第6話 - 冒険者ギルドからの情報
私とドッペル・リーガー――今はリサとルシアとして――は、周囲を警戒しながらエルフ王国の街を歩いていた。慎重に行動しつつも、私はこの国の様子を冷静に観察していた。
エルフ王国は、かつて私が知っていた《アルヴァシア・ファンタジー》とは明らかに違っている。おそらく、私が受け取った最新アップデートが原因だろう。
(かなり発展しているわね……。それに、この街……どこか懐かしい。そうだ、ルメルと一緒に《三日月の迷宮》を立ち上げる前、ここを訪れたことがあった)
懐かしい記憶が胸をよぎる。けれど、今は感傷に浸っている場合じゃない。私は“リサ”として、意識を現実へ戻した。
「それにしても、エルフの人たちが本当に多いね、リサ姉ちゃん」
ルシア――ドッペル・リーガーが、周囲を見渡しながら言う。
「ええ。以前、ルメルと特別任務で来たことがあるわ。あの頃は、七人の大魔女もまだ明確な目標を持っていなかったけれど」
「他国の商人や、別の種族も見かけるね。ここは、意外と多種族に開かれているのかな?」
「完全に自由、というわけじゃないわ。門で見た資料によると、エルフ以外の種族は一か月以上滞在できないみたい」
私は門番から聞いた情報を思い出しながら、歩を進めた。エルフ族であれば、犯罪を犯さない限り王国の保護を受けられる――。
それに、この世界の日付や暦は、私がいた世界と同じ。調査を進めるうえで、これはかなり助かる。
「――あ、リサ姉ちゃん。あれ見て!」
ルシアが指差した先に、私は目を向ける。
「冒険者ギルド……ね。情報を集めるなら、ここが一番良さそう」
エルフ王国の冒険者ギルドは、かなり大きな建物だった。ビーストランドに次ぐ規模だと、私は記憶している。
私たちは扉を開け、中へ入った。中にはエルフ族を中心に、多くの冒険者たちが行き交っている。
「ルシア。さっき言った通り、振る舞いには気をつけて」
「うん、分かってるよ、リサ姉ちゃん」
並んで受付へ向かうと、周囲の視線が自然と集まった。白いローブとフード――顔は見えにくいはずなのに。
やがて、短い金髪のエルフ族の女性が声をかけてくる。
「エルフ王国冒険者ギルドへようこそ。受付のキーマと申します。ご用件をお伺いしても?」
「私はリサ。こっちは妹のルシアよ。ギルドにある資料について、少し聞きたいのだけれど」
私とルシアはフードを外した。
「まあ……双子なんですね。それに、とても綺麗……」
「ありがとう、キーマさん。私たちは外の村から来たの。ここの図書資料が充実していると聞いて」
「なるほど……。資料の閲覧は可能ですが、一つ条件があります」
――やっぱり、そう簡単にはいかないわね。
「王国の規則なら、従うわ」
「ありがとうございます、リサ様、ルシア様。では条件を説明しますね」
「聞かせて」
「図書資料を利用するには、ギルドの依頼を一件、達成していただきます。ただし……最近、王国周辺の魔物が急激に減っていて」
「……原因調査、ってこと?」
「はい。ただ、その件には“タリア”が関わっているという噂が……」
また、その名前。
「門番からも聞いたわ。かなり危険な存在みたいね」
「行方不明になった冒険者も多く、王国でも問題になっています」
「ねえ、キーマさん。どうして私たちに、そんな危険な依頼を?」
ルシアが率直に問いかける。
「察しが良いですね。ですが……この件は、もう打つ手がないのです」
――その瞬間。
ドォンッ!!
外から爆音と悲鳴が響いた。
「な、何が……!?」
扉が開き、血を流したエルフの女性が転がり込んでくる。
「た……助けて……」
「どうしたんです!?」
「レ、レッドウルフが……!」
騒然となるギルド内。冒険者たちが一斉に外へ飛び出した。私とルシアも、それに続く。
――そこで見たのは、地獄だった。
倒れ、喰われたエルフたち。七メートルはある、赤い毛並みの巨大な狼。
「……嘘でしょ。どうして、レッドウルフが、ここに……?」
突如として現れた災厄。エルフ王国に訪れた、本当の異変。
(……やっぱり、ただの調査じゃ済まなそうね)
こうして、私――リサとしての試練が、始まった。
私は人間のギルドの最後の最強の魔法使いに転生し、世界を支配することに決めた Gatama @gatama
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