よぉ」
ルームメイトと目が合って軽く手をあげた。
「っす」
別に話すことなんかない。毎日毎日同じことしてるだけだから。ネタなんかとうの昔に尽きた。お互い今日も生き残ったんだなっていう生存確認。
馴れ合う気もないが、同じ部屋で暮らしている分、外にいても他の人間より少し目が行く。
「飯、置いといた」
「あぁ、ありがとう」
鐘の音が鳴る頃、小屋に食事が届く。鐘の音1つが作業開始の合図、2つが終了の合図。外の明かりが消えた時間に配給された飯を食らい、眠る。それだけ。
超能力者様は意外と弱かったので、ちょっと世界変えてきます。 なつき @natsu_0209
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