終末、バンドやろうよ♪

堂道廻

モンキー アンド エレファント

「あいたたたたぁ……」


 真横になった視界、横転したバイクの後輪がカラカラと空転している。

 アスファルトから頬を離して立ち上がった私は、セーラー服に付いた埃を両手で払う。


 状況から察すると、どうやらバイクで走行中に盛大に転んだらしい。

 後頭部が痛いけれど、頭は半帽ヘルメットでちゃんと守られていたし、幸いにも膝小僧を擦りむいたくらいの怪我で済んだ。

 

「うーん……、うん? あれ? あれれ……」


 私は両手で頭を抱えた。


「っていうか、わたしって誰だっけ?」


 思い出せない、自分の名前も、どこから来たのかも、何もかも。


「これってもしかして……」


 そう、これはひょっとするとアレだ。

 頭を打ったせいで記憶喪失になってしまったのである。

 

「私はバイクで、どこへ……、何をしに向かっていたんだっけ……」


 視界いっぱいに広がるのは青い空と白い入道雲、そして荒廃したビル群。

 信号機や道路標識は倒れ、幹線道路はところどころ隆起し、アスファルトの割れ目から草木が生えている。

 おそらくクラックにタイヤが嵌って転倒したのだろう。

 

 自分のことはまるで思い出せないけど、この世界が滅びゆく終末世界だということは理解している。


 だから街に人の気配はなく、私はひとりぼっちだ。

 私の帰りを待つ人も帰る家もない、なんとなくだけどそんな気がする。

 ただ死を待つだけの世界で、私はどこかへ向かっていた。


 倒れたバイクを、ホンダのモンキーを起こした私の目にある物が映り込んだ。

 それは長細くて黒い色で、ジッパーの付いたケースだった。背負える様にショルダーが付いている。

 

 これは――


「……ギターケース?」


 ケースを拾い上げた私はジッパーを降ろして中身をのぞく。

 やっぱり中に入っていたのはギターだった。

 アンプが内蔵された三味線みたいな小さなギターの形は、どこか象に似ている。


「あ……」


 ああ、分かる。本能で感じるもん。これは間違いなく私のギター、フェルナンデスのZO-3ギターだ。

 そしてギターに触れた瞬間、自分の目的を鮮明に思い起こす。


「そうか……わたしは、わたしはバンドメンバーを探していたんだ」


 それが私の目的、この終末の世界でバンドメンバーを見つけて一緒に演奏すること。そのために私はギターを背負ってバイクで走っていた。

 

 急いでギターを取り出して細部を点検する。

 弦は切れていない。ネックもペグもボディーも割れていない。

 傷一つ付いていない相棒を私は抱きしめた。


「良かったぁ」


 ギターを背負い、モンキーに跨った私はキックでエンジンを始動させる。

 エンジン音は軽快、アクセルに連動して吹き上がる排気音、バイクも問題はない。


「さあ、行こう! バンドメンバーを探しに!!」

 


 

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