母と息子の境界線 母の若い彼氏に息子が嫉妬

みさき

母と息子の境界線

陽子は五十六歳。美人とも可愛いとも言えない、年相応の顔立ちだった。シワも白髪も、メイクで懸命に隠そうとしていたが、小柄で痩せたその後ろ姿は時折、若く見えることもあった。


僕は二十八歳の会社員で独身。両親は離婚し、姉は嫁いだ。父が残したマンションで、母と二人、固定費は管理費等だけで家賃よりも安く、不自由のない生活を送っていた。


平穏な日々が、ある日、突然揺らぎ始める。


母に彼氏ができた。相手は二十二歳の大学生。


僕よりも年下の青年が、母を「陽子」と、呼び捨てにする。


推し活のコミュニティで知り合ったという。それから母は変わった。地味だった服装は、ミニスカートにロングブーツといった若見えコーデに変わり、メイクやネイルにも気を遣うようになった。


最初は「年甲斐もなく」と嫌悪感を抱いた。しかし、その感情は次第に、母の笑顔を引き出す青年への、やるせない嫉妬へと変わっていった。ある時、ふと気づく。僕は母を、一人の「女性」として意識し始めていた。彼女の外出中、洗濯かごにあった下着を手に取り、胸が苦しくなるのを感じた。


やがて、母の様子がおかしくなった。家事は手を抜かず、気丈に振る舞おうとするが、どこか暗く、元気がない。深夜、寝室から漏れるかすかなすすり泣く声が、僕の耳に届いた。失恋したのだと直感した。


僕は母の部屋に入り、布団に潜り込んで彼女をぎゅっと抱きしめた。驚いて拒絶する母に、僕は押し殺していた想いを打ち明けた。嫉妬。そして、紛れもない恋心。


「実の親子でダメだよ」

母の声は震えていた。


「もう、そんな悲しそうな顔をさせない」


僕はそう囁き、「陽子」と名前を呼んで、彼女の唇を奪った。


抵抗は続いたが、僕は離さなかった。


やがて、その抵抗は弱まり、やんだ。


「…僕のために、母として、受け入れてくれるの?」


彼女の沈黙が、すべてを物語っていた。


僕は、女としての彼女の欲情が、この血縁という壁によって閉ざされていることに、言いようのない喪失感を覚えた。


それでも、僕はそっと唾液を潤滑に、彼女の身体に溶け込んでいった。


タブーは、その夜、確かに越えられた。


血の繋がりが、不思議な相性を生み、二人は朝まで重なり合った。


翌朝、空気は不自然に張り詰めていた。

しかし、どこかで新たな関係の始まりを予感させる、不思議な高揚感もあった。


先のことはわからない。それでも僕は、母親である陽子を、一人の女として愛し、守っていこうと心に誓った。


それからの日々は、ぎこちなさと甘美さが入り混じっていた。


家の中では、二人は離れることがなかった。

外では親子、家では恋人。


近所に出かけた時は、人目を盗んで軽いキスを交わし、遠方へ行った時は、年の差カップルを装って、イチャイチャと戯れた。


この先、社会が二人をどう裁くかはわからない。


後ろめたさは、不思議と消えていた。


血が繋がっているからこそ、この愛は決して簡単には切れない、どこかでそう信じていた。


不安と希望が絡み合う、危うい絆の上で、二人はただ、今という瞬間を抱きしめ合っていた。

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