終章 最後の銃弾

 俺を現実に戻したのは鼻を衝く鉄のにおいだった。


 隊長と呼ばれた男は、眉間から赤い血を吹き出し、倒れた。


 俺は慌てて、もたれ掛かる京香を支える。


「あ、ありが。ごほっ。ごほっ」


「喋るな! 京香!」


 せき込む京香の体から出る血が、新雪のように白く染まっていく。


 京香は震える手で、ガスマスクをとる。


 夕陽に染まった京香の顔が現れる。


「せ、折角、会えたのに、ごほ」


 白い血を泡と一緒に、吹き出す。ああ、白死病はくしびょうの症状だ! 


「ああ! !」


「ち、ちがう、よ」


 京香の髪も白く染まりだした。京香は言葉を続ける。


「わ、わたしは、ごほ。し、死ぬんじゃない」


 京香はリボルバーを自分の額に付きつける。止めろ! は絶対に


「ふふ、ごほ、わ、六乃ろくのだ」


 京香は涙を流す俺の眉を優しく撫でる。


「わ、の」


 優しい微笑みを浮かばせる。

 



 と、俺を遺し、京香はいってしまった。


 


 俺は全てが白く染まってしまった彼女を、優しく抱き上げる。


 地下への階段を降りる。


 


 最初の部屋に戻ると、俺は京香をカプセルに入れ、白くなった眼に手で瞼をかぶせる。


 をしている。

 

 苦しかったろうに! 痛かったろうに!


 俺が! 俺が! から出たから!



 俺は、を額に当てる。


 壁の鏡には、俺の好きな人が言っていた困った顔で、青年が泣いていた。



 『私、六乃ろくののが大好きなんだから!』


 

  

 俺は外に出る。


 俺のは言った。

 

『俺がのが好き』


 だったら、俺はもっと。


 困ろう(苦しもう)!


 困ろう(生きよう)!


 は、俺が困らなくなったとき、その時まで取っておくのだ……

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