セオリーオブ●ハピネスー【ブラザー編】
すえたに すえこ
第1話 俺の妹
俺には妹がいる。
名前はエナ。中学二年生。
学校には行っていない。
理由はいくつかあるけど、全部説明する必要はないと思っている。
少なくとも、今は。
俺が学校に行っている間、
エナは家にいる。
それでいい。
外は、思っているよりずっと面倒だ。
人も多いし、余計なことも多い。
知らなくていいことまで、簡単に触れてしまう。
だから俺は、
学校であったことを話す。
今日あったこと。
ちょっと面白かったこと。
エナが笑う程度の話だけ。
それで十分だ。
玄関のドアを開ける。
“ガチャ”
階段を駆け下りる足音。
予想どおりだ。
「おかえりっ!」
抱きついてくる体を、軽く受け止める。
制服に顔を埋めるのも、いつものこと。
外の空気の匂い。
それを安心だと言うけど、
本当は、外を知らないからそう感じるだけだ。
俺は頭を一度撫でて、部屋に向かう。
距離は、これくらいがいい。
後ろからついてくる気配。
断る理由もない。
ベッドに腰掛けるエナは、
目を輝かせてこっちを見る。
「今日はなになに!!」
期待している顔。
それに応えるのは、兄として当然だ。
俺は一息ついてから、話す。
「今日は体育でサッカーだった。
ミトマがさ、ジャンプしてからダイレクトシュート決めて――」
無難な話。
危なくない話。
夢を見すぎない話。
エナは楽しそうに聞いている。
それでいい。
学校は楽しい場所だと、
思わせておけばいい。
「学校って楽しいんだろなぁ〜」
そう呟く声が聞こえる。
俺は、何も言わない。
行けない理由を、
わざわざ掘り返す必要はない。
外を知らなくても、困らない。
俺が伝える分だけ知っていればいい。
世界は、必要な分だけあればいい。
エナは満足そうに笑っている。
......それで、いい。
今日も、
俺が世界を持ち帰った。
それだけの一日だった。
セオリーオブ●ハピネスー【ブラザー編】 すえたに すえこ @Suek_kooo
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