楽器紹介のためのメルヘン

枝吉

第1話 トロンボーンは冷蔵庫にいる


ある日の朝。

僕が目を覚ますと、冷蔵庫から「ブフォーーーーン!!」という爆音がした。


「……ああ、またトロンボーンがミルク飲んでるな」と思った。

別に驚かない。昨日は風呂場でクラリネットと将棋してたし。


冷蔵庫を開けると、そこにはいた。


ドヤ顔のトロンボーン。


氷の上に寝そべりながら、サングラスをかけて、牛乳パックをストローで吸っている。

なぜかストローはスライド式。意味がわからない。意味は大事じゃない。


「おはよう。今日のB♭は冷えてるぜ」

そう言ってトロンボーンが吹いた音は、

なぜか魚の鳴き声になって天井から落ちてきた。


「お前さぁ、なんで冷蔵庫にいるの?」と聞くと、


「お前こそ、なんで服着てんの?」と聞き返された。


言い返せない。たしかに僕はトロンボーンじゃないのに服を着ている。謎だ。


「ところで、今日は何の音を吹く予定?」と聞くと、


トロンボーンは深刻な顔でこう言った。


「今夜は、"存在しない音"を吹く。だから、耳栓をしておけ」


僕は急いで耳栓を買いに行った。

でも途中で、八百屋で音階を売っていたので、ついHiB♭をひと束買ってしまった。


帰ると、家がもう吹奏楽部になっていた。

冷蔵庫は指揮者になっており、風呂場でトロンボーンが水着姿で練習していた。


「いいか、ブレスは肺じゃない、魂でしろ」


と叫びながら、トロンボーンがスライドを伸ばすと、

空間が裂けて中からパイナップルが出てきた。


「今日のソロはこいつだ」


……ああ。今日も世界は平和だ。




---


まとめ(意味はありません)


トロンボーンは冷蔵庫に入ることがあります


音が物理現象に干渉することがあります


ブレスは魂でしろ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る