第四話 廊下の邂逅

 割れたガラスの穴を、破片に気を付け、丁寧に広げていく。


 腕を通し、反対側の一門字の形のシリンダーを、摘まみ起こす。


 小さくも正確な音が、開錠を告げる。


 俺は、ドアを静かに開けて、周囲をみる。


 ここは廊下らしい。


 様々な物がそこかしこに、転がっている。倒れたベッド、割れた瓶、散らばる書類。


 かつての誰かの所有物は、窓から差し込む夕日が静かに照らしていた。


 静かに足を動かす。薄汚れた紙が足元を塞ぐ、手に取る。ほとんど汚れと、破れで解読できないが、は少し読めた。


晴穣せいじょう十五年 五月』


 俺の記憶から、最低五年は経っているってことか。


 不意に向こうの曲がり角を、何かが横切った。


 倒れているベッドに身を隠し、息を殺して、夕陽の向こうを見つめる。


 特殊部隊のような装備の奴が、こちらには気付かず、近づいてくる。


 フルヘルメットのガスマスクを付けて、表情はわからない。


 俺は立ち上がり、銃を構える。


「止まってください! 俺は、あなたを撃つつもりはありません! ですが」


「え、あ」


 の声だ。


 


 言葉を続ける。


「この先は、流行病が発生しています! マスクを取らずにこのまま引き返してください! 俺は決して、あなたを後ろから撃ったりしませんから、そのまま、こちらを」


六乃ろくの? 六乃ろくのでしょ!」


「え、は」


 ああ、忘れもしない! 記憶の声と違い、少し大人びた低い声だけども、間違いない! は


「私よ! 京香よ!」

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