第3話

​「シワの正体」



​あるところに、朝から晩まで文句ばかり言っている気難しいおじいさんと、いつも鼻歌を歌っている愉快なおばあさんがいました。

ある朝、おじいさんは鏡をじっと見つめながら、深いため息をつきました。

「ふん、鏡を見るのも嫌になる。顔はシワだらけだし、頭はハゲてきたし、腰も曲がってきた。ろくなことがない。お前はどうしてそんなに楽しそうなんだ?」

すると、おばあさんは洗濯物を畳みながら、ニコニコして答えました。


「あら、おじいさん、それはね、そのシワは、幸せの貯金箱、、なのよ」

​おじいさんは眉間にさらにシワを寄せて怒鳴りました。

「貯金箱だと? 何をバカなことを! このシワのどこに金が入ってるっていうんだ!」

おばあさんはおじいさんの隣にトコトコ歩いてくると、おじいさんの目尻のシワを指でなぞりながら言いました。


「お金じゃないわよ。この一本は、私が初めて作った料理を『まずい』って言いながら完食してくれた時のシワ。こっちの深い一本は、子供が生まれた時に慌てて転んだ時のシワ。こうやって、私たちが一緒に過ごしたおもしろい思い出が、こぼれないように顔に刻まれているのよ。」

おじいさんは少し照れくさくなって、「ふん、勝手な理屈を……。じゃあ、このおでこの深いシワは何なんだ」と聞きました。

​おばあさんは、いたずらっぽく笑ってこう言いました。


「それはね、『次は何に文句を言おうかなー』って考えすぎて、脳みそがはみ出しそうになった跡よ!」

おじいさんは一瞬、呆気に取られましたが、おばあさんのあまりに楽しそうな顔を見て、ついに「……ぷっ」と吹き出してしまいました。

​「なんだ、お前。俺をバカにしてるのか」


「あら、やっと貯金箱から『笑い』が出てきたわね!」

おじいさんは結局、その日一日、おばあさんに乗せられてずっとニヤニヤして過ごしましたとさ。

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