追記。あるいは映画:副島
<film title="映画副島の暴走~あいつがやってくる~">
<narration>
<p>勘の良い読者はお気づきかと思う。私は校正者である。</p>
<p>説明すれば、こういうことになる。この小説は、三層の世界から成ると言える:</p>
<ul>
<li>世界0:副島の原稿世界</li>
<li>世界1:私の生きる世界</li>
<li>世界2:あなた(読者)世界</li>
</ul>
<p>既出の校正者A、B、Cは、当然世界0に生息している。原稿を書いていた副島は、「書く」ことを通して世界0に接続し、校正者と話している。当然副島は、私と同じ世界1に生息している。いや、既に故人であるから、「生息していた」と言った方が正しい。</p>
<p>世界1に生息する私は、小説冒頭に引用している「校正稿」を開き、「読む」ことで、校正者と話している。校正者A,B,Cに対して、世界層が一層上なのだ。さきほどの辞書ふうに定義してみれば:</p>
<dictionary>
<entry term="校正者">
<definition>原稿内世界の存在。原稿を「読む」「書く」行為によって、「読者」「執筆者」世界、即ち上位世界に干渉する。</definition>
</entry>
<update dictionary="私" value="校正者"/>
</dictionary>
<p>さてここで、いささか蛇足かと思うが、あなたに見て欲しいものがある。「副島の暴走~あいつがやってくる~」と題された映画である。製作者は私である。</p>
<p>あなたは映画館、スクリーン4にいる。傍らにはポップコーン。スクリーン4には他に数人の客がいる。照明が消え、スクリーンに注意書きが表示される:</p>
</narration>
<warning>
<p>この映画には以下が含まれます。苦手な方はご注意ください:</p>
<ul>
<li>副島(普通の顔して超絶暴走)</li>
<li>宇宙服二重構造</li>
<li>教室での光線(ビーム)、肉弾戦</li>
<li>黒板回転、チョーク流星</li>
<li>校長逆立ち、給食プリン、チャイムで犬誕生</li>
<li>半透明化・消失</li>
</ul>
</warning>
<narration> <p>あなたは周りの客を見回すが、誰も、立ち去らないようである。</p>
</narration>
<scene id="□-prologue">
<p>副島は通学路を歩いている。空は雲一つない青空。……今日も平穏だ。</p>
</scene>
<scene id="□-spacesuit">
<p>副島そっくりの存在が、宇宙服を着込んで教室に滑り込む。先生が言う。「副島、遅刻だぞ。それと、宇宙服を脱げ。」</p>
<p>あいつは宇宙服を脱ぐ。脱ぐと、下も宇宙服。</p>
<line speaker="teacher">え、下も……!?</line>
</scene>
<scene id="副島-intro">
<p>副島はさらに遅刻する。</p>
<line speaker="self">すみません、遅れました</line>
<p>副島は自分そっくりの「あいつ」を目にする。</p>
<line speaker="self">え、だれ</line>
<line speaker="other">副島だよ。君と同じ</line>
<p>先生が言う。「もう二人とも副島でいいよ。」雑である。</p>
</scene>
<scene id="□-beam-fight">
<p>すると「あいつ」が突然、肘からビームを放射する。光が弾ける。窓が溶け、校庭にクレーターが刻み込まれる。</p>
<line speaker="self">こら、校内でのビーム使用は禁止だぞ!</line>
<line speaker="other">はーい</line>
<p>副島は低く姿勢をとり、身をかわす。机を盾に、光線を避けながら素早く動く。</p>
<p>副島は「あいつ」に体当たりする。丁度ビームを放とうとしていた「あいつ」は崩れ、ビームが螺旋状に乱放射される。黒板が回転し、チョークが流星のように飛び散る。教室は混沌としている。その混沌は、あなたのいる映画館にも及んでいる。「あいつ」の撃ったビームのはスクリーンを超えてそちらに放射され、あなたのポップコーンに直撃する。ポップコーンが弾けとび、後ろの客からあなたに苦情が飛ぶ。</p>
</scene>
<scene id="笑い">
<line speaker="self">やめてください。</line>
<line speaker="other">やだ。</line>
<line speaker="self">そうですか。</line>
<comment>納得すな。</comment>
</scene>
<scene id="□-chaos">
<p>いつの間にか、窓の外が宇宙空間になる。肘からさらにビームを放つあいつ。副島は回避し続ける。</p>
<p>場面が著しく変わる。ピロティーでは変人が大量発生している。校長は逆立ちで歩き、給食はすべてプリンになる。チャイムが鳴るたび犬が生まれる。</p>
<p>教室内の二人がこれに気付くはずもなく、またこの逸脱を引き起こしているのが副島自身であると知っているはずもない。</p>
</scene>
<scene id="□-transparency">
<p>副島は半透明になっている。視界の端であいつの動きを追う。光線が飛び、机や椅子が宙を舞う。</p>
<line speaker="self">私、消えてません?</line>
<line speaker="other">うん。</line>
<line speaker="self">ですよね</line>
<comment>納得すな。</comment>
<p>あいつ、天井に向かってビームを放つ。天井は割れ、宇宙が覗く。宇宙の向こうから大きな目が出現し、その目からビームが放たれる。</p>
<p>あいつは蒸発し、声にならない叫びだけが残る。</p>
</scene>
<scene id="副島-end">
<p>校長は普通に歩き、給食はパンに戻る。犬も消える。教室は日常に戻る。あなたのポップコーンも、元通りである。まるで何も起きなかったかのようである。「あいつ」は初めから存在せず、ビーム戦もなかったような。</p>
<p>副島は席につく。黒板から見て最右一番後ろである。副島は机の一点を見つめる。黒い点、焦げ痕。ビームの痕跡。</p>
</scene>
<credits>
<p>エンドロール</p>
<line speaker="actor">副島(副島役)</line>
<line speaker="actor">副島(副島宇宙服役)</line>
<line speaker="actor">教師役</line>
<line speaker="actor">校長役</line>
<line speaker="actor">教頭役</line>
<line speaker="director">監督:私</line>
</credits>
</film>
小説:副島 枝吉 @74019813dendenmushi
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