1章 10部「逃げ足は速かった 4」


 大慌てで村を脱出したシズク達は、緊急用の隠れ家への道を急いだ。

 隠れ家、と言っても本当に質素な隠れ家で、そこでいつまでも過ごせるわけではない。


 協力者は複数存在するが、どこに匿ってもらうか、協力先の準備が必要なので一時的な退避所としてその道を急いだ。

 幸いにも月明かりが出ているので、道に気を付けつつ馬を小走りさせる。

 馬の足音と荷台の音が聞こえる中、脱出した者たちは神経を尖らせていた。

 そんな中、ミコトはシズクに質問をぶつけた。


「あの、シズク様」

「どうかした?」

「いえ、なんというか。夜の森ってこの世界に来た時のことを思い出して苦手なんですよね」


 ミコトは不安そうにそう話を振る。

 いつ襲われてもおかしくないこの雰囲気に耐えかねての行動だったがシズクもそれを察し話に乗ってくれた。


「そういえばそうね。召喚したのは夕方だったわね。

 けど、魔法は発動したのに召喚した人が目の前にいなくてどうなってるのかと驚いたものよ」

「そう、なんですね」

「どうなっているかわからなくて、あたふたしていたら隣の山の向こうに雷が落ちたのよ。晴天だったのに」


 シズクは苦笑いしながらそう答えた。


「その時思ったわ。失敗したって。

 アカリとカエデには迷惑をかけたわ。夜通し捜索してもらったもの」

「そんなことがあったのですね……」


 ミコトは微笑みながらそう答えた。

 ただ、アカリとカエデの名前を聞いたことで彼女らの安否が不安になりシズクへ質問した。


「あの、アカリさんたちってどうなるんですか……?」

 その質問にシズクは「安心して」と前置きしたうえで

「アカリとカエデはこれから行く場所を知っているわ。

 ユイトには、万が一の際の合流地点を指示してあるわ。生きていればそこにいるはずよ」


 ミコトは、その言葉に安心しつつも同時に不安になる。

 カエデはともかく、アカリ、そして会談に直接参加しているユイトの安否が気になった。

 二人は言わば鉄火場にいるようなものである。

 ただ、彼女にできることはない。

 できることは、無事であることを祈るのみ。

 不安を感じつつも、どうかもう一度会えますようにと祈っていた。

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