第3話
3人称視点
エルフの森は燃えていた。
燃える森を見ながら男たちは笑い声をあげて徒党を組んで森の中を歩く。
エルフは人族にとって高価な財宝と同じだ、貴族たちはエルフを持つことをステータスとし、より美しいエルフを求めていつだって金を出していた。
エルフもただ狩られるばかりではなかったが、エルフ達は派閥争いのような形で自分の住んでいる森に愛情を持っており、他の森に住むエルフを嫌っていた。
結果連携が取れず、金の為に使い捨てを大量に導入した人の物量には勝てずに一つまた一つとエルフ達は人に捕まり、財宝の代わりに売られていった。
今ではこの小さな森に住むエルフがこの世界の最後のエルフ達であり、それを知った人間達はどうにかしてこの最後のエルフを手に入れようとダンジョン東にあるパルワは他の2国にエルフを捕まえるために軍を出すと一方的に通達、それを信じることが出来ないダンジョンから見て西にある国家と南にある国家は警戒の為に軍を出し、ついでに森へと向かいエルフを捕まえようと森へと侵攻、ここに3国によるエルフの争奪戦が始まったのだ。
その中で最も早くエルフの森に到着し、行動を開始したのが東の国家パルワだ、彼等は森を焼きながら侵攻するとエルフ達が結界を用いてその身を隠しているエリアへと近づいていた。
結界の中でエルフ達は武器を構え最後の抵抗をしようとしていた、どうせ捕まってもろくな目には合わない、そう考えた彼等は戦えるものたちは武器を取り、戦えない者たちは戦えるものたちが敗れた瞬間自ら命を絶つ、そう悲壮な覚悟を決めていた。
「くだらない」
そんな燃える森の中でパルワ軍第3軍団の指揮官である男、セルビオはつまらなさそうに部下達の姿を見る、部下達は近くにエルフがいることを理解したようでどいつもこいつもこの先の自分の人生を成功者としてどのように過ごすか、そんなことで頭がいっぱいのようだ。
武力国家パルワでは個人の力が尊ばれる、弱ければ貴族であろうと王族であろうと、強い者からは無視される、実際第1、第2軍団は強すぎて王からの命令を無視し、国にいることはほとんどない、強くなるために各地を放浪しているのだという。
その為何かあれば彼等の代わりに仕事をさせられるのは、武力国家に生まれながら貴族の家で育ち、貴族としての責任というものを理解している第3軍団のセルビオになる。
彼もまた強さを尊ぶ武力国家の生まれらしく強い者に敬意を抱き、弱い物に対して侮蔑的な思いを持っているが、同時に自分はそんな弱い物が作り献上された作物や衣服を用いて生きている事を理解していた。
その為、ここまで育つまでに受けた弱い者たちからの恩を返さずに自分勝手に生きることに対しては抵抗感があり、常識があるが故に貧乏くじを引かされることが多かった。
今もろくな抵抗が出来ないエルフの捕獲という彼からすれば無駄な時間としか思えない任務を王から与えられ、部下の下種な部分を見せつけられるという苦行をこなしているのだ。
武力国家では個人の武が尊ばれるがそれはそれとして経済活動は普通に行われている、故に金は力であり、贅沢に生きるために必要なものであるその価値を認めている。
そうなれば、金の魔力に憑りつかれるものも現れるものであり、自らの武を高めることだけに価値観を見出しているセルビオとは考えが合わないのだ。
とはいえ、王より与えられた任務は任務だ、失敗するわけにはいかない、セルビオが部下たちの背中を見ながら気合を入れなおす。
人間達が結界へと近づいてくる、終わりの時はもう近いそうエルフ達が覚悟を決めた瞬間、場違いな美しい声が焼けた森に響いた。
「まったく困ったものだ、お前達のせいで私がマスターから受けた初めての依頼が失敗しましたと報告しなくてはいけなくなるところではないか、まったく自らの力で生き延びることも出来ない愚かな存在の分際で私の手を煩わせるなんて許せませんね」
それは見た目はエルフに似ていた、忠誠的な顔立ち、長くとがった耳、すらりと高い身長、全体的に華奢でにもかかわらず生み出される色気、長く絹のような光沢をもつ金の髪、だがエルフと呼ぶにはあまりにも美しすぎて、まるで作り物めいていた。
「おい、お前ら自分の命は自分で守れよ?」
セルビオはそう言って腰から愛剣を抜く、部下たちは美しすぎる乱入者の登場にすっかり魂を抜かれたように呆けているが、セルビオだけはこのエルフの異常さに気づき身構えていた。
……そして惨殺が始まる
空から死神の鎌のように振り下ろされた無数の矢がセルビオ達に降り注ぎ、そのまま一人セルビオを除いて平等に貫き、そしてその命を奪った。
セルビオ以外には一人一射、頭から貫きそのまま、地面にまで突き抜けて刺さった矢は地面に当たってからもその貫通力を見せつけるかのように矢の半分ほどを地面に埋めている。
「おや、生き残りましたか全員生き残れないと思ったのですが、いいですね、貴方は合格です、もし生き残ることが出来たなら貴方も私の仲間にしてあげましょう」
ファズはそういってセルビオを見ながら笑みを浮かべる、セルビオの方はと言えば、ギリギリで矢を弾くことには成功したがその際に肩が外れたのか剣を地面に落し、剣を構えていた右手はぶらりと力なく垂れ下がっている。
「肩くらいはめ直すことは出来るでしょう、そのくらいの時間は上げます、早くはめ直しなさい」
ファズの言葉に驚き、無茶苦茶だと呟いてからセルビオは自らの右手を無理やりはめる。
激痛が走るがとりあえず動かすことは出来るようになった右腕で剣を握り軽く振れば、痛みが走り顔を歪めるが、それでも不敵な笑みを浮かべるとファズに向きなおり剣を構える。
それに相対してファズも剣を構えるとゆっくりと歩いて近づいていく、隙だらけのように見えるその姿にセルビオは自らの敗北を悟る。
隙だらけに見えるのではない、実際に隙を晒しながら近づいてきているのだ、にもかかわらず斬りかかって勝てる未来が想像できない。
「実力差がありすぎる相手にわざわざ警戒する必要もないってか」
セルジオがそう呟けばファズはまるで子供がテストの答えを解いたかのように微笑み、よくできましたと褒めるのだった。
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