拠り所
白川津 中々
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人の不幸を聞いて「俺だって」と憤ってしまうのは、自身の未熟な精神性が他者より幸せである事を拒んでいるからなのだろう。
俺は早いうちに両親を亡くしたのだが、祖母の家で不自由なく暮らし大学まで出してもらって、普通の会社に入り、普通に暮らしている。親がいないという点を除けば、何から何まで一般的な幸福を享受している
そんな中でふと、「自分には両親がいないんだ」と酔いしれる瞬間がある。
それは誰かがひどく落胆している時や、事件や事故で悲しんでいる人が映された時。誰かの涙に自尊心が傷つけられ、心中で叫ぶのだ。「俺は両親に抱かれた記憶もない」と。
過去、自身にあった小さな不幸が拠り所となり、俺は現状の普通を異変にしたがる。矮小な自分が更に劣等となって大変惨めな思いをする反面、自らに起こった悲劇がすっと琴線を撫でるのだ。
俺はどこかで自分が不幸であらねばならないと思ってしまっている。幸福に生きている今を享受しながら、他者の悲嘆を許容できない精神的欠落はやはり親がいないから生じたのだと考えるのだが、その仮説さえ、甘く感じる。目に入る他者のあらゆる悲しみに目を瞑りながら、自慰に似た悦楽に耽る。
誰よりも不幸である事を望みながら、満たされた毎日を送る。誰よりも不幸であらねばならないと、言い聞かせながら。
拠り所 白川津 中々 @taka1212384
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