萌芽
暦海
第1話 奏多先生
「――おはよう、
「……おはようございます、
疎らな雲が空を漂う、少し肌寒い朝のこと。
扉から少し離れた辺りにて、何とも晴れやかな笑顔でそう告げる女性。彼女は
そして、そんな彼女とは対照的に何とも愛想のない返事をする僕。だけど、そんな可愛げも何もない僕にも彼女は気にした様子もなく優しく微笑んでくれて。……ところで、それはそれとして……どうにも、一つ大きな問題があって――
「……うん、分かってる。暖斗くんが、私に――そもそも、女性に対しどうにもならないほどの嫌悪を抱いていることは。でも、申し訳ないけどこれを
すると、淡く微笑みそう口にする奏多先生。それからややあって、花のような笑顔で真っ直ぐに告げる。
「――だって……君にはいつか、必ず私のことを好きになってもらうから!」
「……あっ、おはよう暖斗くん! その、今日は――」
「――うん、おはよう
「……あ」
それから、数十分後。
そう、控えめに声を掛ける女の子。彼女は藤野
「もう放っときなよ、あんなヤツ」
「……でも」
「そうそう、流石に感じ悪すぎでしょ。みんなに対してだけど、女子には特に」
「あいつ、あれじゃない? 最近よく聞く女性蔑視、みたいな」
「うっわ、最悪。ほんと、さっさと出てってくんないかな、
ややあって、耳に届いたのは藤野さんを含めた数人の女子による会話。どうやら、誰かの悪口を言っているようだけれど……まあ、そうなるよね。そんなふうに言われる態度を取ってる自覚はあるし。なのに、未だに僕のことを悪く言おうとしない藤野さんの方が珍しいくらいで……うん、
ところで、この状況についての大まかな
ともあれ、そこで知り合ったのが当時保育士を務めていた鮮麗な女性、早霧奏多さんで。当時から愛想なんてまるでなかった僕に、それでもいつも朗らかな笑顔で声を掛け、いつも気に掛けてくれて……ほんと、人が好いにもほどがある。
だけど、僕の入所から一年ほど経過したある日のこと――卒然、奏多先生が退職し
……だけど、それ以上に驚いたのが――なんと、
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