第2話:蟻、反復、限界

地下鉄の駅のホームの端まで行ってみることにした。


豪雨のように人々が流れ込んでいく。あんな人、こんな人。仕事帰りのスーツ姿だったり、やけにプロフェッショナルに見えるブラウスだったり、とにかく皆きちんと着込んで、それぞれの手のひらサイズの黒い長方形と、細い道具と、切り取られた皮革を持ち、互いに押し合いながら階段とエスカレーターに足をかける。声が混ざり合い、ひどく灰色の低音ノイズになる。人々は人々の集合体だ。しかし人々は一人だ。一人が階段を上り、上の階へ吸い込まれていく。しかし私は、その人々の一部ではない。階段を上る人とは別だ。だから私は、見ている。


足を鈍く駅の床タイルに叩きつけながら、私は駅の前へ進む。1-2、1-2、1-2、1-2……


灯りは淡く人々を照らす。特有の眩暈を誘う緑色で、肌を、服を染める。ベンチには多くの人が眠たげに座っていて、なんというか……皆、この駅の天井ネオン電光に酔っているようだ。目に染みる酔いが顔に上り、表情を、皮膚を勝手に歪める。あ……とても疲れているように見える……


人々は地下鉄を待っている。塾街から家へ帰る学生たち……会社から家へ帰る会社員たち……どこへ行くのだろう?家へ?私は家へ帰っているのだろうか?人はなぜ家へ帰るのか?家へ帰らなければ、なぜいけないのか?どうやって家へ帰るのか?地下鉄をいつまで待つのだろう?


新発売のinaviアイスの広告。三メートルほどのポスターが、トンネルの中ほどに目立つように貼られている。ポスターには、満面の笑みの女子高生、女子高生二人がベンチに座ってアイスを分け合っている。


広告の中の人々が、本物の人々を凝視している。緑色の光で、人々の気配をゆっくりと吸い取っていく。人々はただ、血を抜かれるような心地よい眩暈に酔い、身体を動かしているだけ、家へ帰っているだけだ。広告の中の人々が、何倍も大きく、活力があり、生きているように感じられるのはそのためだ。


私はここで何をしていたんだっけ?


あら、危うく忘れるところだった。


以前見た「関係者以外立入禁止」の扉に辿り着く。


入ろうか?




目の前の鉄の壁が二つに割れると、機械たちの変わらぬ足音が聞こえる。少し待て……足音?


当然、機械は歩いていない。ただの部品だ。そう聞こえただけだ――文学的表現ということにしよう。白いタンクと、内臓のように床と天井を這うパイプと電線と正体不明の部品とジェネレーターの中で、少女がとぐろを巻いている。


「こんにちは。今日も来てくれたんだね。」


変わらぬ姿勢で、少女は座っている。少女は私を見る。


「君……少し寂しそうだね。何か困っていることとか、引っかかっていることがあった?」


彼女は微動だにせず話す。腕や脚は人形のように綿が詰まっていて、動かせないのだろう。それにもかかわらず、真っ白な顔には活気が満ちていた。日光を含んだ海の表面のように、浅く黄みがかったエネルギーが、彼女の皮膚の下を絶えず循環している。筋肉も肉も骨も、すべて備えた人だ。これ以上ないほど、生きて動いている人だ。


人たちが……人たちが、どこへ行くのか分からない。皆、私だけを除いて、決まった約束に向かっているみたいだ。


「あ、はは。だから寂しかったんだ?」


うん……そうかもしれない。


「人は決まった場所へ行くものだよ。まあ、ここでは当たり前のこと。今この瞬間、私と一緒にいる間だけは、君は『人たち』じゃない。人たちは4号線に乗って、働いて、帰る。働くことしかしない。働くことは人間世界で最も確かな現象であり、その中心でもある。働かなきゃいけない。働かなければ人は生きられないから。当たり前でしょ?


何時何分ぴったりに地下鉄に乗らなきゃいけない。そうでなければいけない。そうでなければ……そうでなければ……もし逃してしまったら……働けなくなる。そうしたら生きられなくなる。私は死んでしまう。何を言っているんだろう?当たり前じゃない。


世界のすべては『一定の反復』として動いている。私たちは反復を断ち切れない。ただ反復を長くしたり短くしたり、新しい反復の可能性を準備するしかない……反復が途切れたら、死んでしまう。心臓の反復が途切れたら、人は死ぬ。思考の反復が途切れたら、人は死ぬ。昼夜の反復が途切れたら、人は死ぬ。日常の反復が途切れたら、人は死ぬ。同じように、この地下鉄が万が一、定刻に到着しなかったら……人は死ぬ。


人の生とは、極めて単純だ。同じ電子の公転が反復されて物質が形成されるように、結局は同じ心臓と、同じ思考と、同じ足取りが、ある順序で反復され、一人の経験が形成される。だから、すでに定められた『人』という反復を、私たちはただ、繰り返しているだけ……


時間というものは、世界を反復させる力に過ぎない……それ以上でも以下でもない。」


蟻のようだ……と思った。人は反復する。少女を収めたピンク色の機械が、残酷に感じられる。吐き気がするほど人工的な、滑らかで角ばった本体。プリンターの一定で均整の取れた色に染められた、#FFC0CBの均一な、ほとんど無限の反復……


振り返ると、数え切れないほど気の遠くなる反復が、この部屋の隅々を満たしていた。刃の立った機械一つ一つが……タンクの胴体を出力し……コンクリートで分子を合成し、均一な物質を織物のように重ね、重ね、ついには一ミリの誤差もない『型』を製造した。タンクだけではない。内臓のように流れるパイプも、ジェネレーターも、壁も、地下鉄も、私の身体さえも。展開される電気系統、終わりのない点滅、点滅、点滅、点滅、


工場機械になるとは、どんな感覚だろう?


分子一つ一つをすべて分解し均一な形に組み立て均一な間隔で置き積み分解し組み立て置き積み分解し組み立て置き積み身体が腐り崩れるまで繰り返しついに消滅すれば交換され分解し組み立て置き積み。


地下鉄の中で人が働き、その中で人が働き、その中で人が働き、その中で人が……


人は分解され、組み立てられ、置かれ、積まれ、分解され、組み立てられ、置かれ、積まれ。


その反復に逆らう力は、誰にもない。反復が、私と世界のすべてであり、定義であり、意味であり、本質……


少し、怖い。


少女は心配そうに私を見る。漆黒の大きな瞳が、少し溶けたように揺れる。そうだ……怖がる必要はない。ただ、見過ぎただけだ。少女の目は完全な闇。だから、近くで見ても遠くから見ても、反復されない。そう……少女の目は反復されない。それ自体が均一な存在で、下位システムのようなものはない。いつも同じ、深い黒。整えられた安心。息をしよう。


何でもない。心配してくれてありがとう。


少女は黙り、そっと微笑んだ。そして、表情が少し悲しげに暗くなる。


「よかった。君が怖がらなくて。私はね、この機械から出られないんだ。」


どうして?


「ここで待つことが、私の『反復』だから。私たちは反復を断ち切れない。もし外に出たら、きっと死んでしまう。この場所にあるタンクたち……実は、私はその一つなんだと思う。でも大丈夫。私はどこにも行かない。ずっとここにいる。もう行くの?」


うん。今日はもう行かなきゃいけない。


「また来る?」


……また来ると思う。確かじゃないけど。


「分かった。バイバイ。」


背中に注がれる少女の視線が、真っ白く燃え上がる。そんな気がした。

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