ゴミ屋敷を片付けたら異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けることになりました

あずきかん

第1話 ゴミ屋敷のゴミの中

いわゆる私の両親というのは、ろくでもない親だった。

そんなわたしの父が、ゴミ屋敷の中で死んだ。


「ええーっ!ゴミ屋敷の掃除ってそんなにかかるんですか」

「平屋とはいえ、一軒家ですからね。ご自身でやられて、トラック廃棄だけならかなり安く行けますけど、このゴミ屋敷の惨状では...」

見積もりに来た清掃会社の人は、申し訳なさそうにしつつも、床にこれでもかと積まれている悪臭漂う生ごみ袋と、ここでご臨終ですねという跡形らしき物を見て目を背けた。


夏も終わり、夜は肌寒くなってくる冬に入りかけの季節。

皮肉にも、この街の交番の警察官が数年に一度、状況把握のために家を回って住居情報の確認をしていた。

そんな中に、鍵もかからない玄関からはみ出た悪臭漂うゴミの部屋、そして中には変わり果てた姿の父があったという。


「近所に家がないのが周りの迷惑にならず、せめてもの救いだったけど気づかれるのが遅すぎたわね」


開けた瞬間の激しい悪臭と、業者の人ですら目を背けたそこにあったと思われる遺体の跡形、激しい虫に、私もぞぞっと後退りする。


「先立つものがない限り仕方ないですよね」


街中ではないが、住宅街から少し離れていた。

この家が売れればまとまったお金はできるかもしれない。

だが、それ以前にこのゴミ屋敷の持ち主の父は借金があった。

家を売って、借金がなくなればいいが...


「ああ...神よぉー」


私は深くため息をつくしかない。


「遺産の受け取り拒否をすればよかった。私だって普段ならそうしてたわよ...」


だが、私は職場が倒産して失業したばかりだった。

そこに入った父の訃報。


父は死んだわけで、もう巻き込まれることもないし、住むところの確保だけはできると思ったのよ

渡りに船かと思ったが、そんなわけがなかったわね

ああ、今ならバカな判断をしたと頭を殴ってやるのに...


激しい後悔に駆られても後の祭り。


母は私が小学生の頃に男と蒸発したし、父親は、まさに飲むか博打かの性格で問題ばかり起こしてくれていた。


それからまもなく私は施設で暮らすことになり以後両親とはあっていない。

「でも、ここにしか私にまつわる思い出がないのだもの」

私の記憶が確かなら、家には私が幼い頃のまだ幸せと思われていた家族写真や買ってもらったおもちゃ、思い出の物もあった。

ここで手放したら私の過去全てが無くなってしまうようなそんな感覚に陥りそうになったのだ。


私には兄弟はいない。

この古ぼけた家だけが唯一の思い出なのだ


とりあえず見積もり段階ですでに支払えないことは分かり、大量のゴミ袋のサービスと廃棄のトラックだけ契約する。


「やるしかないか。とりあえず寝泊まりしたい。水と電気は未払いを支払ったからゴミさえ片付ければなんとかなるわよね」


台所、風呂、トイレ...か。

ガスまで辿り着きたいけど、贅沢は敵!


「と言っても風呂もシンクも所狭しでブンブン飛び交っているんだけど」


私は腰に手を当てて、まず掃除する場所をシュミレーションする。

水場の確保ーーこれをしないと何もできない


「流れるものがあれば少しは変わるかもしれないしね。」


まずはゴミを踏みつけながらシンクの中を片付けていく。

「もうゴミの原型がないのだけど...ドロドロに溶けてるし、なんか獣死んでるし...」


手袋、マスク、メガネでどんどん投げ込んでいくがカップ麺か惣菜か酒かという状況で、そこに悪臭のえたいのしれない何かが加わっていく。


「なんで風呂やトイレにゴミを捨てようと思うの!解せない!!」

ドアはもう開閉できないただ雪崩のように積み重なるゴミ袋。どこで寝ていたのか知りたくなる。


シンクの上にあったゴミを一旦袋に入れて、トラックが運び込めるように外に積み重ねていく。


宅配便は来る。だから、ネットで買える酒とカップ麺、惣菜ばかりになったのだろう。

いや、電気を止められて冷蔵庫が使えないからか?


とにかく、プラスチックゴミとその食べ残しの蓄積と思われる生ごみ、ペットボトルと瓶の山がひたすら出てくる。


「風呂も確保したいといいたいけど、トイレとシンクだけ確保しよう」


最悪、風呂で寝られるだろうかと甘いことを考えていたが、これは車中泊決定だ。


父の遺体は夏の暑い時期を通りすでに白骨化していたという。


「使えなくなったトイレの代わり?紙おむつが大量に出てくるんだけど。もうやだ!」

衣服やタオルなどの日用品と思われるものはドロドロのゴミの中ですでに布としての原型がない。


壁には5年前から止まっているカレンダー、いつからか止まっている時計がかかり空間が止まったままだ。


線から抜かれた電話

使うことも恐ろしいストーブ

3本足になったこたつ

開くのも恐ろしいが、開かない炊飯器

埃に塗れ、色が見たことない状況になった調味料...


異様に多い紙類、そして、督促状ーー


もういや!!!

なんで財産放棄しなかったのよ!わたし!!


叫び声を上げながら1週間


それでも私は床に近づくにつれて探し続けた。

机の中、押し入れ...


「どこかに写真一枚ぐらいあるはずよね。まさか捨てたの?」


だが、こんなにゴミを捨ててないのに、肝心の私の過去にまつわる思い出は、空き箱ひとつ見つからない。


服も、おもちゃも、本も...


「ううん、そんなものどうでもいいわ。お父さんの写真も、お母さんの写真も、わたしのものも...1枚もないの??」


全てをトラックに乗せ終えた時、そこには思い出も何も一つも見つかることはなかった。


「では、これでもう載せるものはないですね。いやー、1週間でここまで綺麗にされるとは...お疲れ様です。」

見積もりに来た時と同じ業者の人が、労いの言葉と共に領収書をおいてトラックに乗り込んだ。


「ひとつぐらい、写真か何か...あったと思ったのにな」


私は呆然としたまま、ゴミたちを載せて去っていくトラックを見送る


施設に行ってからは面会も一度も来なかった父

男と蒸発してからは、一度も連絡がなかった母


「二人にとって、私が欲しかった思い出は、消し去りたい過去だったの?」


私の頬を一筋の涙が流れていても、それを慰めてくれる人も、拭いてくれる人もいない。

残った唯一の思い出の家には、きれいになることのない汚れと染み込んだ悪臭が消えずに残っていた。


◇◇◇


「これからどうしよう。引越し費用を払ってここに越してきても、冷蔵庫も洗濯機もないし...そもそもガスも止まってるし」


この家をさっさと売り払うほうに舵を切るか

借金も把握しないといけないし、金額によっては自己破産だよね。


「私、まだ24歳だよ。ひどいよ。こんなの」


でも、体で返せるほど自慢の体でもなければ、巧みな話術でお客さんを楽しませることができるような人間ではない。


よく借金があったら夜の商売をしたらいいとか、体を売るというが、それができるニーズがある人になれるのはごく一握りだ。

もちろん、短期ならば多少のお金にはなるかもしれない。

だが、24才は、夜の商売で若さを売りに出来る年齢ではない。これから始めてみるわと言えるほど甘い職業ではないのだ。

自分ぐらいの歳になると、お客をつけることができるような時間や空間を提供できる人材になれる人はごくわずか、それを生涯の職業にできる人はわずかなのだと、施設時代の仲間からも聞いていた。


「それでもツテを頼るしかないか」


土地の権利書や建物の登記書が入った箱は押入れに残っていてホッとする。

それをごそごそ箱から出すと、奥に薄汚れた大きな布の袋が畳まれて入っていた。


「まだ、こんなところにゴミがあった」

私は思いっきり顔を顰める。

この手の袋を開いたら、黒光りする例の虫や、それらのご臨終になった死骸がでてくるのだ。


「でも、大事な書類が入ってるかもしれないわよね。何、この布袋?ゴミ袋サイズなんだけど」


しかも、奥が見えない。

袋をひっくり返そうとするがなんか硬くてひっくり返せない。


「なに?何が入っているの?」


私はどこかでまだ期待していたのかもしれない。

その中には、隠しても捨てられない写真とか、私のものとかあるんじゃないかって


少し前のめりになり、袋に頭を突っ込む

それと同時に、ぐっと陰圧がかかったような抵抗があって


うわわわわわあああああかああぁぁぁぁ


その先が、何もなかった。

私はひたすら転落していく

「何が?何がどうなってるの!!!わあああああ」


その袋の先に転がった時目の前にあったのはーー


広い赤絨毯、大きな絵画、そして、


「お前は誰だ!!」


私は一斉にみんなに囲まれ刀を向けられている。

わたしはごくりと息を呑む。

ちょっとでも間違えたら、これは詰む。


「ここは?あなた方は誰ですか?ここはどこですか?」


私は無抵抗を示すために両手をあげながら叫んだ。

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