2部 4章「処刑」
「なんですか……、これ」
ミコトは今現実で起きている状況についていけず呆然とする。
村の端にある小さな空き地へと呼び出されたミコト。
呼び出されていくと、そこにはシズクとアカリ、カエデなどの私兵が数人いて
その中心に、ボロボロになった人が一人、まるで罪人のように座らされていた。
軽く俯いており瞳は虚ろで、服は血まみれ、片目は抉られ、足の先が横一線になっていた。
それが足の指を切り落とされているからだと気が付き、ミコトは恐れおののいた。
そして、その顔が見覚えのある顔だと気が付くのには少し時間がかかるくらいには痩せこけていた。
「え……、ユイトさん?」
その言葉に気が付いたのか俯いていたユイトはミコトのほうを見た。
思わず駆け寄ろうとするミコト。
しかし、アカリに間へはいられ、抱き着くように制止された。
「アカリさん、放してください! ユイトさん、なんで……」
と強引に通ろうとする。がそれを渾身の力で阻止するアカリ。
そんな様子を見てユイトがか細い声で言葉を発した。
「ミコトには、話していないのか……」
「話?」
と、思わず聞き返したミコト。
それに対して、カエデがこう返した。
「ええ、見聞きさせるかは迷ったけど今から話すことになるわね」
「そうか……」
と半ばあきらめた雰囲気を出しながら声を絞り出すユイト。
それを憎悪を表にしながらシズクは指示を出した。
「では、カエデ。報告をお願い」
「はい、シズク様」
カエデはユイトを蔑むような眼で見下ろしながら報告を始めた。
「シズク様がこちらにいらしてからユイトを回収するまでの間にユイトについて調査を依頼されました。
もし、死んでいればそこまで、ですが生きているなら間者の可能性があるということです」
「間者……?」
聞きなれない単語に思わす聞き返すミコト。
「敵地に潜入して諜報活動をする工作員のことよ」
とカエデが解説して理解した。
今、ユイトがどういう状況に置かれているのかを。
「そこでユイトを回収後、王都の協力者へ調査を依頼している間、彼を隔離、
魔法を使用し尋問を実施しました」
「その結果がこれ、ですか?」
カエデはここで一度ふーっと息を大きく吐き小休止を入れたのち報告を続けた。
「いえ、魔法を使用しての自白を取るのには失敗しました。
魔法に対する抵抗力を持っているようです。それも相当な」
このカエデの報告にシズクは眉間にしわを寄せながら情報を補足した。
「魔法に対する抵抗力、それも任意で抵抗するしないを切り替えられるようにするには訓練が必要よ。訓練されるのは将軍と、間者になるわね」
「じゃあ、ユイトさん……は……」
間者なのか。と、ミコトは推測し言葉を出そうとしたが言葉が出なかった。
「一応、この時点では確定はしていないので、王都の情報待ちで拷問は実施ていませんでした。しかし、王都の情報を総合した結果、拷問を実施しました」
「ど、どんな情報だったのですか……?」
恐る恐るといった雰囲気で聞くミコト。
「ユイトは現王政での間者として活動していた記録がありました。
彼の以前いた組織が壊滅したのも、おそらく彼の報告が元なのではないかと思われます」
「本当なの……?」
といまだ信じられないといった様子でユイトを見るミコト。
その反応に彼は半ば諦めたように語る。
「その情報が嘘だろうと、真実だろうとここまでされてるんだ。
君たちの中では、私は犯人なんだろう?」
「私が信頼を置く配下が持ち帰った情報ですもの。
疑いが確信に変わるには十分すぎるわ」
と、シズクは表情一つ変えずに冷酷に言い放った。
「それでカエデ、拷問の結果はどうだったの?」
この質問に、カエデは困った顔をしつつ答えた。
「それが、この男は拷問でも口を割りませんでした。
私としては情報を引き出せなかったので、もう生かしておく価値はないと判断します」
「それって……」
ミコトは真っ青になりながらどういう意味かを聞いた。
「そうね……、情報を引き出せなかったのであれば、仕方ないわね。
カエデ、殺しなさい」
この一言で、ミコトは力が抜けてしまいストンとその場にへたり込んでしまう。
その様子を見て、カエデともう一人の従者がミコトの両脇につき、抱き上げるようにして立たせてこの場から離れさせようとする。
それをミコトは「嫌、いゃぁ……やめて……」と力ない声で呟きながら引きずられていく。
その様子を見て「少し、待ってくれ」とユイトが声で制止した。
「何かしら」
「最後に、ミコトに遺言を残すくらいはしてもいいだろ。
一応、お前らより先に賊からミコトを助けたんだから」
この言葉に、シズクは少し黙り考えた後
「いいわ。手短にするならだけど」
その言葉を聞いてユイトはこちらを向いた。
見るとアカリが腰に下げていた剣を抜いて準備をしている。
「ミコト、すまないな」
「ユイト、さん。私、私っ……!」
「いいか、よく聞け」
しっかりと聞くようにミコトに促した。
「俺はミコトの味方だ。何があろうとな。強く、生きるんだ」
それは、別れの言葉そのものであり、ミコトは大粒の涙を流す。
「そんな……いやぁ……」
「それと、こいつらはお前にまだ隠していることがある。
信用はしても、油断はしてはいけない」
「どういう……」
その言葉に一番反応したのは、ミコトではなくアカリで、座っている太ももへその剣を突き立てた。
「がぁ……っく……」
思わず苦痛に顔を歪め下を向く。
「ユイトさん!」
名前を叫ぶミコト。
対するアカリは、尋常ではない殺気を放出しながらユイトにすごむ。
「お前は何を知っている。話せ」
その言葉に対して、ユイトは鼻で笑いながら
「話すものなんてないさ。逆に話していないのは、お前らだろう」
そして、最後にはなった一言
「そうだろ、《セッカ姫》」
その一言を言い放った瞬間、ユイトの首筋に一線の光が見えたかと思ったらユイトの頭が宙を舞った。
心臓の鼓動のたびに首筋から血が噴き出し、頭は力なく地面に落ちた。
「いやぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」
と、絶叫に近い悲鳴を上げるミコト。
その場に崩れ落ち頭を抱えてうずくまった。
だが、悲鳴がこまだしきったところで、周りの人間が「なん……」「うそ……」と一様に絶句しているのが聞こえた。
ふと、顔を上げるとそこにはユイトの亡骸があるのだが、その亡骸からどんどん黒い霧が出始めてユイトを包みだしたのだ。
「これは……」
シズクは、何かを察したのか青ざめている。
他のものも、異様な光景にただただ茫然としていた。
しばらく黒い霧に包まれていたその体は風が吹くと霧散し体あった場所には何も残らなかった。
骨も、血も、何も。
しばらく全員はあっけにとられていたが、すぐにシズクが檄を飛ばした。
「敵に私の所在が筒抜けになっているわ! 今すぐこの場所も引き払うわよ!」
その言葉で、各々は正気に戻り一様に「し、承知しました」と行動を開始し離散した。
その場に残されたのは、状況を呑み込めないミコト。
そして、してやられたと苦い顔をするシズクだった。
異世界召喚で逆賊に召喚された私の未来は、処刑か、救国の英雄か @humika_akizuki
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