【BL】伯爵令息、婚約者を義弟に取られて田舎男爵に嫁ぐ

椎葉たき

第1話

「本日は晴天なり、本日は晴天なり。しかし、午後ににわか雨の気配あり〜」


 干していたクランベリーを取り込みながら、ジェイミはボソボソと呟く。

 裕福なロード伯爵家長男であるが、服装は農民と見紛う質素なものだ。ホワイトブロンドの髪は手入れをされておらず、肌は小麦色に日焼けをしていた。


 質素な格好、質素な小屋の裏手には不釣り合いな、かっちりとした壮年の執事が来る。

「ジェイミ様、エドモンド様が見えております」

「弟が対応するから、行かなくても」

「いけません。まだジェイミ様が婚約者です」

「まだ、ねぇ……」


 ジェイミはそっとため息をつく。

 エドモンドは伯爵家長男ジェイミの婚約者だが、男である。


 男女の第一次性に、第二次性がある。

 第二次性は、アルファ、ベータ、オメガがあり、大多数はベータだ。

 アルファ優れた能力を持ち、オメガは性別関係なく妊娠可能。アルファもオメガも、オメガの腹からしか産まれない。

 ロード伯爵家の長男として生れたジェイミは、アルファの婿を取って家を継ぐ立場にあった。


 しかし、今やその立場は腹違いの弟に取って代わろうとしている。

 ジェイミの母が流行り病で亡くなれば、父は再婚した。継母の連れ子の義弟ケアリーは、溌剌とした見目の良いオメガだった。使用人たちにすぐに受け入れられ、ジェイミの居場所は屋敷から粗末な小屋となった。


 渋々、居間に行けば、義弟ケアリーと婚約者エドモンドが体を寄せ合い、仲睦まじく談笑している。

 そこに、何故か父と見知らぬ男性が居た。


「ジェイミ来たか。座りなさい」


 父に言われ、席につく。

「お前とエドモンドの婚約を解消し、ケアリーを新たな婚約とし、伯爵家を継がせる。そして、お前はこちらのブラドン男爵に嫁いでもらう」

「わかりました」


 エドモンドとは恋愛関係にあった訳ではないし、侯爵という地位にも未練はない。

 新たな婚約者となった、ブラドン男爵を改めて見た。緑髪に緑色の瞳、整った顔立ち、引き締まった体型はなかなかの男前だ。

 おそらく、アルファだろうと当たりをつけた。アルファは能力だけではなく、容姿も優れている者が多い。筋肉がつきやすく、脂肪がつきにくい体型は典型的なアルファだ。


 義弟ケアリーは、高慢にブラドン男爵を見下ろす。

「ブラドン男爵、ジェイミ兄上の為に隙間風の吹くウサギ小屋のようなあばら家でも建ててやってください。それから、食事は動物に餌をやると思って、極力質素に」


 ブラドン男爵は不快そうに眉間にシワを寄せる。

「私の伴侶となるのだ、彼の処遇は私が決める」

「初対面の貴方に何がわかりますか? ジェイミ兄上に贅沢は必要ありません」

「ケアリー、その態度は……」


 ジェイミが窘めようとしたが、ブラドン男爵がバンっ! とテーブルを叩いた音に遮られた。


「今すぐ、ジェイミ殿をウチで引き取らせてもらう!」


 ジェイミは婚約者と爵位継承権を義弟に取られたその日のうちに、男爵家に引き取られたのだった。

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