天気【お題フェス11】
夕日ゆうや
こんな天気なんて糞食らえ。
《今日の天気は大荒れです。危険ですので、防毒マスクの着用をオススメします》
テレビから流れる音声はノイズ混じりで、聞き取りにくいが、危険を知らせる音が鳴り響く。
「今日は出ない方がいいって」
「いや呼び出しがあった。仕事だ」
俺は妻を置いて家の外に出る。
ひどい放射荒らしが視界いっぱいに広がっていた。
かつて人が核戦争を仕掛けたことによる弊害。
そんな歴史を思い出すまでもなく、俺は防毒マスクをつけて出社する。
会社に来ると同じく出社した同僚や後輩がいた。
「たく。こんな日に出社なんて」
「だよな。おれら、なんも悪いことしていないのに」
「そう言うなって。おれらがいなければこの世界は終わらないんだ」
俺の仕事はいわゆるドブさらい。
でもその意味はこの数世紀の間に変わった。
ドブ=放射能、と。
放射能の含まれる砂嵐をフィルターにかけて圧縮し、人の住めない砂漠に集める。
その国家プロジェクトが20XX年3月1日に始動した。
だが、フィルターを交換する人々が必要であった。
俺たちがフィルターを交換しない限り、いつまで経っても人は防毒マスクをつけて買い物をしなくてはいけない。
放射能によるDNA破壊はナノマシンで修復できるとしても。
まあ、フィルターを交換するなんてそんなに難しいことではない。
難しいことではないがゆえ、賃金も安い。
今でもネット状では賃金を上げる運動が起きているが、他の業種と比べて酷く軽くみられている。
俺も、妻子を養えるのは安いアパートと、妻の稼ぎのお陰だ。
「さ。四号行くぞ」
「ああ」
四号と呼ばれた俺は、街の中にあるフィルター装置に向かう。
手順を踏んでフィルターを交換しなければ、大型のファンに巻き込まれ死んでしまう。
「四号。四番スイッチオフ」
「はい」
「十三番オフ」
「はい」
オフオフオフ。
それの繰り返し。
「ようし。フィルターを噛ませるぞ」
「了解っす。二号さん」
俺は高台に登り、フィルターの端をそろえて、かけていく。
よれがあれば、その隙間から放射能が漏れ、フィルターの意味をなさない。
国家プロジェクトということもあり、管理や視察も多い。
ここで失敗するとあとでどやされる。
面倒でも、今目の前にある仕事に集中すれば、ボーナスも僅かだが発生する。
俺は間違える訳にはいかない。
息子の三十号も、最近は食べ盛りだ。
フィルターを交換すると、先ほどまで張ってあったフィルターを慎重に防毒ボックスに収納する。
ここでミスると、大量の放射能を浴びることになる。
やれやれ、人類の叡智は悪魔なのか。
しまい終えると、二号さんが少しはにかんだように思えた。
「さ。四号はもう帰れ。あとはオレがやる」
「いいっすか? だってあれの廃棄を……」
「ああ。だからやるって。お前には子も妻もいるだろう?」
優しい二号さんでよかった。
「あざーっす。今日、妻の誕生日だったんです」
「なら、スーパーでケーキでも買っていけ」
本当優しい人だ。
俺は感謝を述べつつ、近くのMOMOスーパーに駆け込む。
こんなときでもやってくれているのはマジでありがたい。
ケーキコーナーに立ち寄り、何がいいか吟味する。
確かモンブランが好きだったよな。
「おっ。うまそう」
「今日はいいところが入って照り焼きチキンがあるんですよ」
店員の六号はニカッと笑う。
「ケーキをカゴにいれているところを見ると、何かあるのでしょう? チキン買って少し豪華にしてみませんか?」
「それもいいなー」
ケーキとチキンを買い終え、自宅へ向かう。
もちろん防毒マスクをつけて、だ。
俺が帰宅すると妻子ともに嬉しそうに駆け寄ってくる。
「ほら。お土産だぞ」
まずは衣服と手荷物の洗浄をする。
洗浄が終わると、やっと防毒マスクを脱げる。
ちなみにケーキも洗浄するが、減圧式エアーでやっているので、中身は無事だ。
「さ。今日はお祝いだ」
食卓がいつもより豪華に思える。
最後にケーキを食べようかと、伺っていると、テレビから信じられない言葉が流れてくる。
《男は賃上げを理由にMOMOスーパーにて放射能をばらまくといったテロ行為を行ったとして、今日未明逮捕されました。被害者の六号は病院に搬送されたものの、意識不明の重体です。えー。続報です。加害者は二号とのこと》
あの二号さんが捕まった。
その衝撃は俺の頭をぶん殴られたような感覚に近かった。
天気【お題フェス11】 夕日ゆうや @PT03wing
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