助言者ヴェンの悩み
七乃はふと
助言者ヴェンの悩み
……ワシを目覚めさせたのは、お主か?
ここに来たと言うことは勇者なのだろう。何代目の勇者なんだ。
ほう、二十六代目。魔王の奴も二十六代目か。
そうだ。お主の言うとおりワシはヴェン。助言者ヴェンだ。
名前くらいは知っておろう。初代勇者に助言をして勝利を掴ませた影の立役者。とはワシの事だよ。
本人だ。証拠を見せろ? いいだろう。
初代魔王は力押しで、雷の如く侵攻していた。だがそれが弱点だった。
自分より弱い者はいらない精神だった故、いつも一体だったのだ。
だから不意打ちする事を進言した。そしたら初代勇者は見事に打ち取ってくれてな。
ワシもその頃は鼻高々だった、のが間違いじゃった……。
えっ、まだ信じられないって。
次の二代目魔王は女性の姿で、魔族の雄だけでなく人間の男も誘惑し続けた。
結果、王国の騎士の半数が骨抜きにされる異常事態。
だからこそ、弱点が分かったのだがな。
二代目魔王は若い男を見つけては見境なく誘惑していた。そこに最大の障害である勇者を見つけた魔王は、成功を確信して近づいたところで、心臓を貫かれた。
二十六代目勇者よ。今の顔を二代目魔王もしていたぞ。
簡単じゃ。二代目勇者は史上初の女勇者だった。ただそれだけのこと。
……お、やっと信じてくれたか。老いぼれに長話させおって。石のベッドがどれだけ辛いか分からないから、そんな仕打ちが出来るんだ。
ほれ、二十六代目魔王の事を教えんか。
四本足で立ち、一昼夜で世界の端から端まで走ることが出来て、額から生えた螺旋の角で城壁を易々と貫く。と
それは強敵じゃのう。ンフフ。
ああ、すまん。簡単に対処法が見つかったからつい笑みが、こんな簡単なのは鳥の魔王以来じゃ、あいつは雷雨の日に鋼の剣を持って飛んでくるから――すまんすまん脱線したな。全く最後まで言わせんかい。
で、どこまで……そう魔王の弱点だな。大量のにんじんを用意すればいい。それと王国一番の娘。
奴は無防備に近づいて来る。そこで一撃浴びせればお主の勝ちだよ。
――待て。ワシはお主に聞きたい事がある。
すぐ終わるから最後まで聞いていけ!
すまん興奮して年甲斐もなく大声を出してしまった。危うく顎が落ちるところだった。
ワシの提案に対する陛下の答えは? 間抜け面をしおって。お主の六代前の勇者から提案しておるというのに。
いいか。これを話すのは七度目だ。お主は初耳だろうが、陛下に言えばすぐに分かる。何、国王も代替わりしているだと。分かってるわい。だが代々の国王に伝わっているはずなんだ。
だから、ここから動けないワシの代わりに聞いてきてくれと、言っておるんだ。
……ワシは生まれてこの方、冴えない人生を歩んでおった。転機はそう、魔王が世に現れてからだ。
だから、観察できた。周りが慌ただしく逃げ惑う中、ワシは暴れる魔王の一挙手一投足を老いた両目から萎んだ頭の中に記録し続けたのだ。
その甲斐あって勇者が勝ち、ワシは助言者と称賛され幸せな余生を送る事ができた。土の中で眠りにつくと、女神と名乗る女性がワシの功績を称えて死後の楽園へ招いてくれた。
そこは、いつも柔らかい陽射しが降り注ぎ、聖女の掌のようなそよ風が肌を撫でてくれる。煌めく葉っぱをつけた大木には尽きることのない黄金の木の実が生り、体の外側だけでなく内側からも満たされていたのだ。
なのに、お主たちはワシを捕え続けたまま。
死して尚、埋葬した死体に魔法を施し、呪文でワシを呼び寄せる。何度も何度も。
もう、うんざりなんだ。生者の争いごとに死者を巻き込まないでくれ。お主たちに呼ばれる度に、ボードゲームが中断するから最近誘われないし、死んで初めて出逢った運命の女性の態度まで最近そっけない。女神様は人の世界に必要以上に干渉しなくて、力にはなってくれない。
だから、二十六代目勇者よ。お主から陛下に伝えてくれ。
「土葬から火葬に」
絶句するのも分かる。
魔族の不浄な魂を滅ぼす為に火葬死、人の魂を大地に仕舞い守護霊とする為に土葬する。
それが常識だからな。
だが、古いしきたりは変えるべきだ。死んだ英雄達は嘆いている。死んでも縛り付けられて自由になれないと。
おい!閉めるな。話を聞かんか。王に伝えてくれ。土葬から火葬にと。それだけでいいんだ。
これ以上は堪忍袋の緒が切れるぞ。そしたらどうなるか分かるか。王やお主の枕元に毎晩、いや昼寝の時も夜更かしで朝寝する時も化けて出てやるからな。
助言者ヴェンの悩み 七乃はふと @hahuto
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