第13話 粛清から7年~黄金の尾張と魔王の元服


1539年(天文8年)


冤罪を逆手に取ったアイリスの裏帳簿工作により、織田家筆頭家老・林秀貞と実弟・林 通具みちとも兄弟は、謀反人として死罪。はりつけとされ串刺し…切腹すら許されなかった。


さらに織田信秀は、

尾張で大勢力を抱える林一族郎党を、有無を言わさず連座のとがで根絶やしにした……


後の世まで

【天文8年・織田家大粛清】として語り継がれ、日本史のテストにも出る程の大事件となった。


一方で14歳の柴田勝家は、信勝を神輿にしようとした守旧派を一掃し、織田家内での地位を不動のものとしたのである。



──やがて月日は流れ7年後


​1546年(天文15年)7月


熱田の巨大倉庫


​潮風が吹き抜ける港の一角。そこには、これまでの戦国には存在しなかった(富の匂い)が充満していた。


21歳になった柴田勝家は、積み上げられた木桶の列を検分している。


​「……勝家くん。清酒、醤油、食用油。この『熱田ブランド三種の神器』の独占販売権、他国の商人が涎を垂らして奪い合ってるわよ。今の織田弾正忠家の年収、史実の7~8倍は超えてるわね!」


​脳内で跳ねるアイリスの声。

勝家は、琥珀色に輝く最高級の醤油を指に付け、ペロリと舐めた。


​『……いい『毒』だ。7年間の歳月を掛け、これなしでは食事が喉を通らぬ身体にしてやった…

他国の民まで織田家にひざまづいてくる。力でねじ伏せるだけが戦では無い。』


『それと品種改良した織田家のブランド米【尾張米】ね。一度これを知れば、他国の粗末な玄米なんて食べられない。まあビタミンB1やミネラルが豊富で、玄米の方が栄養価は高いけどね。』


​そこへ騒がしい足音と共に、1人の少年が飛び込んできた。

7歳になった信勝(勘十郎)だ。


​「勝家! 兄上はどこに行ったんだ!? 兄上と一緒に、あの『鉄の筒』を撃つ約束なのに見当たらない!(涙)」


​信勝の瞳には、かつて陰謀の主役にされかけた気配など微塵もない。そこにあるのは偉大な兄・信長への純粋な憧憬兄上ラブだけだ。


​「信勝様、落ち着かれよ。殿ならあちらの『熱田鍛冶場』におられます……例の、国友から引き抜いた職人たちを急かしておいでだ。」

「そうか! 恩にきるぞ勝家!」


​嵐のように去っていく弟。勝家はそれを見送り、暗闇に潜む影に向かって声をかけた。


​「……アイリス。準備はいいか。あの『うつけ』を、本物の魔王に変える仕上げだ。」


​『了解! 12歳での元服祝いに、とびっきりの「プレゼント」を贈ってあげましょう!』



古渡ふるわたり城・元服の儀


​烏帽子親である叔父・織田孫三郎信光の前で、12歳の吉法師が凛として座していた。


髪を切り、大人の装束に身を包んだ彼が、新たな名を授かる。


​「これより、名は『三郎信長』と名乗るが良い……して信長。初陣は何処を望む?」


​孫三郎の問いに信長は不敵に笑い、傍らに控える勝家を見た。

勝家は合図と共に、布に包まれた「巨大な塊」に手をかざす。


​「……信長様。元服のお祝いに、柴田家からの献上品です。」


​布が剥がされると、そこには国友の職人も驚愕した柴田製・最新鋭長銃(柴田銃)が100丁。さらに城外の演習場には、牛数頭で引く巨大な『大筒』が鎮座していた。


​「カカカカカww………出かしたぞ勝家!約束通り、今日の元服の儀に間に合わせたか。天晴れだ!」


「はっ!殿よりお褒めの言葉を賜り、この勝家ありがたき幸せにて!」


「さ、三郎…これは種子島(火縄銃)に大砲とやらなのか?(汗)」


「まあ叔父上、似たような物だ。たがこの大筒があれば城門を潜る必要すらない。叔父上、初陣は美濃にいたします。あの蝮(斎藤道三)の度肝を抜いてやる。」


​「美濃だと? 三郎ノッブあそこに海はないぞ。船を川の上流へ漕いでも岸から狙い撃ちされる。どうやってこの大砲を運ぶのだ?」


​孫三郎の懸念に信長は、勝家の肩に手を置き広間の地図を指差した。


​「海がないからこそ、この7年間の歳月で、勝家が各地で道普請をしてきた。作らせた幅広の(新たなる道)は、美濃の国境まで繋がっている。

この大筒を並べて、稲葉山の麓から城ごと焼き尽くしてやるのだ。」


​「左様でございます。」


勝家が冷徹な声で弾正忠家当主・織田信秀へ言葉を継ぐ。


「大殿様。斎藤道三に伝えて頂きたく……娘、帰蝶様を差し出すか、それとも最新鋭の硝煙の中で滅びるか。選ぶのは貴殿だと文をしたためて下さいませ。」


「なっ!何!」

いきなり喧嘩腰の婚姻申し出の書状を出せと、勝家の物言いに驚く信光。


だが信秀は勝家を見据え笑い飛ばす。

「フハハハハ!権六、自信満々だが美濃といくさになったら勝てるのであろうな?!」


「この柴田製・最新鋭長銃。我があるじ信長様より(柴田銃)と命名され、今日までに2千挺用意致しました。火縄銃との決定的な違い……1分間に約10発、連射が効きまする。」


信光「がっ!!6秒に1発撃てるだと!!」


信秀「新規事業で獲得した莫大な利益。半分は好きに使って良いと申したが……そんな悪魔の様な武器を作ったと言うのか?」


織田信広(ノッブの庶兄)

「それが真実なら、美濃の精強な騎馬隊とて全滅だぞ…(汗)」


信長「百聞は一見に如かずだ、権六!城外の演習場にて、父上や叔父上に見せてやれ!」


「はっ!!!」


​元服を終えた信長の背後には、経済、技術、そして武力までも支配した柴田勝家の知略があった。


『ウフフ、アイリス特製の柴田銃。まともに作ったら高いのよ!!まあそこは経済力の基盤を7年間で整えたけどね。技術料は…サービスしたわよ!感謝してる?勝家くん!』


『勿論だ…これからも宜しく頼む。』


『分かれば宜しい。それよりさぁ~信勝くんの「兄上ノッブ大好き」が、ワタシ的にはググッとくるわぁ~~w』


『……他人の趣味には、とやかく言わぬ……』


兄を慕う弟、富が溢れる尾張。

戦国の常識を物理的に破壊する魔王と怪物の進撃が、ついに始まる。

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