第5話:役立たずのクズを辞めさせてやった(秀視点)

 俺の名前は神楽秀。27歳の男で職業はウーチューバーをしている。


 そしてウーチューバーとしては今若い子達からの絶大な人気を誇っているグループ“ストライクフォース”のリーダーを担当している。


 このストライクフォースを立ち上げたのは俺が大学一年の頃だったから、結成してから9年近くが経っているという事になるな。


 ストライクフォースを作ったきっかけは大学一年生の頃に仲が良かった俺、友瀬、成瀬、村本の四人で夏季休暇中に何かしようって軽いノリで始めたのがきっかけだった。


 別に人気になりたいとか金持ちになりたいとかそんな気持ちは一切なく、いつもの俺達がダラダラと遊ぶ延長線上としてウーチューブを始めたんだ。


 そんで最初の頃は歌ってみた動画、ゲーム実況動画、まったり雑談配信などの他のヤツらがよくやっていた昔ながらの王道スタイルで俺達もやっていた。


 ウーチューブを始めたばかりの頃は見に来てくれる人もチャンネル登録者数も全然増えなかったんだけど、でも毎日継続してウーチューブ活動を続けていったら少しずつ人が見に来るようになってきた。


 それからしばらくしてウーチューブ界隈では顔出し有りの実写系ウーチューバーが流行りだしてきた。


 だからこれを機に俺達も顔出しをする実写系のウーチューバーになろうとメンバーに提案してみた所、成瀬と村本の二人は速攻でOKを出してくれた。


 でも友瀬だけは顔出しは恥ずかしいから嫌だという事だったので、友瀬には演者としてではなく裏方をしてもらう事にした。という事でそれからは実写系ウーチューバーとして再始動する事になった。


 実写系ウーチューバーに転身していくと、すぐに幾つかの実写動画がバズってくれた。理由は俺達演者の力によるものだろうな。俺達の見た目や面白いトークセンスのおかげでファンが一気に増えていったんだ。


 こうしてストライクフォースのチャンネル登録者数は爆発的に増えていき、たったの数ヶ月でチャンネル登録者数が100万人を突破する事が出来た。


 そしてそれからも俺達は精力的に動画を投稿し続けてきたおかげで俺達の人気は留まる事を知らずに右肩上がりでどんどんと成長し続けていき、そのおかげで今では俺達は年収数千万円を簡単に稼ぐ程の超勝ち組へと成長したのであった。マジで実写系ウーチューバーを始めて大成功だったぜ。


◇◇◇◇


「それじゃあ今日の動画はここまで!」

「チャンネル登録、高評価、メンバー登録もよろしくな!」

「それじゃあ、ばいばーい! ……はい、オッケー」

「ういー……おつかれーっす」

「あいよー」

「んー」


 今日の緊急動画を撮り終えた俺はそのままソファの上にゴロンと寝転がっていった。他の二人も同様に近くの椅子に座りながらスマホを弄り始めた。


「今日の動画は編集せずにノーカットでそのまま投稿でいいよな? 編集とかめんどくせぇし」

「全然それでいいよ。ってかどうせ今日の動画の本題は編集スタッフ探してるっていう動画だしな。だから何の編集も無い方が切羽詰まった感が出て逆に良いだろ」

「確かにそうだな。わかった。それじゃあ後で動画見返して大丈夫そうだったら明日の朝にでも投稿しとくわ」

「オッケー。あ、それじゃあその動画が投稿されたら個人チャンネルで生配信しても良い? リスナーの皆に慰めて貰わないといけないしさ。ふへへっ……」


 村本はニヤニヤと笑いながら手の親指と人差し指をくっ付けながらお金のポーズを取ってきた。


「そんなの各自の自由に決まってるさ。好きに生配信して投げ銭貰って来いよ」

「よっしゃ、サンキュー! それじゃあ明日の投げ銭ランキング一位を取れるように明日の配信では頑張って泣いてくるわ!」

「ぷはは、何だそれ、泣き脅しするとかせこいだろ。一位取れたら焼肉でも奢ってくれよー?」

「はは、もちろん良いよ。超高級の焼肉を幾らでも奢ってやるよ」

「お、やったぜ。それじゃ村本が投げ銭ランキング一位を取れるように俺からも援護射撃してやるよ」

「え? 援護射撃って?」


 俺はそう言いながらポケットに入れていたスマホを取り出した。そしてすぐにアプリの“トイッター”を起動していった。


―― 皆ごめん、マジでヤバイ大事件が起きちまった……明日の朝に緊急で動画投稿するわ……


「これで良しと」


 俺は早速自分のアカウントを使ってそのような仄めかす文章を投稿しておいた。これで明日の朝に動画を見てくれるヤツが大勢いるはずだな。


「んー、どうしたよ? って、あぁ、もうトイッターに宣伝してくれてんのか。秀は仕事早いなー」

「当たり前だろ? 村本が高級焼肉を奢ってくれるっていうんなら俺も本気ださなきゃなんねぇだろ」

「あはは、流石リーダーだぜ! やっぱりリーダーは仕事出来るなー。超ウスノロだったどこかのバカとは全然違うよなー!」

「おいおい、あんなゴミクズ男と一緒にすんなよ?」

「「あははっ」」


 俺達はそう笑い合いながら今日ストライクフォースから脱退したアイツの事を馬鹿にし始めていった。


「それにしても友瀬はマジで仕事遅すぎて酷かったよな。あれで月に三十万も貰ってるって絶対に詐欺だよな」

「あぁ、確かに確かに。アイツは金貰い過ぎだったよな。俺達は動画の出演者として毎日色々と大変だっていうのにさ……それなのにアイツは快適な部屋の中でパソコンをカタカタ打つだけの楽な作業しかしてないってのがマジでムカついたわ」

「いやマジでそれな。俺達が汗水頑張って稼いできた金を何でアイツに取られなきゃいけないんだよ……ってずっと思ってたもん。だから俺も毎日キレそうだったぜ」


 俺達は友瀬の事を思い出しながらそう罵っていった。思い出せば出すほど友瀬はガチで無能な男だった。


 編集しかやってない無能男のクセに自分が如何に忙しいのかを毎回力説してくるし、マジで仕事が全然出来ないゴミカス男だった。無能なゴミカス男ほどこの世で要らないモノはないよな。


「はぁ、アイツの仕事如きに月三十万の価値なんて全然ないっていうのに、それをちゃんと理解出来てない時点でアイツは終わってたよな。自分は仕事が滅茶苦茶出来る優秀な人間だって思いこんでる無能なヤツ程使えないっていうけど……アイツはまさに典型的なそれだったよな」

「あはは、仕事が出来るって思いこんでる無能なんて、まさにアイツの事じゃん! それにしてもアイツ無能のクセに何でいつもあんなに態度がデカかったんだろうな?」

「あぁ、マジで意味不明だったよな。しかもアイツは仕事全然しないクセに俺達にはいつも嫌味ばっかり言ってくるしさ。いやマジで何様だよコイツ……っていつも思ってたわ。でももう二度と友瀬と会わないで済むと思うと滅茶苦茶気分良いわ!」


 昔は俺達の言う事を黙って従ってくる普通のヤツだったのに、ストライクフォースが人気になっていくにつれて、アイツの態度もどんどんと大きくなっていったんだ。


―― 炎上するような行動は絶対にするな!

―― 企業先やコラボ相手にはちゃんと敬意を払ってくれ!

―― 失礼な発言をするな! そんなの面白くないから!

―― マジで女性問題だけは起こすんじゃねぇぞ!

―― 特に浮気とか不倫とか人様に迷惑をかける事だけは絶対にするなよ!

―― 頼むから炎上だけは絶対にするなよ!!


 などなど、今ざっと思い出しただけでも、アイツが俺達に向けて言ってきた口煩い言葉を簡単に思い出す事が出来てしまった。アイツはマジでウゼェ事ばっかり言ってるゴミカス男だったよな。


 でも俺達は友瀬が心配するような炎上を経験した事は一度もない。何故なら俺達は相当に優秀なウーチューブグループだからだ。アイツはそんな事もわからずにいつも優秀な俺達に説教めいた事をしてきたんだ。はぁ、全くもって腹立たしかった。


「あ、そうだ。そういやアイツがいなくなった事で余った臨時収入の三十万はどうするんだ? 特に使い道もないしサクッと三等分するか? それとも何か面白そうな企画にでも使うか?」

「うーん……まぁ特にやりたい企画もないしサクッと三等分するでいいんじゃねぇか?」

「お! やったぜ! それじゃあ早速その臨時収入を使って今からデートに行ってくるわ」

「うん? いやデートって、お前いつの間に彼女作ったんだよ?」

「あぁ、いや実はトイッターに可愛い女の子からDMが飛んできててさ。だからちょっとその子と遊んでくるわ。いつもなら友瀬のクソバカに無理矢理止められてたけど、でもアイツももういないし関係ないよな?」

「全然良いだろ。ってか今時はSNS上で知り合った女と遊ぶくらい誰だってやってる事だしな。はぁ、マジで思い出せば出すほどアイツは融通の効かない無能なバカ男だったな。次の動画編集のスタッフは頭が柔らかいヤツにしようぜ」

「あはは、それ良いな! 次のスタッフはマジで良い子を採用しような。って事でそんじゃあ早速遊びに行ってくるわ!」

「わかった。今日のデート楽しんで来いよ、お疲れさん」

「お疲れーっす」

「おう、ありがとな! それじゃあお先ー!」


 そう言って早川は嬉しそうな表情を浮かべながらストライクフォースの撮影スタジオから出て行った。


 あの無能なゴミカス男がいなくなってすぐにグループ内が明るくなった。マジで俺達グループの士気を下げてたのってあのゴミカス男だったんだな。


(はは、それじゃあやっぱり友瀬をクビにしたのは間違いじゃなかったな!)


 今までの一連の会話だけ見ても、やっぱり俺達のグループにはあんなゴミカス男は絶対に要らなかった。というか仕事もしないクセに口煩いだけの無能だったんだから、もっと早くに辞めさせれば良かったよな。


 ま、もう二度と会う事もないからどうでも良いけど。あんなどうしようもないゴミカス男の事なんて。マジで実家のド田舎から二度と東京に戻ってこないで欲しいわ。あはは!

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超絶ブラック環境な人気インフルエンサーのサポート担当してたけど、お前は役立たずのゴミカスだと言われて無理やりクビにされた話 榊原イオリ @siratamak

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